HOME > ニュース >

80年代にチャック・ベリーの運転でジョーン・ジェットらがドライブした時の逸話 「ジョニー・B.グッドには手を出すな」

2022/12/27 17:31掲載
メールで知らせる   このエントリーをはてなブックマークに追加  
Chuck Berry
Chuck Berry
ジョーン・ジェット(Joan Jett)は80年代にセントルイスでコンサートを行った際、この地のロックンロール・ヒーロー、チャック・ベリー(Chuck Berry)と交流。チャックの運転でドライブした際、高速道路で誤って巨大なトラックを停めてしまう。その後、食堂でそのトラックの運転手と再会。運転手は怒っていたが、チャックが“誰に聞いているんだ?”と言うと、運転手は後ずさりして立ち去ったという。「ジョニー・B.グッドには手を出すな」。

音楽業界のベテランで、当時、ジョーン・ジェットのラジオ・プロモ担当だったスティーヴ・リーズが逸話を語っています

「僕はジョーン・ジェットのラジオ・プロモ担当だった。彼女は1982年に“I Love Rock 'N Roll”を大ヒットさせたばかりで、ミズーリ州セントルイスの有名なチェッカードームで、ラヴァーボーイと公演することが決まっていたんだ。

セントルイスといえば、ロックンロールのパイオニアの一人、チャック・ベリーの故郷である。

この日のために、僕は何度もベリーに電話をして、彼の故郷でスペシャルゲストのMCをやってもらえないかと頼んだ。でも、チャックのことだから、どうなるかわからない。

ギリギリになってキャデラックで現れたんだけど、警備員が彼を中に入れてくれなった。彼らは彼が誰なのか知らなかったし、気にも留めなかった。コンサートのセキュリティは厳しいんだ。誰であろうと気にしない。僕は、彼が入れるように説得しなければならなかった。最終的には、冷静な判断が勝り、彼が観客にジョーンを紹介するのにちょうど間に合うように彼をステージに連れて行った。ラヴァーボーイのギタリスト、ポール・ディーンチャックが彼と会話を始めようとしたけど、彼は全く興味を示さないのが可笑しかったよ。

その後、近くのウェンツビルにあるベリーパークの広大な自宅に招かれたので、翌朝、レンタカーで移動した。ジョーンのマネージャー兼プロデューサーのケニー・ラグナは、僕たちが道に迷うことを恐れて、念のためレンタカーに加えて、ベリーパークまで案内してくれるタクシーも雇っていた。

ベリーパークに到着すると、すぐにオフィスに向かった。チャックの長年のアシスタントであるフランに迎えられた。フランは、誰もが知っている門番のような存在だ。2017年3月18日に彼が亡くなるまで、チャック・ベリーに連絡を取りたいときは、フランを通す必要があった。チャックはEメールをしなかったので、書面でのやりとりはすべてファックスで行われた。そして、そのアクセスはフランが管理していた。

チャックがオフィスに入ってきて、僕たちを出迎えてくれた。彼は、ベリーパークを案内してくれたのだが......素晴らしかった。充実したスタジオと、観客を収容できるクラブのようなパフォーマンス・スペースがある。しかし、一般に公開されることはなかったので、使われることはなかった。複合施設のいたるところに、記念品があった。

僕らはみんなで何か食べようということになり、チャックが運転したいと言い出した。僕たちはその車に乗った。僕が前の席、ジョーンとケニー(ラグーナ。プロデューサー)が後ろの席。大きなキャデラック・セビル! なんてカッコイイんだ。チャック・ベリーが運転する車で、しかもキャデラック・セビルなんて!!!

チャックはちょっとアクセルを踏みすぎていたようだ。信号待ちでオートバイの運転手に軽くぶつかって、その人は明らかにびっくりしていた。でも、チャックがキャデラックから降りて、そのバイカーに謝ったから大事には至らなかった。(ラグーナは後で、チャックがバイカーに100ドル札を渡していたことを私に思い出させた)。

それから高速道路に乗り、そこでチャックは誤って巨大なトラックを停めてしまった。振り返ってみてみると、その運転手が僕たちに向かって中指を立てて罵倒していた。うーん。僕たちは休憩所に車を停めて、近くの小さな食堂で食事をすることにした。

ポリエステルのレジャースーツに身を包んだチャック、黒い革のモーターサイクルジャケットを着たジョーンとケニー、そして僕は、ミズーリの田舎にある道端の食堂にいた。シュールな光景だよね。ウェイトレスが僕たちの注文をとった。するとどこからともなく、タトゥーを入れ、革のベストを着た、がっしりしたトラック運転手が現れた。彼は席に近寄って、“高速道路を走っているときに車を停めたことを覚えているか?”と聞いてきた。僕はテーブルの下に潜り込もうかと思った。チャックは立ち上がり、そのトラック運転手に近づき、一対一で向かい合いながら“誰に聞いているんだ?”と言った。対決だ。ヤッホー!

その後、奇妙なことが起こった。何事もなかったかのように、トラック運転手は後ずさりして立ち去った。ただ黙って立ち去った。まるで、この人が“あの男”で、ジョニー・B.グッドには手を出すな、ということがわかったかのように。これぞ、ロックの力だ。

ウェイトレスが注文を取りに戻ってきて、僕たちはランチを食べ、そのままベリーパークに戻った。一生に一度の出来事だった。絶対に忘れられない」