ソニーミュージックはエルヴィス・プレスリーが1970年にナッシュヴィルの凄腕ミュージシャン達”ナッシュヴィル・キャッツ”と行ったマラソン・セッションを記録した待望の決定版『フロム・エルヴィス・イン・ナッシュヴィル(From Elvis In Nashville)』をCD4枚組/デジタル版のコレクションとして2020年11月20日(金)にリリースすることを発表した。
1970年6月、ナッシュヴィルのRCAスタジオBにて5日5晩連続という超ロングランで生録音が行われたセッションでエルヴィスが行ったパフォーマンスは、彼のアルバムの中で1970年代に最も大きな成功を収めた3作『エルヴィス・オン・ステージVol.1 (That's the Way It Is)』、『エルヴィス・カントリー (Elvis Country [I'm 10,000 Years Old])』、『ラヴ・レター・フロム・エルヴィス (Love Letters from Elvis)』の中核を形成している。
8月8日より、『フロム・エルヴィス・イン・ナッシュヴィル』から、1970年6月7・8日にレコーディングされた「マディ・ウォーター (I Washed My Hands in Muddy Water)」(カウボーイ・ジョー・バブコックが書いたカントリーの名曲のカヴァー)の1曲について、各デジタル・サービス・プロバイダで入手可能となり、プレオーダーが開始された。
1960年代終わり、1950年代に絶大なパワーを誇ったエルヴィス・プレスリーは、ロックの革命が起こった10年間に自身の足跡を残し、特筆すべき音楽的・文化的影響力の持ち主としての立場を取り戻した。衝撃のテレビ特番『エルヴィス’68カムバック・スペシャル』はテレビ界の歴史を作り、彼は長年待望されてきたサウンドトラック録音以外への復帰を果たした。メンフィスにあるチップ・モーマンのアメリカン・サウンド・スタジオで1969年1・2月に行われたセッションでは「イン・ザ・ゲットー」「ドント・クライ・ダディ」「雨のケンタッキー (Kentucky Rain)」、そしてエルヴィス生前最後のナンバー・ワン・シングルとなった「サスピシャス・マインド (Suspicious Minds)」等のチャートの大ヒット曲に加え、『フロム・エルヴィス・イン・メンフィス』とスタジオ録音とコンサート録音のハイブリッド作『エルヴィス・イン・パースン(From Memphis to Vegas/From Vegas to Memphis)』という高評価を博した2作の1969年のアルバムが生まれている。『フロム・エルヴィス・イン・ナッシュヴィル』は彼の初期のメンフィス録音を彷彿させるような作品となっており、スタジオBでのセッションの活気、ユーモア、感情的な共鳴を新鮮に感じ取ることができる。
1970年代最初のレコーディングにあたり、エルヴィスはアメリカン・サウンドでのセッションを大成功に導いた青写真を紐解いた。オーバーダブを嫌悪していた彼は、自身の感性に寄り添ったバンドとスタジオでゆったりと生演奏を録音することを望んだ。音楽出版社の拘束から自由になったエルヴィスは、「明日に架ける橋 (Bridge Over Trouble Water)」の卓越した解釈を含むカヴァー曲から、ラスヴェガスの公演やライヴ活動への復帰の動力となった壮大な楽曲まで、自分にとって現代的で自分が感情移入できる意味のある曲をピックアップしてレコーディングすることが可能になっていた(エルヴィスは1970年だけをとってみてもインターナショナル・ホテルで2ヶ月の滞在公演を行っており、1晩に2回ステージに立っていた)。
1970年6月、1950年代にロックンロール・ミュージックをメインストリームに持ち込み、カントリー・ミュージック系ラジオ局に強烈な影響を与えたエルヴィスは、新しい10年間のための新しいサウンドを作るべくRCAスタジオBに戻ってきた。1958年から1971年にかけて、エルヴィスは200曲以上のトラックをスタジオBで録音している。「フール・サッチ・アズ・アイ (A Fool Such As I)」を含む最初の5曲を録音した後、1958年9月には米陸軍の一員として渡独し、1960年3・4月にはスタジオBで除隊後初のアルバム『エルヴィス・イズ・バック (Elvis Is Back!)』をレコーディングした。1970年のナッシュヴィルのセッションに向けては、エルヴィスは自らレパートリーを選ぶことが可能になっており、ブルーグラス、ホンキー・トンク、ウェスタン・スウィング、そして自身が事実上の創始者であるロカビリーの要素をコンテンポラリー・ポップ、バラード、壮大な名演と組み合わせることにより、自身の心髄に染み込んだ多様なアメリカ音楽を深く掘り下げていった。