Randy Bachman with his 1957 Gretsch guitar in the video for "Lookin' Out for Number 1" in 1975.
元
ゲス・フー(Guess Who)の
ランディ・バックマン(Randy Bachman)は、愛用していたエレキギターを1976年に紛失。カナダのトロントで失くしたギターが45年後、東京で見つかっています。
カナダのCTV Newsによると、このギターは、グレッチ愛好家の間では聖杯と呼ばれているという、ウェスタンオレンジの1957年製グレッチ・チェット・アトキンスモデル 6120。
バックマンは、
バックマン・ターナー・オーヴァードライヴ(Bachman-Turner Overdrive)の通算6作目のアルバムをレコーディングしていた1976年に紛失したという。
本当に愛したギターで、当時は外に持ち出す時、ギターケースをホテルのトイレに鎖でつないで保管していたという。「トイレの横に置いて、レッカー車のチェーンを使ってトイレに2回巻いて、鍵を2つかけていた。もし誰かがギターを盗もうとしたら、配管工になるか、トイレを壊すしかなかっただろうね」とCTV Newsに話しています。
しかし、バンドがスタジオで最後の夜を過ごした後、地元に戻る長いドライブの前に、このギターをロード・マネージャーに手渡します。
「俺は“目を離すな”と言ったんだが、彼はホテルに行って、それを部屋に置いて、デスクでチェックアウトしようしていた。4分後、いや5分後、チェックアウトした後に、なくなっていたんだ」
バックマンは盗まれた後、「何日も泣いた」とCTV Newsに語っています。その後、彼は警察やヴィンテージ楽器ディーラーの協力を得て、数十年にわたってギターの捜索を行いますが、その後、最近まで見つかることはありませんでした。
バックマンは「このことが頭から離れない俺は、オファーされたグレッチを片っ端から買ったよ。結局、グレッチのギターを385本持っているんだ。気が狂いそうだったよ」。
バックマンは、1980年代後半にグレッチ・ファミリーがグレッチの経営権を取り戻し、クラシック・モデルの生産を再開しようとしたときに、彼に助けを求めたほどのコレクションを持っていたという。なんでも、初期のグレッチ・プロトタイプは、2度にわたる工場の大火事で破壊されていたからで、グレッチは彼のギターを5、6本ずつ借り受け、細部まで丹念にコピーしたという。「今日、どこの店で見ても、誰が弾いても、グレッチはすべて俺のコレクションのコピーだ」とバックマンは言っています。
新型コロナウイルスのパンデミックが起き、自宅に居たバックマンは古い隣人からメールを受け取ります。そこには「東京であなたのグレッチ・ギターを見つけました」と書かれていました。
バックマンによると、隣人はギターの古い写真を使い、顔認識ソフトを使って、ギターのボディに沿った独特の木目模様とひび割れたラッカーのラインを識別して特徴を把握。それを基に、過去10年半の間にネット上に投稿されたオレンジ色の1957年製チェット・アトキンス・ギターの画像すべてを対象にスキャンを行った結果、2019年のクリスマスイブに日本人が投稿したYouTube映像がヒットします。
この映像では日本のミュージシャンであるTAKESHIがウェスタンオレンジの1957年製グレッチ・チェット・アトキンスモデル 6120を弾いています。
TAKESHIは、作詞家・作曲家・アレンジャーとしてTOKIO、嵐、タッキー&翼、関ジャニ∞、加藤和樹など数々のアーティストに楽曲を提供しています。
バックマンはTAKESHIと連絡を取り、その後、ビデオ会議での打ち合わせが行われました。
TAKESHIは、このグレッチ・ギターが1976年にバックマンから盗まれたものであることを知らずに、東京で購入したと説明。
TAKESHIがグレッチ・ギターを見せると、バックマンは「電気ショックのような衝撃を受けた」という。盗まれたときとあまり変わらない姿に「このギターを持っていた人は、このギターを愛し、大切にしていたんだ」と話しています。
問題は、TAKESHIもこのギターを愛していることでした。TAKESHIはバックマンに「このギターには特別な思いがあるんだ」と言い、CTV Newsにも「東京の楽器店で初めてこのギターを見たとき、運命を感じた。すぐに、衝動的に購入した」と語っています。
このグレッチ・ギターが40年半の間にどのようにしてトロントから東京に渡ったのかは、まだはっきりしていません。
バックマンは「“TAKESHI、君はいつ生まれたんだ?”と聞いたんだ。すると彼は“1976年”と答えたので“その時に盗まれたんだよ”と言ったんだ」と話しています。
最終的に、TAKESHIはバックマンが同じメーカー、同じモデル、同じ色、同じ状態、同じ年式、同じ工場仕様のギターを見つけることを条件に交換に応じました。
1957年にグレッチが製造したギターは40本にも満たず、その後数十年の間に生き残ったほとんどすべてのギターが、何らかの形で望ましくない改造を受けていました。電話やメールなどでの問い合わせをし続けたバックマンはオハイオ州のレアなギターショップで大当たりを見つけ出します。「シリアルナンバーが俺のとは2桁違った」「つまり、同じ週に作られたということだよ」と彼は今でもその発見に驚いています。
TAKESHIは「盗まれたギターを持ち主に返すことができることを光栄に思い、誇りに思います」とコメントしています。
ランディ・バックマンがこのギターについて語る映像
TAKESHIが出演する2019年クリスマスイブの映像