Jimi Hendrix and Leonard Nimoy[
ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)と、『スター・トレック』シリーズのミスター・スポック役で知られる
レナード・ニモイ(Leonard Nimoy)。ギターとSFの伝説が出会ったときの逸話が、近刊『Hendrix Now! Backstory of a Legend』に掲載されます。著者のNoë Goldは、2人を引き合わせたラジオDJや、亡くなる前にニモイに話しを聞いて、出会いの驚くべき物語を紹介しています。米Guitar World誌のサイトでは、その逸話の抜粋が公開されています。
2人を引き合わせたラジオDJは、米オハイオ州クリーブランドのラジオ局WKYCのチャック・ダナウェイでした。ダナウェイは1968年3月25日にクリーブランドで2人と過ごしたワイルドな一夜を語っています。
ヘンドリックスは翌日26日にクリーブランドのミュージック・ホールでコンサートを行うために、すでにクリーブランドに到着していました。また、この日、ニモイは自身のアルバム『Two Sides of Leonard Nimoy』のプロモーションのため、クリーブランドに滞在していました。
その日の早い時間にスタトラー・ホテルで、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのプレス・パーティーがありました。ホテル内を歩き回っていたエクスペリエンスのメンバーであるノエル・レディングが、他の会場の一つに足を踏み入れると、そこには自身のアルバムを宣伝するニモイがいました。レディングは1996年の著書『Are You Experienced?』の中で、ニモイにばったり会い、イベントを抜け出してノエルの部屋に行ってパーティーをしたと書いています。
ニモイはNoë Goldと行った生前のインタビューの中で、ヘンドリックスとの出会いをこう振り返っています。
「僕はクリーブランドで、発売されたばかりのアルバム『Two Sides of Leonard Nimoy』のプロモーションを行っていた。プロモーション担当者は、今晩あなたのためのディナーがあって、そこにはたくさんのレコード関係者が来るだろうと言っていた。僕たちはヘンドリックスが滞在していたホテルの個室にいたんだけど、(ダナウェイが)“ヘンドリックスが隣の部屋にいるよ。君がここにいると聞いて、挨拶したいと言っているんだ”と言われた。
僕は一瞬考えたあと、“もちろん彼を連れてきてください”と答えた。彼は魅力的でとても親切で、僕たちは写真を撮ってもらった。彼とノエル・レディングと6人ほどで写真を撮ったんだけど、その写真に入りたがる人が殺到したんだよ。彼は真の天才であり、偉大なアーティストだった。悲劇的な最期だった。あまりに早く、あまりに若くして亡くなってしまった」
ダナウェイによると、ニモイとダナウェイは翌26日のヘンドリックスのライヴを一緒に見に行きました。そして、その夜、クラブでヘンドリックスに会い、3人で政治の話をしはじめ、最終的にヘンドリックスのホテルの部屋にまで入り込み、夜中の3時まで語り明かしたという。
「ニモイと私は意気投合し、彼のホテルの部屋で何時間も政治の話をした。レナードはヘンドリックスの曲を聴いたことがあると言い、もう一日クリーブランドに滞在して、ヘンドリックスのライヴに一緒に見に行った。その夜、クラブでジミに会い、3人で政治の話をしはじめた。ベトナム戦争の終結を願うという点では、みんな波長が合っていたんだ」
「1時間ほど話した後、ジミはクラブの女性たちを知っているかどうか聞いてきた。私は2人ほど知っていて、彼は写真撮影の後、彼女たちを彼のスイートルームに誘えないか、と言ってきた。
写真撮影の後、レナードと私は3人のクラブの女性と一緒にジミのスイートルームに行った。私たちが部屋に行くと、ジミは女性たちと部屋に消えていき、残りの私たちはソファに座って話をした。しばらくしてジミが出て来て、彼女たちに別れを告げ、私たちの会話に入った。
私たちは政治や戦争、ヒッピーのことを話した。反戦デモのエネルギーを政治運動に生かすことができれば、それは巨大なものになるだろうというのが、私たちの意見だった。その夜、ジミは私の前でドラッグをやらなかった。夜中の1時から3時くらいまで話したよ。
私たちが帰ろうとすると、ジミは私たちをドアまで連れて行った。彼はその日、私が何時から何時まで放送しているか聞いてきたので、午後3時から6時までと答えたら、放送中に彼とノエルが遊びに行ってもいいかと聞いてきた。私はイエスと答えたが、それは実現しないことだと思った」
「翌日、ジミは3時ちょうどに現れた。クリーブランド・プレスのカメラマンが撮った写真をスタジオに持ってきてくれて、ノエルとジミはそれにサインをした」
「番組ではジミにインタビューした。30分のインタビューになるはずだったのに、彼は番組全体に残って、レコードを紹介し、あの滑らかで優しい声で、あらゆる種類のロックンロールの雑談について話した。ラジオ番組が終わってから、ラジオ局から1ブロック離れたコンサート会場まで歩いたんだよ。
ニモイはコンベンションのために来ていて、ラジオで自分のレコードを宣伝していた。レナードはヘンドリックスに会うのを楽しみにしていたし、ヘンドリックスも同様にスポックに会いたがっていたんだ。ジミのレコード・コレクションから、ニモイのサイン入りアルバムが発見されたんだよ」
ニモイは亡くなる前に、ヘンドリックスの二面性に心を打たれたと話していたという。ステージの上で紫色の霞の中を飛び回るワイルドな男と、声をほとんど上げない、そして上げる必要もない、穏やかな話し方をする繊細な男。