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音楽を聴いて他人と似た物語を想像するのは同じ文化を持つから 文化が異なると全く異なるものを想像する 研究結果

2022/04/18 18:39掲載
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listening to music
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最近の研究によると、同じような文化を持つ2人に、聴いたことのない同じ曲を聴かせて物語を想像してもらうと、驚くほど似た物語を想像するという。こうした想像上の物語がどの程度共有されるかは、2人の間で文化がどの程度共有されているかによるそうで、同じ文化を持たない人に同じ曲を聴かせても、全く異なるものを想像するという。このことから、研究者たちは、音楽は確かに同じような心的体験をもたらすものの、それは文化が大きな要因であると説明しています。

米ニュー・ジャージー州のプリンストン大学の科学者たちは、何百人もの人を対象に、インストゥルメンタル曲を聴いているときに想像したり、心の中で見たりした物語について調査を行いました。

この研究には、計622人が参加しました。ボランティアは全員、米国のアーカンソー州とミシガン州、または中国の少数民族の一つであるトン族の町から参加しています。トン族の人々は、欧米のメディアや文化にほとんど接することがないという。

参加者には60秒間のインスト音楽を32曲、同じように聴いてもらいました。そのうちの半分は西洋の音楽で、残りは中国の音楽です。すべての曲は、完全にインストゥルメンタルで、歌は一切ありませんでした。

各曲を聴いた後、研究者たちは各参加者に聴きながら頭に浮かんだイメージについて尋ねました。

アーカンソー州とミシガン州の人々は、まったく同じ言葉を頻繁に使い、よく似た話を説明しました。一方、トン族のリスナーは、トン族内では互いに似ていますが、アメリカのリスナーとは全く異なるストーリーを思い描いていました。

具体的には、ある曲では、アメリカ人のリスナーは、森から昇る朝日をイメージし、動物が草を食べ、鳥のさえずりが聞こえるというものでした。一方、トン族のリスナーは、山で葉っぱを吹きながら、同時に愛する人に歌を歌う姿を想像したという。

また別の曲では、アメリカ人は、暑い砂漠の中でカウボーイが誰もいない町を調査している様子を思い浮かべました。一方、トン族のリスナーは、同じ曲を聴いて、愛する人を失って思い悩む太古の人の姿を想像しました。

プリンストン大学のエリザベス・マルグリス教授は「音楽は、リスナーの心の中に驚くほど似た物語を生み出すことができますが、これらの想像上の物語がどの程度共有されているかは、リスナーの間で文化がどの程度共有されているかによるのです」と述べています。

この研究の共著者である、ドラマーで音楽学部博士研究員のベンジャミン・クビットは、「これは驚くべきことです。似たような環境で育った2人をランダムに選んで、聴いたことのない曲を聴いてもらい、物語を想像してもらうと、共通点が見つかるのです。しかし、その2人が文化や地理的な場所を共有していなければ、同じような類似した体験は得られないのです。つまり、音楽は人と人を結びつけるものだと想像できますが、その逆もあります。異なる背景や文化を持つ人々の集合を区別することができるのです」

この研究は、『Proceedings of the National Academy of Sciences』に掲載されています。