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ブライアン・フェリー、ロキシー・ミュージックのベスト・アルバムを全曲解説 1曲1曲掘り下げる

2022/11/09 18:00掲載
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Roxy Music / The Best of Roxy Music [Yellow Double Vinyl]
Roxy Music / The Best of Roxy Music [Yellow Double Vinyl]
ブライアン・フェリー(Bryan Ferry)は、ロキシー・ミュージック(Roxy Music)のベスト・アルバム『The Best of Roxy Music』を全曲解説。アナログレコード発売を記念してClassic Pop Magazineで、1曲1曲掘り下げています。

●Avalon

「“Avalon”ははロキシーの最後のアルバムで録音された最後の曲だった。僕はニューヨークにいて、Power Stationでレコーディングしていたんだけど、あそこでの仕事は本当に好きだったよ。

レコーディングの最終日の前に、徹夜で歌詞を完成させた。音楽は出来上がっていたので、ニューヨークの眠い日曜日の午後に出かけていたのは、僕とプロデューサーのレット・デイヴィス、エンジニア兼ミキサーのボブ・クリアマウンテンだけだった。

テイクの合間に廊下のコーヒーメーカーに行くと、別のスタジオから美しい声が聞こえてきた。ハイチから来たバンドで、歌手はヤニック・エティエンヌだった。

彼女は僕たちのトラックにスキャット・ヴォーカルで参加してくれたんだけど、それはまさに魔法のようで、レコーディング中にすべてがうまくいくような素晴らしい瞬間のひとつだった。

フィル・マンザネラとアンディ・マッケイが後からやってきて、聴き直していたんだけど、彼らは驚いていたよ。素晴らしい瞬間だった」



● More Than This

「ここでは、少ない言葉でできるだけ多くのことを伝えようとした。音楽がたくさんのことを語っていて、それ以外のことは必要ないと感じたんだ。アイルランドの西海岸にいるときに書き始めた。それがアルバム『Avalon』にメランコリーのタッチをもたらしたと思う」



●Jealous Guy

「僕たちは、ジョン・レノンが亡くなった数日後にドルトムントでライヴをやったんだけど、トリビュートとして何かやりたいと思った。そこの観客がとても気に入ったようだったので、ロンドンに戻ってからフィルのスタジオでレコーディングしたんだ。今では、僕やロキシーがパフォーマンスを行うたびに、みんなこの曲を聴くことを期待している。うまくいったし、素晴らしい曲だよ。直接的に美しい曲だ」



● Over You

「“Over You”はフィルのスタジオでレコーディングされ、レット・デイヴィスがプロデュースした。フィルと僕はこの曲をすぐに書き上げた。リズムボックスを使って、僕がベースを弾いて、フィルがギターを弾いた。全て自然発生的なもので、アルバム『Flesh And Blood』からのファースト・シングルにもなった」



● Same Old Scene

「ドラムマシンやサンプリングなどに興味を持つようになり、プロデューサーのレット・デイヴィスはトリガーされたストリングスでこのアルバムのサウンドに大きな役割を果たした。ノッティング・ヒルのベイシング・ストリート・スタジオを拠点にすることは、僕らにとって良い気分転換になった。偉大なベーシスト、アラン・スペナーはこの曲とアルバム『Flesh And Blood』のほとんどに参加しているよ」



● Oh Yeah

「曲について曲を書くのはいいアイデアだと思った。長く暑い夏、ドライブイン映画、ラジオ局など、アメリカーナの絵を描きたかったんだ。切なくてノスタルジックなムードがあった。レット・デイヴィスがアイランド・スタジオでプロデュースした。ポール・キャラックがキーボードでゲスト参加し、リズムセクションとして(ギタリストの)ニール・ハバード、アラン・スペナー、(ドラマーの)アンディ・ニューマークが参加している」



● Angel Eyes

「アンディ・マッケイとの共作。『Manifesto』に収録されたアルバム・ヴァージョンはちょっと違うと思ったので、ハープをリード楽器に据えたシングルとして再録音した。アラン・スペナーが印象的なベースを弾き、ルーサー・ヴァンドロスがバック・シンガーの一人として参加している」



● Dance Away

「この曲は以前のソロ・アルバム『In Your Mind』と『The Bride Stripped Bare』でやろうとしたんだけど、うまくいかなかった。今回はバンドと、レット・デイヴィスのプロデュースでよりうまくいくように思えた。ニューヨークにいる友人が、この曲をシックで素晴らしいレコードを作ったばかりのボブ・クリアマウンテンにミックスしてもらったらどうかと提案してくれた。ボブはこの曲をヒットさせ、彼は僕たちの頼れるミックス・エンジニアになった」



● Both Ends Burning

「ジョン・グスタフソンはこの曲で素晴らしいベース・パートを弾いている。彼はマーサ&ザ・ヴァンデラスの“Dancing In The Street”からインスピレーションを受けたと言っていた」



● Love Is The Drug

「アンディ・マッケイと一緒に書いた曲で、僕たちにとって大きな楽曲だった。それまではまだアンダーグラウンドのバンドのような感じだったけど、この曲によって特にアメリカではより普遍的に受け入れられるようになった。

華麗なジョン・グスタフソンは素晴らしいベースラインを弾いたけど、ナイル・ロジャースも、シックの『Good Times』やその他多くの名盤に大きな影響を与えたと認めているよ。

当時は夜遅くまで仕事をしていたので、スタジオから帰ってくると、砂利道を歩いて玄関に向かったんだけど、そのサウンド・エフェクトが曲に収録されることになったんだ」



● Out Of The Blue

「この曲はフィル・マンザネラとの共作で、アンディ・マッケイの美しいオーボエで始まり、素晴らしい感動的な弦楽器パートを演奏したエディ・ジョブソンの素晴らしいエレクトリック・バイオリン・ソロで終わる。

僕たちはテープフェイシングを使うのが好きで、これは僕たちのプロデューサーの友人であるクリス・トーマスがビートルズ時代に発見したものだと思う。クリスはこの曲には参加しなかったけど、彼の偉大なエンジニアでありコラボレーターでもあるジョン・パンターがプロデューサーを引き継いだんだ」



● All I Want Is You

「フィル・マンザネラと書いた曲。ギターをベースにした曲なので、ピアノで書かれることが多い僕の他の曲とは違うテイストになっている。バンド内で曲作りのコラボレーションを楽しむようになっていた。ジョン・パンターはエア・スタジオの偉大なエンジニアの一人で、彼はこのアルバム(1974年の『Country Life』)の命であり魂であり、プロデュースを手伝ってくれた」。



●Mother Of Pearl

「(親友の)サイモン・パックスレーと一緒にギリシャに1、2週間行って、そこで『Stranded』の曲を作り始めた。ベース・ギターで“Mother Of Pearl”を書いたんだ。テンポの速い曲と遅い曲の2つのパートからなる曲だよ。僕のお気に入りのひとつだ。

ロンドンに戻ったとき、エア・スタジオでクリス・トーマスが僕のヴォーカルを録音してくれたのを覚えている。なんとかワンテイクでやり遂げ、コントロールルームに戻ると、クリスが床に寝転んでいた。それが彼流の“いいね”だったんだ」



● Street Life

「これもファンには人気のあるエネルギッシュな曲。強いリズム感のあるトラックに面白い歌詞を乗せようとしたら、良い組み合わせになった感じだね。新メンバーのエディ・ジョブソンがバイオリンとキーボードで強くフィーチャーされている」



● Do The Strand

「これは僕たちのレパートリーの中でも、ロキシーの観客の想像力をかきたてるような、より軽快な曲。一種のアンセムになった。2枚目のアルバム『For Your Pleasure』の頃には、歌詞をより真剣に受け止めるようになっていて、この曲はコール・ポーターなどのソングライターへのオマージュでもあるんだ。

タンゴ、ワルツ、ファンダンゴ、サンバ、ベギン、マディソン、マッシュポテトなど、過去のダンスブームにも言及している」



● Pyjamarama

「エア・スタジで録音したのはこれが初めてで、数年間そこが僕たちの仕事場になった。“Pyjamarama”は、私たちの2枚目のシングル。何が影響しているかはわからないけど、実際、レコーディングはちょっと楽しかった。

アンディ・マッケイの素晴らしいアルトサックスのソロが特徴。バックで聞こえてくる調子の悪いギターは、実は僕が弾いているんだ」



● Virginia Plain

「レコード会社はファースト・アルバムの成功に僕たちと同じくらい驚いていた。アイランド・レコードから発売された他のどの作品とも全く違っていたからね。このアルバムにはシングルがなかったけど、“Virginia Plain”があって、これはいけるんじゃないかと思ったから、コマンド・スタジオに戻って録音したんだ。

ここはピカデリーサーカスのすぐ隣にある古い映画館だった。僕たちは効果音を使うのが好きで、ピカデリーを猛スピードで駆け抜けるローディーのバイクを録音したのを鮮明に覚えているよ。

この曲は、僕たちがこれまでに手がけたものの中で最高のものの一つで、バンドの全員がこの曲で主役になった。ブライアン・イーノの素晴らしいシンセも、アンディ・マッケイの個性的なオーボエの演奏もね」



● Re-Make/Re-Model

「オープニングは派手にしたかったし、この曲のエネルギーが好きだった。ライヴでやるのはいつも良かった。バンド全員のワイルドな演奏、特にブライアン・イーノがVCS3シンセサイザーで素晴らしい演奏を披露してくれた。CPL 593Hのコーラスは、フェスで見たかっこいい車のナンバープレートなんだ」