ラッシュ(Rush)の
ゲディー・リー(Geddy Lee)と
アレックス・ライフソン(Alex Lifeson)は、カナダのラジオトーク番組『House Of Strombo』に出演し、
ニール・パート(Neil Peart)が亡くなる前のバンドを取り巻く状況について話しています。またアルバム『Moving Pictures』に収録されている「Vital Signs」は、ジョークとして作られた彼らの偽ニュー・ウェイヴ・バンドにインスパイアされた楽曲だとも話しています。
ニール・パートがバンドに加入してから40周年を記念して行ったツアーで、結果的に彼らの最後のツアーとなった『R40』ツアー。その終了後、もう二度とラッシュとしてプレイすることはないという事実をどう処理したかについてゲディーは次のように語っています。
「アル(アレックス・ライフソン)と僕とでは、それに対する対処の仕方が違うんだ。
アルは小さなプロジェクトにも大きなプロジェクトにも身を投じて、ずっと仕事を続けていて、それが彼にとっては本当に気付け薬になっていた。
僕はそれに共感できる。ニールが奥さんと娘さんを亡くしたとき、僕も同じようにソロアルバムに打ち込んで、いろいろな意味で救われたというか、糧になったからね。その瞬間や感情と張り合うのではなく、別の方法で自分のことを見つめ直し、充電するための方法だったんだ。
私たちはまったく異なる方法で対処したんだけど、でも結局のところ、それを脇に置くのは難しいことだったんだ。45年のキャリアを持つバンドで、僕らほど仲が良かったバンドはそうそうないと思うんだ」
アレックスは、こう話しています。「ツアーの直後は、ゲディーも僕も、まだガソリンがたくさん残っているような気がしていたんだ。ショーは素晴らしく、僕たちは本当に、本当によく演奏していた。もし、あと150回くらいライヴができればね」
ゲディーはがのように続けています。「正直に言うと、終わったときは悔しかった。あのツアーでは、デザインや構成、時間を逆行させるという全体的なコンセプト、時間を逆行させながら自分をさらけ出す年表など、とても熱心に取り組んだだけに、悔しかった。本当に誇りに思っていたんだ。ヨーロッパに持って行って、ヨーロッパのファンのために演奏したかったし、南米にも持って行きたかったけど、それは叶わなかった。僕の中では切り捨てられたという思いだったけど、それを飲み込まなければならなかったんだ。友人が何を必要とし何を望んでいるのか考えなければならなかったからね。でも、悔しかったよ。
そのあと、僕は旅行に行き、アレックスはゴルフをした。そして、ニールが病気になったんだよ。さっきの気持ちはどうしたかって? もう何の意味もないから、捨ててしまえばいいんだよ」
『R40』ツアーの最終公演の後、当初はラッシュが再び演奏する可能性があると思ったかと尋ねられたゲディーは、次のように答えています。
「ええ、もしかしたら(ニールが)3ヶ月間家で過ごして、それに嫌気がさしてツアーに戻って、みんなと一緒にプレイしたいと思うかもしれないと思っていたよ。分からないもんだね。もちろん、そうならないような予感はしていたし、アルもそう思っていたと思うけど、わからないもんだね。とにかく、僕らは自分たちの生活を続けていたんだけど、彼が病気になって、すべてが変わってしまったんだ」
ゲディーはまた、ニールが癌の診断を秘密にしたがったため、バンドはファンに秘密にすることで彼のプライバシーを保護せざるを得なかったと明かしました。
「(ニールは)誰にも(病気のことを)知られたくなかったんだ。彼はそうしなかったんだ。彼はそれを家の中に留めておきたかったんだ。だから、僕たちはそうした。それは大変なことだった。簡単だったとは言えないよ、簡単じゃなかったからね。それは今も続いている。診断では...長くても1年半と言われていたんだけど、3年半続いた。僕たちは常に彼に会いに行き、サポートをしていた。
彼の家族が経験しなければならないことは、本当に大変なことだった。だから、何度も何度も行き来していた。そのような状態になると、正常に機能することは非常に難しくなる。誰も知らないはずだから、誰にも相談できなかった。人は噂を聞いて話を持ちかけてくるんだけど、それもはぐらせなければならなかった。一方では不誠実と感じつつも、他方では友人に対して忠実であるとも感じているわけなんだ。なので、不誠実なんてクソくらえだ。それが勝因だよ。あの時、僕たちは前に進むのが最も難しい時期だったと言えるだろうね。僕たちは悲しみの泡の中にいて、避けられない恐ろしい結末に向かって歩いているようなものだったから」
また同じインタビューの中で、ゲディー・リーとアレックス・ライフソンは、彼らがどのようにして音楽のアイデアを導き出したのかを説明しました。
ラッシュには、馬鹿げた名前の偽のサイド・プロジェクトを考案する癖がありました。スタジオでのセッションの合間に、トリオは架空のバンドの曲を演奏してみたりしていました。その中には「ファビュラス・メン(The Fabulous Men)」というニュー・ウェイヴ・バンドもありました。
「ファビュラス・メンは、とてもニュー・ウェイヴだった。彼らはファビュラス(信じられないほど素晴らしい)で、そして、男だった(笑)」とゲディーは言い、アレックスが「僕はテープを持っているよ」と言うと、ゲディーは「そう、秘密にしておきたいテープがある」と付け加えています。
ファビュラス・メンは、ゲディー、アレックス、ニール・パートを楽しませるために作られたものですが、時にはそのジャム・セッションがラッシュの音楽に影響を与えることもありました。
「“Vital Signs”はファビュラス・メンから直接影響を受けているね」とゲディーは指摘し、さらに「それは間違いない。ファビュラス・メンに触発されたんだ。楽しかったよ。それが僕たちの背中を押して影響を与えたとすれば、それは偶発的なものなんだけど、でも、楽しさは伝染するんだ。特にヘヴィなテーマを扱うバンドにとっては、その中にちょっとした楽しみを摂取できれば、それに越したことはないからね」
多くのレコーディング・セッションは、エンジニアがコントロール・ルームで何か作業をしなければならなくなると中断してしまう。そのため3人は、仕事に戻れるまで自分たちを楽しませる必要がありました。
アレックスによると、プロデューサーのテリー・ブラウンが母親との電話を終えるのを待つ間、バンドは退屈しのぎに、さまざまなジャンルでラッシュの名曲を演奏したことがあるという。
ゲディーは「ただ座って待っているわけにはいかないから、自分を解放して、レコーディングの準備をして、ジャムを始めるんだ。マイクを通して自分のフラストレーションを発散させるんだよ」