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ヤマハ、グレン・グールドの音楽表現にAIで迫ったコンサートの映像を公開

2019/10/24 16:49掲載
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『Dear Glenn』 写真:(c) yog.photo
『Dear Glenn』 写真:(c) yog.photo
ヤマハは、グレン・グールドの音楽表現にAIで迫ったコンサートの映像を公開。今年9月に世界最大規模のメディアアートの祭典<アルスエレクトロニカ・フェスティバル>で披露。当日は、膨大なグレン・グールドの音源から学習したAIシステムが、彼の代表曲や未演奏曲の演奏を披露し、さらに現代の名演奏家との合奏にも挑戦しています。

『Dear Glenn』は伝説的ピアニストに捧げる、AIと人間の共創を追求するプロジェクト

●コンサートビデオ


●メイキング・ドキュメンタリー・ビデオ


以下プレスリリースより

ヤマハ株式会社は、オーストリアのリンツ市で開催された世界最大規模のメディアアートの祭典「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」において、1982年に没した伝説的ピアニストであるグレン・グールドらしい音楽表現でピアノを演奏できる世界初※1のAIシステムを9月7日(土)に公開し、同システムを用いたコンサートを披露しました。膨大なグレン・グールドの音源から学習したAIシステムが、彼の代表曲や未演奏曲の演奏を披露し、さらに現代の名演奏家との合奏にも挑戦した様子をこのたび動画で公開します。なお、今回の取り組みは、オーストリア日本友好150周年事業の一つにも認定されています。

<取り組みの概要>

●ポイント
1:伝説的ピアニスト グレン・グールドのタッチやテンポでピアノを演奏できる世界初※1のAIシステムを開発

2:グールド未演奏曲の披露や、現代の名演奏家との共演にも挑戦したコンサートの様子を動画で公開

3:AIと人間の共創の可能性について議論を深め、新しい音楽表現のあり方を追求

今回公開したのは、楽譜さえあれば、未演奏曲でもグレン・グールドらしい音楽表現でピアノを演奏できるAIシステムです。自動演奏機能付きピアノとAI(ソフトウェア)から構成されるシステムで、AIはグレン・グールドのタッチやテンポを加味した演奏データを瞬時に生成し、ピアノに演奏を指示します。グレン・グールドの音楽表現を任意の楽曲に適用する方法としては世界初※1となる「深層学習技術」※2を採用しており、昨今急速に進化を遂げるAIテクノロジーによって、その音楽表現に限りなく近づくことを可能にしました。

AIの学習過程では、グレン・グールド財団の協力のもと100時間を超える音源から生成した学習データを使用。さらに現代の気鋭のピアニストであるフランチェスコ・トリスターノをはじめとする、彼の演奏方法を熟知したピアニストたちの演奏による「ヒューマン・インプット」もAIに学習させることで、グレン・グールドの持つ感性や表現技法をあらゆる楽曲に適用して演奏することを可能にしました。

さらにこのシステムには、人間の演奏をリアルタイムに解析し先読みすることで、人間と協調して合奏できる機能も搭載されており、単に自動演奏を行うのではなく、往年のグレン・グールドの音楽表現を感じながら互いに刺激し合い、息の合った合奏を楽しむことができる“共創型”のシステムという特徴も持っています。

今回、当社は、世界最大規模のメディアアートの祭典として知られる「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」でこのAIシステムを公開し、同システムを用いたコンサートを開催しました。

コンサートは、会期3日目にあたる9月7日(土)に聖フローリアン修道院にて開催され、AIシステムによるピアノ独奏曲をはじめ、フランチェスコ・トリスターノとのピアノ二重奏やリンツ・ブルックナー管弦楽団のメンバー(バイオリン、フルート)との三重奏といった“現代の演奏家との時空を超えた合奏”も披露しました。いずれの楽曲も学習データには含まれておらず、目標となる音源情報が無い中でAIはどこまで彼の音楽性に迫ることができるのか、そして合奏という協調作業の中でどこまで人間との関係性を構築できるのかに注目が集まりました。演奏後、満員の会場からは大きな拍手が巻き起こり、同イベント内のメインプログラムである「AI x Music Festival」において最も注目を集めたコンサートの一つとなりました。

グレン・グールドは早くから電子メディアによる録音に傾倒し、奏者と聴衆の新しい関係性に着目したことでも知られています。プロジェクト名の『Dear Glenn』は、新しいテクノロジーに可能性を見出した彼の姿勢に敬意を評し、着想を得たことに由来します。当社は今回の取り組みが、現代のテクノロジーであるAIと人間が互いに刺激し合い共創する新しい音楽表現のあり方を提示する確かな一歩となったと考えています。

※1: 2019年8月現在、当社調べ。 ※2: コンピューターに物事を理解させるための機械学習方法の一つ。ニューラルネットワークという数理モデルを多層的に使用して情報処理を行うことが特徴。

詳細は以下のURLのページでご覧になれます。
https://www.yamaha.com/ja/news_release/2019/19102301/
■『Dear Glenn』オフィシャルサイト
https://www.yamaha.com/ja/about/ai/dear_glenn/