HOME > ニュース >

ドイツの科学者 屋内コンサートの「コロナ感染実験」の研究結果発表 感染対策を十分取っていれば広がるリスクは低い

2020/11/04 09:29掲載
メールで知らせる   このエントリーをはてなブックマークに追加  
Restart-19 - CREDIT: Sean Gallup/Getty Images
Restart-19 - CREDIT: Sean Gallup/Getty Images
ドイツの科学者たちは8月、大規模な屋内コンサートにおいて新型コロナウイルスがどのように拡散していくのかを調査する実験を実施。この研究結果がオンラインで発表されています。

このプロジェクトは「Restart-19」と呼ばれ、8月22日にドイツのライプツィヒにあるアリーナにて、同国のシンガーソングライター、ティム・ベンツコらを迎えて行われています。

この研究では、1,400人がボランティアで参加。参加者は全員、新型コロナウイルスの事前検査を受け、体温を測定し、参加者の動きのデータを収集するデジタル位置情報追跡装置、マスク、蛍光色素を混入した手指消毒剤を装着して参加しています。

当日はソーシャルディスタンスのレベルが異なる3つのコンサートを実施。最初のものはパンデミック前のイベントを再現したもので、2回目はパンデミック後の衛生管理を意識し、ある程度の距離を置いたもの、3回目は観客数を半分程度に抑え、人と人との距離を1.5メートル以上取るのを義務づけたものでした。

科学者らは、この結果をもとに、コンサートでどのような活動が最も感染リスクが高いかを判断し、ライヴ・コンサートを安全に再開する際のリスクを軽減するためのガイドラインを作成したいと考えています。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、科学者たちは、コンサートの来場者が衛生基準を守り(マスク着用ほか)、会場の換気が良好で、収容人数が制限されている限り、屋内コンサートでコロナウイルスが広がるリスクは「低いか、非常に低い」と発表しています。

科学者の1人であるMichael Gekle博士は「このようなコンサートを開かない理由はない」「感染するリスクは非常に低いです」とニューヨーク・タイムズ紙に話しています。

科学者たちは、換気がコロナウイルスの拡散を制限する上で特に重要な要素であることを発表。「ジェットノズルがアリーナ内に新鮮な空気を送り続けた」時と、「新鮮な空気を屋上からアリーナに取り入れてジェットノズルのスイッチを切った」時では、後者の方がコロナウイルスにさらされる可能性がはるかに高く、空気の循環がリスクを低減することが分かったという。

さらに、この研究では、ソーシャルディスタンス(社会的な距離)が、ウイルスを運ぶ可能性のあるエアロゾルへの接触を減少させる重要な要因であることががわかりました。研究によると、最も密接な接触があったのは、ショーの休憩時間と、コンサートの参加者が最初に会場に到着したときでした。

科学者たちは、ソーシャルディスタンスを確保することと空気の循環を増やすことの両方が新型コロナウイルスの潜在的なリスクを大幅に減少させたと述べています。

Gekle博士は「換気が重要であることはわかっていましたが、これほど重要になるとは思っていませんでした」と述べています。

ただ、ニューヨーク・タイムズ紙は、この研究はまだ査読プロセスを経ていないと指摘しています。

「一部の専門家は、この結果について懐疑的な見方をしています。再現とレビューが必要であり、研究者がこのモデルをどのように利用したかについてはさらに情報が必要だと述べている」

また英国王立医学協会の疫学と公衆衛生の会長であるガブリエル・スカリー博士は、ニューヨーク・タイムズ紙に、今回の研究結果は潜在的に“有用”ではあるが、通常のイベントではこの環境を再現するのは難しいかもしれないと述べています。

●研究結果 全文(PDF)
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.10.28.20221580v1.full.pdf

以下は実験当日の映像・写真