
オールドスクール・デスメタル・ガイドブック 上巻: アメリカ・オセアニア・アジア編
『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック』発売決定。上中下3巻。まずはシーン発祥の地、アメリカ、そしてオセアニア、アジアから。『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック 上巻: アメリカ・オセアニア・アジア編』はパブリブから9月10日発売。「Thrash to Death」の古典的音源やタンパシーンなど歴史を検証
■『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック 上巻: アメリカ・オセアニア・アジア編』
村田恭基(著/文)
発行:パブリブ
A5判:224ページ 並製
価格:2,400円+税
発売予定日:2019年9月10日
<内容紹介>
ホラーな世界観・混沌としたプロダクション
荒々しい演奏…ニュースクールに相対する
ものとして再発見され、リバイバルした
オールドスクール・デスメタル!
上中下3巻、まずはシーン発祥の地、アメリカ、そしてオセアニア、アジアから!
「Thrash to Death」の古典的音源やタンパシーンなど歴史を検証
■サブジャンルでカテゴライズされる事はない偉大デスメタル Cannibal Corpse
■数々の人材を輩出し最重要アルバム創作した「デスメタルの帝王」 Morbid Angel
■デスメタルの生みの親の一人で、後のテクニカル・デスメタルの源流 Death
■結果的にデスメタルではレアな反キリスト主義者、自殺も撤回した Deicide
■近年のリヴァイバルで再評価されるオールドスクールの元祖中の元祖Autopsy
■ニューヨークからブルータルデスとも見なされる無調の実力者 Immolation
■現代暗黒主義的リヴァイバルの礎を築いたペンシルベニアの野蛮 Incantation
■後年のドローン・ドゥームに多大な影響を与えつつも無理解に苦しむ Winter
■ほかDeceased...、Necrophagia、Cianide、The Chasm等多数収録!
■『ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック』ショウ&高円寺Record Boy店長特別寄稿
■Autopsy、Master、Nunslaughterなどデスメタル長老達のインタビューも!
336アーティスト、509作品を紹介!
<前書きなど>
昨今のデスメタルには、様々な細分化したジャンル(サブ・ジャンル) がある。テクニカル・デスメタル、ブルータル・デスメタル、メロディック・デスメタル、デスコア、ブラッケンド・デスメタル、アヴァンギャルド・デスメタル、サイケデリック・デスメタルetc……。多様な枠組みで語られることの多いこのジャンルであるが、元々は一つのデスメタルとして登場した。「オールドスクール・デスメタル」は、この元々の文化としてあった古い時代のデスメタルを指している。現代のレーベルやバンドが、敢えてこの古い時代のデスメタルをリヴァイヴすることで生まれた昨今の流れにより、今再び注目を浴びている音楽ジャンルだ。
元々、デスメタルに対する「オールドスクール」なる形容は、1990年代半ばに登場したニュースクール・デスメタル(ブルータル・デスメタル)の対義語として登場しているが、その当時はリスナー間で「普通のデスメタルだろ」と捉えられる形でジャンル化することはなかった。しかし、長年に渡る数多くのレジェンダリー・ミュージシャンやマニアの尽力、2006年Daniel Ekeroth著『Swedish Death Metal』の刊行、同時代のインターネット文化の急速な発展を受け、世界的にシーンの再興が進んだ結果、2000年代後期には「オールドスクール・デスメタル」というジャンルとして一般に認知されるに至った。
『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック 上巻アメリカ・オセアニア・アジア編』は、このマニアックな音楽カルチャーを題材とした書籍である。1980年代中期から1990年代末期にかけて、北米、南米、アジア、オセアニア一帯で登場したデスメタル・バンド、及び相関のあった類義ジャンルのバンドを検証している。ディスクレビュー509枚、伝説的バンドのプロフィール22件、インタビュー7件、シーンの重要な参考人である、Record Boy店主 大倉了氏と、アウトブレイク・ショウ氏、ハマザキカク氏
のコラムを収録した。当初は一冊の音楽本として刊行予定だったが、35年以上に及ぶ歴史の厚み(あまりに膨大な情報量)を包括するため、地域と世代ごとに分けて紹介する運びとなった。本書は、その第一弾であり、パブリブが発刊する世界過激音楽シリーズの第十弾である。
本書が目指したのは、その世界過激音楽シリーズの慣例に習ったタイトル通り、オールドスクール・デスメタル・ジャンルのアーカイブ化である。ディスクレビューでは、レーベル、スタジオ、サウンドの描写、そのほか世界中のインタビュー記事やオフィシャルページから得た情報を、重要度順に400文字前後書き連ね、可能な限り作品の矮小化を避けるよう心がけた。プロフィールでは、オールドスクールな情報を優先的に記載した。例えばDeathの場合は、前身のMantasからDeathへ改名し、そこからテクニカル化する以前までに、焦点が当たる作りとなっている。Cianide、Drawn and Quartered、The Chasm等、これまで活字の場で話題に挙がることの少なかったレジェンドも、Morbid AngelやObituary等と同等の扱いで掲載した。これはジャンルの性質上、世界的な成功を収めた1990年代のバンドと、2000年代以降のアンダーグラウンド化したシーンで評価されているバンドが存在しており、その影響力や成功の度合いに、世代間で認識の差があるためである。また、デスメタルというジャンル自体が、スラッシュメタル、ブラックメタル、ハードコア/グラインドコアとの曖昧さの中で誕生しているため、一部ガイドとして誤解を招きかねない文脈や作品も敢えて掲載している。
インタビューで回答していただいたのは、AutopsyのChris Reifert、Jungle RotのDave Matrise、MasterのPaul Speckmann、NunslaughterのDon of the Dead、Deceased...のKingsley "King" Fowley、The ChasmのDaniel Corchado、MiseryのScott Edgar。これまで海外では数多くのインタビューを受けている大御所だが、日本の書籍という場では、ほとんどが初となる人物である。一部ご仲介いただいた、Obliteration Recordsの関根成年氏には、この場を借りて改めてお礼を申し上げたい。
また、本書はフルカラーが特色の一つである。CDやレコードのジャケット等の図版が豊富にあり、中世、退廃、地獄、魔境、闘争を色鮮やかに彩ったアートワークは、それだけでとても興味深い。
作品の選出やレビュー等における個人的見解についての異論は、いくらでも認める。言わば商業的価値を超えた土壌で、多くの発言により成り立っているのが当該ジャンルの特徴だ。「あれは違う」「これはこうだ」等の意見は、「間口の狭いジャンルの悪癖だ」と言われることも多いが、そうして音への理解が拡張され深化し、アンダーグラウンドは日々前進している。
上述した収録コンテンツを通じて、また隣接ジャンルを包括する兄弟書『ブルータルデスメタル ガイドブック』『ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック』と併せて、全世界を席巻したオールドスクール・デスメタルの凄みを体験してもらいたい。
<著者プロフィール>
村田恭基 (ムラタ ヤスモト) (著/文)
1994年3月生まれ、北海道育ち。2015年末に上京後は、レコードショップに勤務する。その傍ら、エクストリーム・メタル系ブログを不定期更新中。ハンドルネームは、ゲルマニウム。