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もし人生の最後ならどんなメッセージを残すのか NHK『最後の講義「大林宣彦」』再放送決定

2019/01/29 07:46掲載
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大林宣彦
大林宣彦
もし人生の最後ならどんなメッセージを残すのか。映画作家・大林宣彦が出演したNHK BS1『最後の講義「大林宣彦」』の再放送が決定。BS1で2月2日(土) に放送されます。ガン闘病中の大林宣彦が、映画を愛する人たちに伝えたいこととは?

『最後の講義「大林宣彦」』
初回: NHK BS1 2018年3月
再放送:NHK BS1 2019年2月2日(土) 午後0時00分〜

アメリカの有名大学で行われている『最後の講義』を番組化。シリーズ第二弾、登壇するのは映画作家、大林宣彦。「時をかける少女」「さびしんぼう」など数々の作品で日本の映画界をけん引。現在80歳、ガンで余命3か月の宣告を受けた後も次々と新作を。映画づくりを志す多くの若者に全身全霊で語った言葉とは…黒澤明との約束、小津安二郎の東京物語に込めた物語、壮絶な戦争体験…映画に人生をささげた監督の感動のメッセージ!

【出演】映画作家…大林宣彦,【語り】門脇麦

<番組スタッフから>

制作裏話や講義当日の様子を、長澤智美プロデューサーに聞いてきました。

──大林さんにオファーをしたのはいつごろですか?

2017年の夏ごろでした。実際に番組収録が行われたのは、2017年12月20日です。それまでに打ち合わせをしましたが、大林さんって本当に話したいことが膨大なんですよね(笑)。映画作りでご自身が貫いてきたこと、映画の本質、そして映画の未来のことなど、次々に話が展開していくんです。

これは、できる限り大林さんの話したいことを現場で話していただき、私たちは書籍の編集者のように、テーマの章立てを作って番組をまとめていこうという方針でいこうということになりました。

──それは、どんなテーマだったんですか?

テーマは3つあって、1つは「映画とは“フィロソフィー(哲学)”」。作り手側が“伝えたい哲学”を明快に持って、しっかり表現することが大事であるというお話です。これは、番組全体の大きなテーマとなっています。

2つめは、「自分の中の平和孤児」。日本敗戦のとき、大林さんは7歳。敗戦で世の中がひっくり返ってしまい、「平和というものがよく分からなくなった。僕らの世代は平和孤児だ」と、ご自身の経験を踏まえたお話をしてくださいます。

3つめは、「100年後に分かる映画」です。大林さんは、ご自身の作る映画のことを“シネマゲルニカ”と呼んでいます。“ゲルニカ”とは、1937年にピカソがスペイン内戦を描いた象徴的表現の絵画です。おばあちゃんの目が真横に並んでいるような描き方です。大林さんは、「もしあれがリアルに描かれていたらたぶん後世まで残らなかったんじゃないか」「象徴的だからどんな意味があるんだろうと考える」と感じているそうで、だから映画も、「今分かるような映画じゃだめだ。100年後ぐらいに分かればいいんだ」と思っていらっしゃるようでした。講義はこの3つを中心にして展開してくださいました。

──実際に講義が行われるまでにはどのような行程があったのでしょう?

まずは、講義の場所です。いろいろな場所が挙がりましたが、映画制作へのモチベーションが高い人たちの前で話したいという大林さんのご希望もあって、早稲田大学が伝統的に映画サークルとか映画同好会などが盛んだという話が挙がりました。大林さんもそこがいいんじゃないかということで場所が決定しました。

さらに時期ですが、「早稲田映画まつり」という毎年行われているイベントがあるということで、そのイベントの一環としてもやってみたらどうかという話になって、日にちも決定していった感じです。

このイベントにご協力してくださったのは、全ての大林映画を同時代に見てきた早稲田大学名誉教授の安藤紘平さんと、ドラマ概論や映画概論を今、学生たちに教えている早稲田大学演劇博物館の岡室美奈子先生です。それから、映画まつりの実行委員会でもある学生さん方も、「大林さんのお話を今聞けるんだったら、こんなにうれしいことはない」と言っていただき、本当にあっという間に講義の場が整っていきました。

──当日の様子を教えてください。

当日は、学生さんだけではなく、実際に映像の仕事をしている方々もいらしてくださいました。みなさん、一言も逃すまいという姿勢で真剣にお話に聞き入っていました。

講義の中では、質疑応答の時間もありました。中でも印象的だったのは、「今は映画館のイスやスクリーンが稼働するなど、エンターテイメント性の高い映画が多いが、そんな中でどんな映画を作っていったらいいのか」という質問です。大林さんの第一声は、「映画というのは科学技術によって生まれたものだから、どんな新しい技術も否定しない」というものでした。でも、映画には“フィロソフィー”が大事だから、どんな技術を使ってもそこは忘れてはいけないともおっしゃっていました。

実際、講義は3時間近く行ったのですが、大林さんはずーっとノンストップです。ここで終わりですと言ったから終わりましたけど、言わなければまだまだ続いていたでしょうね(笑)。それぐらい、しゃべりたいことがたくさんあるんだと思います。

──この番組はナレーションも話題の方を起用していますが、今回はどなたですか?

去年放送した「VRのパイオニア、ランディ・パウシュ教授」では、ももいろクローバーZの百田夏菜子さん。「ロボット工学の世界的権威・石黒浩教授」は、俳優の山田孝之さんをナレーションをお願いしました。

今回は、門脇 麦さんです。

大林さんの映画『花筐/HANAGATAMI』にご出演されていますし、この番組の世界観をさらに増幅させてくれると思ったからです。大林さんも、門脇さんがナレーションを務めてくださることにとてもよろこんでいらっしゃいましたし、門脇さんならではの感受性で、番組がより豊かなものになったと思います。

──どんな方々にご覧いただきたいですか?

若い人にも見てほしいですし、大林さんと同じ世代の方々にも見てほしいです。番組を作ってみて、私自身も大林映画への受け取り方がより深まりました。ぜひみなさんも、この番組を通して「人間の情熱」を感じ取っていただければうれしいなと思います。

「大林さんは、映像が浮かぶような話し方をされる」と語った長澤プロデューサー。大林宣彦監督の講義を、ぜひ番組でご覧ください!

●番組ページ
http://www4.nhk.or.jp/P4537/x/2019-02-02/11/28597/2409294/