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英国の独立系レコード店経営者「レコードストアデイは独立系レコード店にとって、助けになるどころか、害にもなっている」

2022/02/18 16:34掲載
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RECORD STORE DAY
RECORD STORE DAY
インターネットもない時代から英国で独立系レコード店を経営している人物は、英国の新聞ガーディアン紙に「レコード・ストア・デイは、私のような独立系レコード店にとって、助けになるどころか、害にもなっている」というコラムを寄稿しています。

ルパート・モリソンという人物で、彼は現在のサプライチェーンの混乱と世界的なレコード不足により、かつてレコード店を存続の危機から救った「レコード・ストア・デイ(RSD)」が道を踏み外していると指摘しています。

「(レコード・ストア・デイは)かつては実店舗の活性化に貢献したが、今ではそれが支援すると主張しているものの首を絞めるものとなっている。

私は、RSDもインターネットもない時代から独立系レコード店を経営している。2000年代初頭、違法ダウンロードの台頭によりレコード店が壊滅的な打撃を受けていた頃、RSDは何百万ポンドもの売り上げを記録し、新しい世代をフィジカル・ミュージックの世界に向かわせたのは間違いない。RSDは驚くべきイベントであり、その初期は革命として記憶されるべきである。

しかし、テクノロジーと小売業において、15年というのは長い時間だ。どんなに個性的な実店舗のレコード店も、今ではインターネットを介して世界中の人々にサービスを提供している。一方、レコード・ストア・デイは、フィジカル・ミュージックを販売するという現代の現実に適応していない。

評論家たちは、このイベントがノベルティ・ディスクに偏り、キュレーションが不十分であると長い間揶揄してきた。今年のRSDでは、411枚の新譜が発売されるが、この事実は、フィジカル・ミュージック・ビジネスに携わる人々をを悩ますに違いない。Brexitとパンデミックにより、今は十分な数のレコードを作ることができない。レコードの製造に必要な様々な部品が国際的に不足していることに加え、昨年のポップス系のリリースが多かったこともあり、バックカタログが悪化しているのだ。

この問題は解決していない。通常、レコードの製造には12週間かかるが、現在では12インチの短期生産でも9ヶ月かかると言われている。(RSDの命ともいえるカラーヴァイナルの品薄については言及していない)。ミドルズブラとヨーテボリに新しいプレス工場がオープンしたが、これらの工場の生産能力をもってしても、需要には及ばない。

この411枚のレコードの中には、ボウイの4枚とプリンスの1枚が含まれており、4月23日の発売を待っている。その制作の規模の大きさを目の当たりにしたとき、私はソーシャルメディア上で“レコード業界全体のためには、1年間の休暇を取ることが最善ではないか”と提案したが、多くの人は“嫌なら参加しなければいい”と答えた。これこそがRSDの最大の現在の誤りではないだろうか。RSDに参加しないお店でも、RSDの生産スケジュールによる在庫の遅延や不足が続くことで、長期的には苦しい状況にある。RSDは1年中、毎月のように開催されており、慎重に計画されたキャンペーンも台無しになっているのだ。

12ヶ月前にオンラインで予約されたアルバムがあるが、そのアルバムは頻繁に延期されていて、新たに仮のリリース日を設定するのが無駄だと感じている。ショップにとっては管理上の負担が大きく、独立系アーティストやレーベルにとっては経済的な影響が甚大だ。プロモーションや初週の売上に欠かせないインストア・ライヴは、キャンセルやスケジュール変更が相次ぎ、アーティストは期待していたチャート・ポジションを逃し、夏のツアー・スケジュールは、フィジカル作品のリリースがいつ実現するのかという不確実性のために、すべて中止されている。

レコードショップの仕事は、簡単に言えば、レコードを売ることだ。私たちは長い間確立されてきた音楽のエコシステムの一部だが、RSDの影響もあって、私たちの仕事はますます妨げられている。棚がボロボロになり、小売価格が高騰し続けても、それを祝う店はあるのだろうか?

RSDがレコード店の真の味方として再構築されることを願っている。このイベントは、このような壊滅的な生産の行き詰まりが解消されるまで延期する必要がある。また、主催者は、このユニークな文化を将来的に祝ってもらうための最善の方法をショップオーナーと相談する必要がある。レコード店のカレンダーの他の364日間が、RSDの脇役になっているのは皮肉なことだ」