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古いヴァイオリンが本当に特別な音を出すことを発見 神秘的な「第3の音」は古い良質な楽器の方が良い 最新研究結果

2022/11/02 17:34掲載
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da Vinci, ex-Seidel
da Vinci, ex-Seidel
現代の楽器と古い名器は本当に音色が違うのか? イタリアの科学者たちは、古いヴァイオリンが本当に特別な音を出すことを発見しています。

人の耳は通常、2つの違う音が同時に鳴っていても、それぞれ別々の音が鳴っているものとして聞き分けられますが、たまに音が混ざり合って元の音にはなかった「第3の音」が生じることがあります。「結合音(コンビネーション・トーン)」と呼ばれる現象で、英ガーディアン紙によると、新しい低品質の楽器よりも、より高品質の古い楽器の方が「結合音」が、より強く、より聞き取りやすいことがわかったという。

「結合音」の中で最も有名なのが、18世紀バロック時代の作曲家兼ヴァイオリニストのジョゼッペ・タルティーニが発見した「タルティーニ・トーン」とも呼ばれる音です。英ガーディアン紙によると、この「第3の音」は最近まで、内耳の中で様々な周波数が歪むことによって生じる聴覚錯覚と考えられていたそうです。

イタリアのフィレンツェ大学のGiovanni Cecchiとその同僚たちは最近、2つの音が同じヴァイオリンによって同時に演奏された場合にのみ、「結合音」を発生させる振動が耳の外でも検出して記録できることを発見しました。この研究は『Journal of the Acoustical Society of America』に掲載されています。

研究チームはプロのヴァイオリニストを採用し、1700年のトノーニ・ヴァイオリン、18世紀のイタリア・ヴァイオリン、19世紀のロンドンのヘンリー・ロックヒル・ヴァイオリン、1971年製の手作りヴァイオリン、そして現代の工場生産のヴァイオリンという5つの異なるヴァイオリンで、2音の組み合わせを演奏してもらいました。

その結果、低品質の楽器と比較して、より高品質の古い楽器では「結合音」がはるかに強く、容易に聞き取れることがわかりました。

「最も強いのは、1700年にカルロ・トノーニによって作られた古いヴァイオリンでした」「質の悪いヴァイオリンでは、結合音は無視できるほど小さかった」 とCecchiは述べています。

これまで、ヴァイオリンから発生する「結合音」は小さすぎて聞き取れないとされ、あまり重要ではないと考えられていました。「今回の結果は、質の良いヴァイオリンから発生する結合音が容易に聞き取れ、音程の知覚に影響を与えることを示しており、この見方を変えています」とCecchiは述べ、良質なヴァイオリンから発生する「結合音」が人々の音楽体験に重要な役割を果たす可能性があると付け加えています。

今後は、より多くの、より多様なヴァイオリンを分析し、これらの音色を生み出す原因となる正確な物理的構成要素を特定することに重点を置くと、Cecchiは述べています。