2021年、ピアソラ生誕100周年。世界的バンドネオン奏者である小松亮太が、タンゴの歴史、音楽性、巨匠たちの素顔、時代との関わりなど、「タンゴのすべて」を余すところなく紹介。入門者から愛好家まで楽しめる、タンゴ解説書『タンゴの真実』が旬報社から3月26日発売
■『タンゴの真実』
小松亮太 著
出版年月日:2021/03/26
ISBN:9784845116799
判型・ページ数:430ページ
定価:本体4,000円+税
<内容>
2021年、ピアソラ生誕100周年!
世界的バンドネオン奏者である小松亮太氏が、
タンゴの歴史、音楽性、巨匠たちの素顔、時代との関わりなど、
「タンゴのすべて」を余すところなく紹介。
入門者から愛好家まで楽しめる、タンゴ解説書の決定版。
章ごとに本文で紹介される音源・動画がたどれるQRコード付き。
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◎まえがき
タンゴに興味ある人、あるいは僕のファンでいてくれる人たちは、「タンゴとはこういうもの」というイメージを漠然と、しかし絶対に持っているはずだ。
けれど、この本には巷(ちまた)に根づいたタンゴへの、期待されがちな定型イメージに迎合した話は出てこない。つまり「僕の奏でる哀愁のピアソラは・・・・・・」とか「遙かなるアルゼンチンの魅惑のバンドネオンが・・・・・・」といった話題が主旨になっていない。
予想を裏切りたいわけではなく、本当のことを書けば意外な話ばかりになってしまうのがタンゴなのである。執筆しながら改めて思い知らされた。これほどまでに先入観と実体が乖離したジャンルが他にあるだろうか。
その奥深さと面白さを専門的な視点で紐解いていくことは、どの音楽ジャンルでも行われている。クラシック、ジャズ、ロック、ワールドミュージック・・・・・・、あらゆる批評や解説、あるいは実際に演奏するためのガイド本や楽譜などなどが無数に存在する。本質を噛み砕いて世に語りかけることが慣習化されている。
なぜならその愉しさ、壮大さ、エクスタシーまでを、感覚だけを頼りに獲得してもらうことは極めて困難だからだ。その価値を感じて幸せになってもらうためには、最低限の予備知識が必要になる。価値あるものほど、手がかりは不可欠となる。
タンゴはこの点であまりに長く置いてきぼりを食ってきた。「情熱のタンゴ」といった時代遅れなキャッチコピーで楽な商売をしてばかりで、「アートとしてのタンゴ」であることを訴求する人間が少なすぎた。
そうこうするうちに多くのものを失った。このブランクを一冊の本で取り返せるとは思わないが、そろそろ本当のことを話してみたい。「タンゴの真実」というタイトルにしたのはそのためだ。
僕の実体験を元に書いたこの本が、新しいタンゴファンとミュージシャンのための寄る辺になれたとしたら無上の喜びである。
◎「タンゴの真実」 主なもくじ
第1章 「情熱のタンゴ」は本当か
第2章 歴史をひも解くトウモロコシ
第3章 名曲か名編曲か、それが問題だ
第4章 タンゴのリズムの超基本
第5章 バンドネオンって何だ?
第6章 タンゴ黄金時代の創造神たち
第7章 タンゴダンスは華麗じゃない
第8章 功罪のコンチネンタル・タンゴ
第9章 ドイツ東西バンドネオン狂騒曲
第10章 独断で綴る巨匠たち
第11章 門外漢たちのタンゴ徹底解剖
第12章 忘れるなウルグアイのタンゴ
第13章 ピアソラを愛しすぎる人たちへ
第14章 アウトローたちのバンドネオン
第15章 秘話と逸話のドイツ・バンドネオン業界
第16章 タンゴを愛した意外な面々
第17章 日本にタンゴがやって来た
第18章 140年間の最大の謎に迫る
・目次全体
第1章 「情熱のタンゴ」は本当か
ホントのタンゴはどこにある?
“タンゴ=アルゼンチン” のウソ&ホント
“タンゴ=ラテンアメリカ音楽“のウソ&ホント
“タンゴは大衆音楽” のウソ&ホント
“タンゴの魂=バンドネオン”のウソ&ホント
情熱と哀愁の印象操作
第2章 歴史をひも解くトウモロコシ
白人、先住民、黒人、クリオージョ、そして移民たち
「タンゴの心情」の起源とポルテ−ニョ
1880年代 “フルートのタンゴ”
1900年代“吹奏楽のタンゴ”
1910年代“都々逸のタンゴ&バンドネオンのタンゴ”
1920年代“ピアノのタンゴ&映画館のタンゴ”
1930年代“後ろ向きのタンゴ&ダリエンソのタンゴ”
1940年代“空前絶後のタンゴ”
1950年代“世界のタンゴ”
1960年代“小編成のタンゴ&日本のタンゴ”
1970年代“崩れゆく伝統的タンゴ”
1980年代“氷河期のタンゴ”
1990〜2000年代“ピアソラ不在のピアソラのタンゴ”
2010年代以降“彷徨えるタンゴ”
第3章 名曲か名編曲か、それが問題だ
タンゴの物理的生命線
「エルチョクロ」アレンジくらべ
アディオス・ノニーノは名曲か
アレンジの中にアレンジあリ
古臭さには意味がある
タンゴで目覚めたゴールドブレンド
楽譜は回るよ、どこまでも
編曲残酷物語
第4章 タンゴのリズムの超基本
フォー・ビート
シンコパ=シンコペーション
ジュンバ
ミロンガ
ミロンガ・カンドンベ
ワルツ
3・3・2のリズム
ハバネラは英国製?
リベルタンゴはタンゴじゃない?
2/4拍子=4/8拍子=4/4拍子
第5章 バンドネオンって何だ?
アコーディオンとバンドネオン徹底比較
これがホントの見分け方
悪魔が発明したわけではないが・・・・・・
音程変化の不可解
「ミ」への異常な愛着
引いてダメなら押してみな
買ったその日にすぐ弾ける
決定的すぎる音色
「タンゴのバンドネオン」の定義
バンドネオン解体ショー
すーはー、すーはー
カッコよさに数式あり
第6章 タンゴ黄金時代の創造神たち
“主義”の権化 フアン・ダリエンソ
断捨離のロマンティスト カルロス・ディサルリ
タンゴ・ビートはワープする オスバルド・プグリエーセ
街角のタンゴのヒーロー アニバル・トロイロ
これがタンゴの“ど真ん中“ アルフレド・ゴビ
タンゴ・インテリジェンスの聖化 オラシオ・サルガン
未完の大器 オスマル・マデルナ
忘れられたオルケスタたち
第7章 タンゴダンスは華麗じゃない
映画「ミロンゲーロス」
2019ブエノスアイレスの日常
ブエノスアイレスのアイデンティティ
ミロンゲーロとは
どのオルケスタで踊るか
ミロンガと生演奏
ブエノスアイレスのタンゴ浸透度
ショーの問題点
デモンストレーション
第8章 功罪のコンチネンタル・タンゴ
アルゼンチン・タンゴの厄介な隣人
アルフレッド・ハウゼの正体
トラウマのスネアドラム
スタンリー・ブラックの不運
マランド
アルゼンチン人のコンチネンタル・タンゴ
日本製コンチネンタル・タンゴ
第9章 ドイツ東西バンドネオン狂騒曲
バンドネオンは小さかった
便乗したのか、されたのか?
匂わせぶりな石碑
誰が呼んだかバンド「ニ」オン
怒れるケムニッツの人々
西のバンドVS東のツィンマーマン
判明したバンドネオンの真の確立者
従軍するバンドネオン
青島(チンタオ)と徳島 バンドネオンの旅
第10章 独断で綴る巨匠たち
ギター
ロベルト・クレラ/ウーゴ・リバス、シロ・ペレス/ルディ・フローレス、ファンホ・ドミンゲス
バンドネオン
レオポルド・フェデリコ/ビクトル・ラバジェン/カーチョ・ジァンニーニ
バイオリン
エンリケ・フランチーニ/カジェターノ・プグリッシ、ベルナルド・ベベル/
志賀清、脇精一、二村英之/エミリオ・ゴンサレス、ウーゴ・バラリス/フェルナンド・スアレス=パス/アントニオ・アグリ/ロベルト・ギサード、カルロス・アイナス/エンリケ・カメラーノ、シモン・バジュール/ネグロ・ロドリゲス、レオ・リペスケル/レイナルド・ニチェーレ、マウリシオ・マルチェリ/エルビーノ・バルダロ/フリオ・デカロ
ピアノ
オスバルド・ベリンジェリ、オスバルド・タランティーノ、エミリオ・ディラ・ベーニャ、ホセ・コランジェロ、オルランド・トリポディ/オマール・バレンテ
コントラバス
エンリケ・”キーチョ”・ディアス/エクトル・コンソーレ/アルシーデス・ロッシ/松永孝義
歌手
ロベルト・ゴジェネチェ/女性歌手たち/カルロス・ガルデル/藤沢嵐子/阿保郁夫
第11章 門外漢たちのタンゴ徹底解剖
映画のタンゴ泣き笑い
日本のフォーク・ロック・ポップス界
欧米のクラシック界
アルゼンチンのクラシック界
日本のクラシック界
欧米のジャズ・ポップス界
アルゼンチンのロック・ポップス・ジャズ界
アルゼンチン・フォルクローレ界
ラテンアメリカ諸外国
第12章 忘れるなウルグアイ・タンゴ
もう一つのタンゴの祖国〜ウルグアイと近隣南米諸国のタンゴ(西村秀人)
第13章 ピアソラを愛しすぎる人たちへ
ピアソラびいきの引き倒し
ピアソラと確証バイアス
タンゴ・ゼロ・アワーの不可解
ピアソラをどう「読む」のか
ヨーヨーとクレーメル
ピアソラの「鬼に金棒」
ピアソラ・サウンドを創った別人
無視される壮年期
ピアソラ真の革命軍とは
偉大なるアレンジャーとして
エレクトリックなピアソラ
タンゴで解釈するピアソラ
ピアソラの「人間臭すぎる」話
第14章 アウトローたちのバンドネオン
ロドルフォ・メデーロス
ディノ・サルーシ
エドゥアルド・ロビーラ
アレハンドロ・バルレッタ
チャマメのバンドネオン
武満徹、マウリシオ・カーゲル
第15章 秘話と逸話のドイツ・バンドネオン業界
バンドネオンの代名詞「AA社」
「ドイツ・コンツェルティーナ&バンドニオン連盟」が集結!
これがホントのバンドネオン?
ナゾの数字たちの衝撃
バンドネオン・クラブとナチズム
悲しきナレーションを検証する
バンドネオンの戦後処理
亜流と変種のバンドネオン祭り
シンフォネッタ
プラクティカル式とメイセル式バンドネオン
ペギュリ式バンドネオン
第16章 タンゴを愛した意外な面々
フィンランド
トルコとエジプト
ロシア(ソビエト)とラトヴィア
ルーマニアとポーランド
ユダヤ人のタンゴ
絶滅収容所のタンゴ
ヒトラーの愛したタンゴ
第17章 日本にタンゴがやって来た
僕のタンゴの原風景
戦前の日本製オルケスタたち
戦中〜戦後のタンゴ
本場で稼いだ日本のオルケスタ
コラム 日本のタンゴ100年(西村秀人)
第18章 140年間の最大の謎に迫る
人為的なバンドネオン・ブームの裏
伏線1、コンツェルティーナという「伏兵」
伏線2、コンツェルティーナのアメリカン・ドリーム
伏線3、ブラジルのバンドネオン
伏線4、リトアニアにあった「バンドネオンの極北」
伏線5、バンドニカ
伏線6、日本とクロマティック式バンドネオン
未来のバンドネオン奏者たちへ
<著者について>
バンドネオン奏者。洗足学園音楽大学客員教授。
1973年 東京生まれ。現代日本におけるバンドネオンの第一人者として、カーネギーホールや本場アルゼンチンにおいて記念碑的な公演も実現させ、世界を舞台に活躍を続けている。
これまで20枚以上のアルバムを制作し、海外アーティストとの公演も多数。タンゴの歴史にも造詣が深い。著書「小松亮太とタンゴへ行こう」(旬報社)