トニー・レヴィン(Tony Levin) は、
ピーター・ガブリエル(Peter Gabriel) との仕事を振り返り、「ピーターと一緒に演奏することで、僕はまったく違う、より優れたミュージシャンになれたと思うんだ」と、ミッチ・ラフォンとの最近のインタビューの中で語っています。
レヴィンは、ピーター・ガブリエルとの仕事について、「ピーター・ガブリエルのリクエストに応えられないと思ったことはないのか? それとも天賦の才があるから、どんなことでもうまくやってのけたのか?」と質問されて、こう答えています。
「とてもいい質問だ。最後の部分は忘れよう。僕には天賦の才はない。僕は、一緒に演奏したとても優れたミュージシャンたちの中で、より優れたプレーヤーになったんだ。それは僕が子供の頃、最初に組んだバンドのドラマーが The Cavaliersというバンドだったことから始まったんだ。そのドラマーは偉大だった。僕はそうじゃなかった(笑)。その数年後に偉大になったわけではない。でも、学ぶことはできるんだ。
音楽で素晴らしいことのひとつは、自分より上のレベルのプレーヤーと一緒に演奏する機会があること。学ぶことができるんだ。
ピーターと一緒に演奏することで、僕はまったく違う、より優れたミュージシャンになれたと思うんだ。彼のパフォーマンスはもちろんのこと、彼の考え方も...。それに彼のステージングもだ。そこから学んだ。彼の真似をしたわけじゃない。でも、素晴らしいパフォーマーの後ろに立つことで、それを楽しみ、感謝するだけでなく、できれば自分自身のパフォーマーとしてのレベルも上げたいと思うようになったんだ。
彼は別のアイデアや音楽的なアイデアに対してとてもオープンなんだ。それは、彼がプログレ・プレーヤーだからとか、ジェネシス出身だからとかいう理由ではなく、人間として、音楽的人格として、そういうものなんだ。
76年7月、初めて彼に触れたときからそうだった。多分、僕は多少普通のベース・パートを弾いていたんだと思う。すると彼は“ハイになったら?”とか、いろいろと変わったことを言うんだよ。
それから何年か経って、僕が初めてチャップマン・スティックという楽器を持って現れたときのこと。彼はそれを見て、僕が演奏しているのを見ていた。指で弾くタッチ・スタイルの楽器なんだけど、彼はちょっと考えて“指にシンバルをつけたらどうだろう”と言ったんだ。
考えてみてよ。彼は今まで見たこともないようなオルタナティヴな音と見た目のベースを見ていたんだ。彼が最初に考えたのは“どうしたら、これを本当にオルタナティブなものにできるだろうか”ということだった。率直に言うと、その話の結末は、僕はまだ指にシンバルを試したことがない(笑)。だから、それは未来のどこかでやるかもしれないんだけど、でも、こういうのがアイデアを与えてくれるものなんだ。
それと、“Big Time”という曲は、アルバムを作るときに、ドラマーのジェリー・マロッタにベースの弦を弾いてもらい、僕は指弾きをしていたんだ。ライヴでは右手に持ったドラムスティック1本で演奏しようとして、サウンドチェックでは常にその練習をしていた。ある日のサウンドチェックで、ピーターが僕のそばに通って僕を見て、“ドラムスティック2本を切って指につけてみたらどうだ”と言ったんだ。それで、僕はそれを“ファンク・フィンガー”と名付けたんだよ。まったく違う演奏法だった。思いもつかなかったよ。
彼は... 他の人が見るのとは違う方法で物事を見ている、彼にとっては、とても簡単なことなんだ。彼のライヴを見ると、観客やバンドが感動する理由のひとつは、彼の個性や内面を見ることができるからだと思う。彼は“もし自分が逆さまにぶら下がってこの曲を歌い、輪になって歩いていたらどうだろう”と考えた。誰も思いつかない......誰も夢にも思わない。僕たちはそれに共感し、惹かれたんだ。それがピーター・ガブリエルのライヴのマジックの一部なんだよ」
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