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より環境に優しくレコードをプレスするには?オランダの会社の取り組みを英BBCが紹介 海洋プラスチックでプレスできる?

2022/08/22 18:42掲載
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一部のアナログレコードのプレス会社は、より環境に優しくレコードをプレスする方法を模索しています。英BBCでは、オランダの会社の取り組みを紹介しています。

アナログレコードを通常、ポリ塩化ビニル(PVC)を素材にしていますが、オランダのGreen Vinyl Recordsは、PVCを素材として使っていません。同社のオーナーであるHarm Theunisseは、これが業界の「新基準」だと考えているという。

彼のチームは、過去7年をかけて、従来のレコード生産に比べて消費電力が最大90%少なく、リアルタイムでモニターできる新しい大型プレスマシンを開発しました。「この機械は、従来の工場に比べて40%近くも生産能力を増やすことができるんです。ここでのプレスは、より速く、そして地球にも優しいのです」とオーナーは話しています。

Green Vinyl RecordsはPVCの使用を避け、代わりに、より耐久性があり、リサイクルしやすいポリエチレンテレフタラート(PET)を使用しています。オーナーは、未来の世代が環境への影響を心配することなくレコードで音楽を聴けるようにするために何かをしたかったと言っています。「子供たちのためなんです」「正しい方向への真の一歩」と話しています。

キール大学でサステナビリティの上級講師を務めるシャロン・ジョージは、「PVCに代わる環境に優しい素材を見つけるには、プラスチックの硬度や耐久性を維持しながら、同じように豊かな音質を求めることが常に課題となっている」と言っています。

アムステルダム近郊にあるレコード・プレス会社Record Industry社では、1957年以来、33台のプレス機を使っています。機械は17時間稼働し、1日に5万枚のPVCレコードを作り出しています。ここでのレコードはソニー、ユニバーサル、ワーナー・ミュージックの3大レーベルのために作られているという。

Record Industry社は、廃棄物のリサイクルや太陽光発電への投資など、地球環境にも配慮していますが、同社のトン・フェルムレン最高経営責任者は、より環境にやさしいレコードプレスの未来について、こう話しています。

「海洋プラスチックでレコードをプレスできないか、という問い合わせを受けたことがあります。試しにやってみたら、レコードに見えるかもしれない。でも、普通のレコードのような音が必要だとしたら、そこが問題なんです。製品の品質を今のまま維持したいのであれば、それは不可能です」

プラスチックの分子的な性質が、音楽の響きに大きな影響を与えると考えられているため、プレス工場では不純物の多い材料を使うのを避けたいのだという。

フェルムレン最高経営責任者は、Green Vinyl Recordsのプロジェクトが始まった当初から参加していますが、そのコストに懸念を示しています。

「未知数な部分があって、高い投資が必要です。この機械は、私たちが使っているプレス機よりもはるかに高価だからね。このような新しい技術にスペースがないとは言わないが、企業がそれに取り組むかどうかには疑問があります」。

しかし、Green Vinyl Recordsでのプレスを希望するアーティストはおり、トム・オデールの新しいアルバムはGreen Vinyl Recordsでプレスされています。また他のアーティストからもプレス希望が寄せられているという。