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アンディ・ウォーホルのプリンス・シルクスクリーン著作権訴訟 舞台は最高裁へ 芸術家の創造性を脅かす可能性のある裁判として注目される

2022/10/13 14:55掲載
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A portrait of Prince taken by Lynn Goldsmith (left) in 1981 and 16 silk-screened images Andy Warhol later created using the photo as a reference - Collection of the Supreme Court of the United States
A portrait of Prince taken by Lynn Goldsmith (left) in 1981 and 16 silk-screened images Andy Warhol later created using the photo as a reference - Collection of the Supreme Court of the United States
アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)のシルクスクリーン作品の中でも有名なプリンス(Prince)のシリーズは、ロックスターの写真家として有名なリン・ゴールドスミスが撮影したプリンスの写真も基にしたものです。米国の著作権法には「変形的利用(transformative use)」という例外規定があり、芸術家は、新しい作品が元の作品と十分に異なっている限り、著作権のある作品に基づいて新しい作品を創作することが認められています。現在、このプリンスのシルクスクリーンを巡って著作権訴訟が行われており、連邦地裁はウォーホルの作品はオリジナルとは異なるメッセージを伝えているため「変形的」であり、公正な利用(フェアユース)であると判断しましたが、控訴裁判所はこれに同意しませでした。そのため、最高裁判所が判断することになりました。他の著作物を基に変形的作品を制作するアーティストの創造性を脅かすかもしれない裁判としても注目されています。

米国の公共ラジオ局NPRによると、1981年、ゴールドスミスはニューズウィーク誌からプリンスの写真を撮影するよう依頼されます。最終的にニューズウィーク誌は撮影したスタジオの写真を使わず、コンサートの写真を使いましたが、ゴールドスミスは将来の出版やライセンス用にこの写真を保管していました。

その3年後の1984年、ヴァニティ・フェア誌はウォーホルにプリンスのシルクスクリーン制作を依頼します。その際、ウォーホルはゴールドスミスの写真を参考にするよう求められました。NPRによると、「ヴァニティ・フェア誌はゴールドスミスにライセンス料として400ドルを支払い、この画像をこのヴァニティ・フェア誌の1号だけに使用することを書面で約束しました。ウォーホルがライセンス契約について知っていたという証拠は記録にありません」。

ウォーホルは、16枚のプリンスのシルクスクリーンを制作し、彼がそれの著作権を取得し、そのうちの1枚をヴァニティ・フェア誌の記事に使用しました。このシルクスクリーンの画像はその後、販売・複製され、アンディ・ウォーホル財団に数億ドルの利益をもたらしました。

ゴールドスミスはその後、ウォーホルが自身の著作権を侵害したと主張し、財団は未払いのライセンス料とロイヤルティとして数百万ドルを支払う必要があると訴え、財団を提訴しました。

ウォーホル財団の弁護士は、プリンスのシルクスクリーン・シリーズの著作権を有しているだけでなく、彼の芸術的表現はゴールドスミスのオリジナル写真とは全く異なるため、法的には「変形的利用」であると主張しています。コラージュ・アーティストがより大きな作品の中でさまざまな写真の断片を使うように、ウォーホルはゴールドスミスの写真を構成要素として使ったというのが財団の主張です。

一方で、ゴールドスミスの弁護士は、ウォーホルの作品には十分な変形性がないと主張しています。

これまでの裁判では、2つの裁判所が意見を異にしています。

連邦地裁の裁判官は、ウォーホルのシリーズはオリジナルとは異なるメッセージを伝えているため「変形的」であり、著作権法上の「公正な利用(フェアユース)」であると判断しました。しかし、第2巡回区控訴裁判所の3人の裁判官はこれに同意せず、裁判官は「美術評論家の役割を引き受け、問題となっている作品の意味を確認しようとすべきではない」と宣言しました。最高裁が同意すれば、ウォーホル財団はゴールドスミスに使用料やライセンス料、その他の損害賠償を支払わなければならなくなる可能性があります。

判決の結果、法律がオリジナル・アーティストによる管理をより優先する方向に変化する可能性があります。そうなると、音楽やポスターからAIによる創作物やドキュメンタリーまで、あらゆるものにおいて既存の作品を基に制作するアーティストや他のコンテンツ制作者を阻害する可能性もあるとNPRは報じています。