ニューヨークに本拠を置くエレクトロ・ハーモニックス社は、ロシア政府が輸出禁止とした品目の中に、同社が他社を含むギターアンプと一部のペダルの製造に提供しているロシア製の真空管が含まれていることを確認。現在のところ、この禁止措置は2022年末まで有効であるとされており、すでに真空管の供給不足に悩まされているギター業界にとって、かなりの痛手となる可能性があると言われています。
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、国際社会がロシアに課した制裁措置の報復として、ロシア政府は先日、日米欧などを対象に通信機器、医療機器や自動車など200品目以上の輸出を2022年末まで禁じると発表しています。
エレクトロ・ハーモニックス社はロシアのサラトフに工場を持っています。同社の創設者マイク・マシューズは、今回のロシアの輸出禁止措置が、その工場で製造されている7ブランドの真空管にも適用されることを確認しています。真空管のブランドは、Tung-Sol、Electro-Harmonix、EH Gold、Genalex Gold Lion、Mullard、Svetlana、Sovtekが含まれています。
ラジオやテレビが真空管を使わなくなって久しいですが、ギター・アンプ業界は今でもこの技術に大きく依存しており、大手アンプ・メーカーの多くは真空管を自社で生産するのではなく、サードパーティーの工場から調達しています。
輸出禁止となったブランドのひとつ、Sovtekはギターアンプに使用されているEL84、12AX7、EL34の真空管を製造しているため、この禁止令はエレクトロ・ハーモニックス製品に限らず広く影響を及ぼす可能性があります。
マシューズは週末に発表した声明の中で「今回の輸出禁止により、これらのブランドの真空管の在庫をこれ以上受け取ることはできません。サプライチェーンへの継続的な負担、内部費用の増大、インフレの高まり、絶え間なく変化する法的状況(特にウクライナ紛争に照らして)など、無数の圧力が、非常に流動的であいまいな環境を生み出しています。これらの要因の影響を適切に評価できるようになるまで、当社は新規の注文を受け付けず、バックオーダー中のロシア製真空管をこれ以上出荷しない予定です」と述べています。
状況はまだ予測できませんが、真空管の不足は一部のアナログ機器の生産と価格に大きな混乱をもたらすと予想されています。
【update:2022/03/17 12:13】
エレクトロ・ハーモニックス社は以下の声明を新たに発表しています。最新情報によると、輸出禁止につながった問題は「今のところ」解決したようですが、卸売価格は値上げされ、さらにロシア製品に対する関税の影響により価格はさらに上昇する可能性があります。
「ロシア製真空管の輸出規制は、今のところ解消されています。新規注文、バックオーダーを受け付け、4月中に出荷を再開したいと考えています。古い注文から優先的に出荷します。
さまざまな経済的圧力を考慮して、私たちは卸売価格の値上げをしなければなりません。この値上げはすべてのバックオーダーと新規オーダーに適用されます。また、政府がロシア製品に対する関税を引き上げた場合、カナダが現在課している35%の関税率と同様に、ニューヨーク本社から出荷される真空管の価格はさらに上昇する可能性があります。欧州連合 (EU) 、英国、日本など他の地域も追随するとみられています」