HOME > ニュース >

ボブ・ディラン 印象に残っている現代アーティストたち/名曲とは/SNS/健康維持などについて語る

2022/12/20 18:00掲載
メールで知らせる   このエントリーをはてなブックマークに追加  
Bob Dylan
Bob Dylan
ボブ・ディラン(Bob Dylan)は新著『The Philosophy Of Modern Song』のプロモーションのため、米ウォール・ストリート・ジャーナルの質問に答えています。自身の公式サイトにQ&Aの拡大版が公開されています。

その中で、印象に残っている現代のアーティストたちを挙げ、名曲とは何かについて語り、ストリーミング時代のミュージシャンへのアドバイスもしています。またソーシャルメディアは「多くの人に幸せをもたらす」とも語り、自身はボクシングやスパーリングで健康を維持しているとも話しています。フランク・ザッパやリンゴ・スターにも触れています。

以下はその一部

Q:最近は、どのように音楽を聴いていますか?レコード、CD、ストリーミング?また、どのような方法で音楽を聴くのが好きですか?

「CD、衛星ラジオ、ストリーミングで聴いている。でも、古いレコードの音が好きで、特に昔の真空管式レコードプレーヤーで聴くのが好きだよ。30年ほど前、オレゴンのアンティークショップで3台購入した。小さなものだが、その音質はとてもパワフルで奇跡的で、深みがあり、あの予測不可能な時代をいつも思い出させてくれる。この先何が起こるかわからなかったが、そんなことはどうでもよかった」

Q:最近、新しい音楽をどのように発見していますか?

「ほとんどが偶然。探しに行っても大抵見つからない。実際、見つかったことはない。何も探していないときに、直感的に入っていくことが多い。ティニー・ヒル、テディ・エドワーズ、そういう人たち。無名なアーティスト、無名な曲。フランク・シナトラが録音したジミー・ウェッブの曲に“Whatever Happened to Christmas”がある。彼は60年代に録音したと思うが、私は今それを発見したばかりだ。エラ・フィッツジェラルドの“A-Tiskit, A-Tasket”。ジャニス・マーチン、女性版エルヴィス。彼女を聴いたことがあるかい?ジョー・ターナーは、いつもちょっとしたニュアンスとかで驚かせてくれる。ブレンダ・リーはよく聴いている。何度聴いても、発見したばかりのような気がする。彼女は古い魂を持っている。最近では、テディ・バンという素晴らしいギタリストを発見した。ミード・ルクス・ルイスとシッド・キャットレットのレコードで聴いたよ。

パフォーマーやソングライターが薦めてくれるものもあれば、目が覚めたらそこにあったというものもある。

ライヴを見たことがあるものもある。オアシス兄弟、ジュリアン・カサブランカス、クラクソンズ、グレイス・ポッター。メタリカは2回観た。ジャック・ホワイトとアレックス・ターナーには特別に会いに行った。Zach Deputyは最近知った。彼はエド・シーランのようなワンマンショーだけど、演奏するときは座っている。ロイヤル・ブラッド、セレステ、ラグンボーン・マン、ウータン・クラン、エミネム、ニック・ケイヴ、レナード・コーエンといった、言葉や言語に対する感覚がある人で、私と同じようなビジョンを持っている人なら誰でもファンです」

Q:今、音楽の作り方は大きく変わってきていて、お孫さんたちはSpotifyなど、まったく新しい方法で初めて曲を聴くようになりました。最初に曲を聴く方法は重要なのでしょうか?それによって、リスナーと曲の関係も変わってきていると思いますか?

「曲との関係は時間の経過とともに変化していくことがある。その曲を卒業することもあるし、また別の形でより強くなって戻ってくることもある。曲は甥や妹、あるいは姑のようなものかもしれない。実際に“Mother-in-Law”(※義母)という曲もある。

ある曲を初めて聴くとき、何時頃に聴いたかと関係があるかもしれない。夜明けに太陽の光を浴びながら聴くと、夕暮れ時に聴くより長く心に残るかもしれない。あるいは、夕暮れ時に初めて聴いた曲は、午後2時に聴いたものとは違う意味を持つかもしれない。あるいは、真夜中に、暗闇の中で、夜目で、何かを聴くかもしれない。もしかしたら、それが“Eleanor Rigby”で、古代の先祖に触れることになるかもしれない。しばらくは覚えているはずだ。ロニー・ジェイムス・ディオの“Star Gazer”は、雨が降りしきるどんよりとした昼間に聴くよりも、満月の下、宇宙が広がる真夜中に初めて聴いた方が、きっと大きな意味を持つだろう。

何年か前に、当時8歳くらいの孫娘が、アンドリュー・シスターズに会ったことがあるか、“Rum and Coca Cola”という曲を聴いたことがあるか、と尋ねてきたことがある。彼女がどこで聞いたのか、私にはわからない。会ったことがないと答えると、孫娘は理由を知りたがった。私は、ただ、彼女たちがここにいなかったからだと答えた。孫娘は“彼女たちはどこに行ったの?”と聞いた。私は何と言ったらいいか分からず、シンシナティと答えた。孫娘は、彼女たちに会うために連れて行ってと言っていた。また、他のある時、“Oh, Susannaはあなたが書いたの?”と聞かれたこともあった、孫娘がこの曲をどうやって聞いたのか、いつ聞いたのか、どういう関係なのかわからないが、孫娘はこの曲を知っていて、歌うことができた。おそらくSpotifyで聴いたのだろう」

Q:あらゆるものが指先で操作できるようになった今、ストリーミングは音楽を民主化したのでしょうか? 「Strangers in The Night」「Paperback Writer」「Paint It Black」がポップチャートで上位を占めるような時代に戻っているのでしょうか。

「そうかもしれない。最近は、あらゆるものが簡単だ。すべてがあまりにもスムーズで無痛になってしまった」「何もかもが簡単すぎる。薬指と中指で、カチッとするだけでOKだ」

Q:あなたの本に掲載されている曲のプレイリストが、ファンによってすでに何十個もSpotifyにアップされています。事実上、録音された音楽の歴史はすべて、指先のわずかなタッチで誰でも手に入れることができます。もし、あなたが50年代にそれを利用できたとしたら、想像してみてください。若いクリエーターはどうすればいいのでしょう。

「その中で、できる限りのことをやってみて、それを解きほぐし、どこかに辿り着くまで自分の道を進むしかないだろうね。過去には優れた音楽がたくさんある。天才的な作品がたくさんあり、すべてではないにしても、その多くは記録されている。そのすべてを聴くには、一生かかっても足りないくらいだ。音楽的には理解しきれないだろう。自分を限定して、枠組みを作るしかないだろうね」

Q:今日の音楽を録音するために使われている技術の中で、この本に収録された曲、特に演奏にかける影響や価値を変えるようなものがあると思いますか?それとも名曲は名曲なのでしょうか。

「名曲は、その人の心情が込められていると思う。聴いたときに、直感的な反応と同時に感情的な反応が起こる。名曲は心の論理に従って、聴いた後もずっと頭の中に残る。“Taxman”のように、フルオーケストラで演奏しても、散歩中の吟遊詩人が歌ってもいいし、偉大な歌手でなくても歌うことができる。別世界。それは体を運び、空中を浮遊しているような気分になる。体外離脱に近い体験だ。

素晴らしい曲は突然変異を起こし、飛躍を遂げ、放蕩息子のように再び姿を現す。ジャンルを超える。パンクロックであったり、ラグタイムであったり、フォークロックであったり、ザイデコであったり、さまざまなスタイル、複数のスタイルで演奏することができる。ボビー・ブランドも、ジーン&ユーニスも、ロッド・スチュワートも、ジーン・オートリーも、そうだ。コルトレーンなら言葉なしでできるだろう」

Q:リラックスするのに役立つテクノロジーはありますか? 例えば、「My Generation」の章でストリーミング映画について触れていますが、Netflixで映画を見まくったり、特に移動中に瞑想アプリやワークアウトアプリを使ったりしますか?

「私の問題は、あまりにもリラックスしすぎて、のんびりしすぎていること。いつもタイヤがパンクしたような感じで、まったくやる気が起きず、日中、いつでも眠ってしまう。刺激的なことが必要で、しかも私は非常に繊細な人間なので、物事が複雑になる。ある瞬間、完全に安らいだかと思うと、何の理由もなく、落ち着きがなく、そわそわしてしまう。中間地点はないようだ。

2〜3時間テレビの前にいると、ついつい見入ってしまう。画面と関わる時間が長すぎる。あるいは、私が年を取りすぎているのかもしれない。

『コロネーション・ストリート』や『Father Brown』、初期の『トワイライト・ゾーン』などを見ている。昔ながらの番組だけど、心が落ち着くんだよ。パッケージ番組(※商業放送の既製番組)やニュース番組は好きではないので見ない。悪臭のするもの、邪悪なものは絶対に見ない。

体を動かすことに関しては、ボクシングとスパーリングをずっと続けている。これは私の生活の一部。機能的で流行に左右されない。無限の遊び場で、アプリは必要ない」

Q:あなたはソーシャルメディアを利用されていますか?また、TwitterやFacebook、Instagram、TikTokについても何度か触れていますが、どう思われますか?

「私は、それらの名前を挙げているだけ。それに関しては、学ぶべきことがたくさんある。基本的な要素しか知らない。

これらのサイトは、多くの人に幸せをもたらすと思う。そこで愛を発見する人もいる。素晴らしいことだと思う。これらのサイトは、何百万人もの人々に喜びと無限の喜びをもたらすことができる。ずっと閉まっていた窓を開けて、光を取り込むようなものだ。社交的な人であれば、コミュニケーションラインが広く開かれていて、素晴らしいことだと思う。このようなフォーラムでは、信じられないようなことがたくさんできる。何でも作り直せるし、記憶を消し去り、歴史を変えることもできる。無限の可能性がある。でも、私たちを分断し、分離させることもできる。人を敵に回すこともできる」

Q:ロックアウト中はどうでしたか? 

「他の惑星や神話上の怪物が訪ねてきたような、とてもシュールな時間だった。でも、いろいろな意味で有益でもあった。多くの煩わしさや個人的なニーズが解消された。時計がないのはいいこと。いくつかのことを終わらせるには良い機会だった。

久しぶりにマザーズ・オブ・インヴェンションのレコード『Freak Out!』を聴いた。なんて雄弁なレコードなんだろう。“Hungry Freaks, Daddy”とか、“Who Are the Brain Police”とか、パンデミックにぴったりの曲だ。間違いなく、ザッパは時代の何光年も先を行っていた。私はいつもそう思っている」

Q:リンゴ・スターは、優れたミュージシャンであること、そしてソングライターであることが、他のこと、彼の場合は料理も上手にするのだと信じていると言っていました。その考えについて、どう思われますか?

「私はリンゴが大好きだよ。彼は悪いシンガーではないし、素晴らしいミュージシャンだ。もし彼をドラマーにしていたら、僕もビートルズになっていたかもしれない。たぶんね。彼が料理人だとは知らなかった。それは頼もしいな」

インタビューの全文は以下で
https://www.bobdylan.com/news/bob-dylan-interviewed-by-wall-street-journals-jeff-slate/