HOME > ニュース >

世界的な原材料高騰 アナログレコードも影響 プレス工場/レーベル/小売業者を悩ませ続ける

2022/06/01 14:34掲載(Last Update:2022/06/01 14:47)
メールで知らせる   このエントリーをはてなブックマークに追加  
vinyl
vinyl
原材料の高騰が世界的な問題となる中、米ビルボード誌によると、アナログレコードも高騰の影響を受けています。

レコードは世界的な需要の増加、サプライチェーンの問題、原材料の高騰に対応するのに苦労しており、小売価格は上昇しつつあります。

ユニバーサルミュージックグループは5月に約2,400タイトルのレコードの卸売価格を引き上げています。昨年10月にはワーナー・ミュージック・グルーも約600タイトルの卸売価格を引き上げていました。

ニューベリー・コミックスのブランド・エンゲージメント担当ディレクターであるカール・メロによると、ユニバーサルミュージックグループの2,400タイトルのうち、1,200タイトルは19ドル以上の卸値になるとのことで、小売価格は30ドル(約3900円)になるという。

原材料の高騰については、レコードのプレス工場の幹部が米ビルボード誌に語ったところによると、過去1年間に原材料のビニル・ペレットの値上げが3回あり、価格はほぼ2倍になっているという。「パンデミック以前は、ポリ塩化ビニル(PVC)の価格は1ポンド(453.6グラム)当たり1.16ドルか1.17ドルだったのが、今は、すべての諸費用を考慮すると2ドルを超えています」と報じています。

またレコード・プレスに使われる金属製スタンパーの製造に欠かせないニッケルの不足も、この業界にとって新たな懸念材料となっています。

3月上旬、世界のニッケル生産量の約10%を供給するロシアに対する制裁措置により、サプライチェーンが寸断されるとの懸念から、ニッケル価格が2倍以上に上昇したため、ロンドン金属取引所は一時的に取引を停止しました。

カリフォルニア州アーバインに拠点を置き、全米のプレス工場にスタンパーを供給するニプロオプティクス社を経営するエド・グロスによると、ニッケル価格は3月上旬に1ポンド当たり30ドル以上と倍増、4月下旬には20ドル台に落ち着きますが、それでも以前よりも高いです。同工場では5月1日からスタンパー1台につき16ドル値上がりしています。

電気代、人件費、燃料費も高騰しており、これらのコストはレーベルに転嫁されています。IDLES、Fontaines D.C.、Laura Marlingなどを擁するPartisan Recordsのレーベルオペレーション担当グローバルディレクターであるアンディ・シュは、パッケージのニーズや数量にもよりますが、1枚あたりのコストは数セントから2ドル程度に上昇したと述べています。

さらに懸念されるのは納期で、Partisan社のマネージング・ディレクター兼上級副社長のZena Whiteは、納期が1年近くにまで延びているケースもあると指摘しています。「レコードの生産は量の勝負」「メジャーはより多くの量を保証することができるので、メジャーよりもインディペンデントに大きな打撃を与えてしまうのです」と述べています。

需要に対応するため、プレス工場の稼働率が上がり、他の工場も生産量を増やしています。カスケード社は生産量を50%増やすことを目標に週7日制に移行しました。デンバーのレコードクラブVinyl Me, Pleaseは、年内に14,000平方フィートのプレス施設をオープンする予定であり、Memphis Record Pressingは、9月までに稼働予定の36台のプレス機を含む約3千万ドルの拡張工事に取り組んでいます。

米ビルボード誌によると、レコードの需要が急増し、生産が苦しくなっているため、その穴を埋めるためにCDに注目する向きもあるとのこと。全米レコード協会(RIAA)によると、CDの出荷枚数は2020年の3160万枚から2021年には4660万枚と47%増加し、売上は4億8320万ドルから5億8420万ドルに増加しています。