『ホルスの大冒険』から『おもひでぽろぽろ』まで。アニメ特有の制作過程をふまえつつも実写映画と共通する手法から演出の特色を緻密に分析、ディズニー的古典モデルからの脱却を推し進めた高畑勲作品の現代性を解き明かす。書籍『シネアスト高畑勲――アニメの現代性』は、みすず書房から4月18日発売予定。
■『シネアスト高畑勲――アニメの現代性』
著者:ステファヌ・ルルー
訳者:岡村民夫
判型:四六判 タテ188mm×ヨコ128mm
頁数:344頁
定価:4,180円 (本体:3,800円)
ISBN:978-4-622-09094-6
発行予定日:2022年4月18日予定
<内容>
「私たちにとって重要だったのは、アニメーションの仕事のなかに一種の空間の連続性と時間の連続性をもたらすことでした。これは時間の次元で明らかに人工的なものですが、動物だろうと魚だろうと映画に登場するすべてのキャラクターに関して、観客が動きを一貫的で正しいもののなかで見られるように仕事をしようと考えていました。その意味でこの仕事に関して、私たちの目的はアニメーション映画を通して映画作品をつくること、アニメーション映画を用いてシネマの映画作品を実現することだったといえると思います」
東映動画『太陽の王子 ホルスの大冒険』からテレビシリーズ『ルパン三世』『アルプスの少女ハイジ』、スタジオジブリ『おもひでぽろぽろ』まで——アニメ特有の制作過程をふまえつつも実写映画と共通する手法から演出の特色を緻密に分析、ディズニー的古典モデルからの脱却をラディカルに推し進めた高畑作品の「現代性」を解き明かすモノグラフィ。
【目次】
目次
読者への覚え書き
謝辞
序
第1章 難産した王子『ホルス』
1 東映動画における緊張の主体
2 『ホルス』の傷痕
3 『ホルス』の透明な包帯
第2章 映画空間
1 本物のシネアスト
2 映像の構成と画面の奥行き
a 写実的ソフトフォーカス
b 遠近法の効果
c 遠近法における場面演出術
3 カメラワーク
a パンフォーカスの美学
b パンは移動撮影ではない
c 移動撮影はパンではない
d 軸上の移動撮影
e 組み合わせと実験
f 場所に対するカメラ
第3章 イントロダクションのシークエンス
1 アニメの古典的オープニング
a 様式的なタイトルバック、なめらかなイントロダクション
b フィクションへの壮大で厳かな導入
c 自閉したディズニー的世界
d 西欧とソユーズムリトフィルム
e 東映動画
2 『ホルス』のオープンニング
a 現実効果
b 現場にいるという印象
c 空間の内部で
第4章 フィクションとの新たな関係
1 即自的空間の構築
a 画面への自発的なイン
b 運動の自由さ
c アニメにおける空間のふたつの住まい方
d 観客の主体的参加
2 即自的世界の物語
a 無造作なつなぎ
b 欠落のある移行部
c 斧での叙述
第5章 『ホルス』後、人間的リアリズムへ
1 テレビでもシネアストにとどまる
a 『ルパン三世』第一シリーズ、演出修正
b 空間の組織化、会話
c 空間の組織化、アクション
d 『荒野の少年イサム』とその他の一時的仕事
2 日常的リアリティと精神的リアリティ
a 『パンダコパンダ』、日常空間
b 『アルプスの少女ハイジ』、人間の顔をしたリアリズム
c 異化されたリアリズムへ
注
文献 西洋における(日本の)アニメーションとその他の著作、インターネットサイト
訳者あとがき