Keith Jarrett - Photo by Daniela Yohannes/ECM Records
キース・ジャレット(Keith Jarrett)が2016年7月6日に行ったフランスでの最後のソロ・パフォーマンスを収めたライヴ・アルバム『Bordeaux Concert』が9月30日発売。リリース元はECM。このアルバムから「Part III」が聴けます。
約2年前、キース・ジャレットは、2018年に2度の脳卒中を発症し、二度と演奏できない可能性が高いことを公言しました。現在、ジャレットはニュージャージー州北西部の自宅で静かにリハビリを続けています。
米ラジオ局NPRでは、ジャレットの新しいインタビューの中で、現在の回復具合について尋ねています。
「Part III」
以下は『Bordeaux Concert』のインフォメーションより
2016年のソロ・コンサートは、それぞれが際立った個性を持っており、ボルドーでは ―音楽は多くの変化するムードを経て進行するが― 叙情的な衝動が前面に押し出されていた。この即興的な13部構成の組曲の過程では、多くの静かな発見がある。音楽全体には感動的な新鮮さがあり、会場にいる1,400人の聴衆と親密なコミュニケーションをとっているような感覚になる。今回は、スタンダード曲で締めくくるのではなく、自発的に作曲され、しばしば強烈なメロディを持つ音楽の弧が、それだけで満足のいく完成度を誇っている。
この後のコンサートでは、ジャレットのインプロヴァイザーとしての功績は、瞬間瞬間に現れる音楽にチャンネルを合わせるだけでなく、そのエピソードや雰囲気のバランスを取りながら大きな構造を暗示することとなった。
2016年7月の公演をレビューしたフランスのプレスは、「『ケルン・コンサート』や『ソロ・コンサート』のヒントがこの演奏の流れにある」と語り、『ボルドー・コンサート』に収録されている曲は、とても美しい。フランシス・マルマンがル・モンド紙で「世界の騒音と倦怠感から解放された時間の意識に目覚め、沈黙の端で聴く共同体を呼び起こす。」と描写する優しい歌が空気から引き出されている。
ボルドーのリスナーのコミュニティは、以前からジャレットの音楽を知っていた。ヌーヴェル・アキテーヌ地方の首都は、ジャレットが最初に自分の音楽を発表したヨーロッパの都市のひとつで、初登場は1970年にガス・ネメスとアルド・ロマーノとのトリオでだったという。1990年代初頭には、ゲイリー・ピーコックとジャック・ディジョネットとの「スタンダード」トリオで再び登場した。
しかし、2016年7月6日に行われた本コンサートは、この街で唯一となるソロ演奏公演となり、(ジャズ&ワイン・ボルドー・フェスティヴァルとそのディレクター、ジャン=ジャック・ケサダを通じて実現したもの) フランスで行った最後のソロ・パフォーマンスとなる。
以下はNPRのインタビュー
Q:最後に話したのは2020年9月でしたね。いかがお過ごしでしょうか?
「元気だよ。今はオフィスと呼んでいる玄関のポーチに座っている。小川があるんだ。花や植物、蝶、鳥、なんでもいるよ。そうだね、君はここにきたことがあったね」
Q:夏を過ごすには、とても素敵なところです。いいですね。回復具合はどうですか? 理学療法をたくさんしているのですか?
「まあ、治療と呼べるかどうかわからないけど、足をもっと使うようになったよ。杖をついたりつかなかったり、いろいろな状況で歩いている。今日は私道を歩いて、道路の向かいにある湖のビーチまで行ってきたよ。回復については、よくわからないんだ。右手も昔とは違うし、左手も全然違う」
Q:まあ、こういうものは、進歩がゆっくりなのは分かっているんですけどね。
「この件を関連付けることができるのは、僕が(1990年代後半に)抱えていた慢性疲労症候群の問題くらいだろうね。僕はこれについてはかなりキリスト教科学主義的だった。母も父もそうだったし、祖母もそうだった」
Q:このことを慢性疲労症候群と関連づけるとしたら、この2つの経験をどのように区別しますか?
「そうだね、あの時は純粋に“ピアノを見ても、弾かない方がいい”という気持ちだった。ただ眺めているだけでいい。今の右手は何かできると思っているよ、あの時と比べるとね。疲労感が違うんだ。その点、僕は良い医者に巡り会えたよ」
■『ボルドー・コンサート』
Keith Jarrett / Bordeaux Concert
2022年9月30日(金) リリース
UCCE-1194 SHM-CD ¥2,860(TAX IN)
1. パートⅠ
2. パートⅡ
3. パートⅢ
4. パートⅣ
5. パートⅤ
6. パートⅥ
7. パートⅦ
8. パートⅧ
9. パートⅨ
10. パートⅩ
11. パートⅪ
12. パートⅫ
13. パートXⅢ