ロカビリーバンド、
ザ・ロカッツ(The Rockats)の
スマッティ・スミフ(スマッティ・スミス/Smutty Smiff)が愛用したベースが39年ぶりに見つかる。1982年に行方不明になった場所から数キロメートル離れた質屋に置かれていたという。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、見つかったのは、大きな「SMUTTY」のロゴが付いたアップライト・ベース。
当時、ザ・ロカッツのローディは、ニュージャージー州パサイックで行われた公演の会場から、機材を満載したバンを運転してマンハッタンに向かっていました。ローディは、食事をするためにプレハブ式レストランのホーランド・トンネル・ダイナーに立ち寄りますが、あまりの寒さにバンのエンジンをかけたまま、中に入りました。夜中でしたが、しばらくして彼が戻ってくると、バンは消え、中にあったベースを含むすべての機材も盗まれてしまいました。
それから39年後、ギタリストで作曲家のスティーブ・ウルリッヒは、ある日、盗まれた場所から数キロメートルしか離れていないニュージャージー州ジャージー・シティの質屋でこのベースを見つけます。
スティーブは、質屋でこのスタンドアップ・ベースを見た瞬間、それが誰のものか、すぐに分かったという。底面に大きなピンクの文字で「SMUTTY」と書かれていました。
スティーブにとって、ザ・ロカッツ、特にスマッティは大きな存在で「スマッティには本当に衝撃を受けました。それまで見たこともないような大きな存在だった」と話しています。
スティーブは、なぜスマッティがこのベースを売りに出したのか不思議に思い、質屋の店主であるマニー・ヴィダルにベースの値段を尋ねたという。ヴィダルは「売り物ではない」と答えます。
スティーブが自身のFacebookにベースの写真を投稿すると、何百ものコメントが寄せられました。ロカビリー・ファンからのコメントや、このベースを買いたいというコレクターからのコメントも多かったという。
しかし、あるコメントだけは違っていました。それはザ・ロカッツのリズムギタリスト、バリー・ライアンからのものでした。彼は「あのベースは、40年前にホーランド・トンネル・ダイナーから機材を満載したバンと一緒に盗まれたものだ」と書いていました。
その日のうちに、スティーブの携帯電話が鳴ります。「スマッティ・スミフだ。俺のベースを見つけたそうだな」と、現在住んでいるアイスランドから長距離電話をかけてきたスマッティ(現在62歳)でした。
スマッティは、その後、ベースが見つかった質屋に電話します。スマッティは、盗まれたベースの話と、それを返してほしいという気持ちを店主のヴィダルに伝えます。
ヴィダルは、スマッティのベースが盗まれた頃、彼は19歳で、自身もベーシストとして活動していました。
ある日、彼は教会のバンドで演奏した後、ガールフレンドの家に向かっている途中で、ガレージに集まる男の一人から「おい、これを見ろよ」と呼び止められます。ガレージには、スマッティのベースがありました。
ヴィダルはザ・ロカッツを見たこともなければ、スマッティ・スミフという名前も聞いたことがなかったという。
ヴィダルはお金がありませんでしたが、スタンドアップ・ベースを習いたかったので、自身のフェンダー・プレシジョンベースと交換して手に入れます。その後、スタンドアップ・ベースは何年もかけて彼と一緒に各地を転々とします。1986年、ジャージーシティのおもちゃ屋で働いていたヴィダルは、隣の質屋のオーナーからそこでの仕事を依頼されました。その後、質屋の経営を学び、最終的には質屋を買収して現在に至ります。
現在58歳のヴィダルは、質屋に入る前から持っていたスタンドアップ・ベースが盗まれたものだとは知らなかったと言っています。2010年、彼はスタンドアップ・ベースを自宅から質屋の目立つ場所に移動させます。
ヴィダルは「盗まれたことを知っていたら、SMUTTYと書かれたものを置いておくだろうか? これまでに一度も売りに出そうとを思ったことはなく、特別な思い入れがある」と話しています。
スマッティがベースの返却を求めると、ヴィダルは、長く良好な状態に保ち続けたことへの補償と、自分のフェンダー・プレシジョンベースをトレードしたときに失ったお金の補償を求めます。彼は「ベース1本分の費用がかかったんだ」と言い、ベースをずっと良好な状態に保っていて「弦はオリジナルのままだと思うよ」と付け加えています。
スマッティはヴィダルにベースを取り戻すために数百ドルを提示しました。
スマッティは、ザ・ロカッツのニューアルバムをレコーディングしている最中で、来年のツアーに間に合うようにベースを返してもらいたいと考えています。警察沙汰にはしたくないので、スマッティはヴィダルとの妥協点を探りました。
万が一に備えてお金を用意しますが、「持っていないお金を渡すことはできない。それに、なぜ自分のベースを買い戻さなければならないのか? これは俺のベースで、娘がすごく気に入っていると言っていたし、俺もすごく気に入っているんだ。自分の名前が入っているんだからね」
スマッティによると、最終的にヴィダルは補償金なしでベースを返却することに同意したという。