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ロックジャーナリズムの巨匠によるディラン研究の集大成 書籍『フォーク・ミュージック──ボブ・ディラン、七つの歌でたどるバイオグラフィー』発売

2025/07/05 21:57掲載
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フォーク・ミュージック──ボブ・ディラン、七つの歌でたどるバイオグラフィー
フォーク・ミュージック──ボブ・ディラン、七つの歌でたどるバイオグラフィー
「ディランの想像力を刺激した音楽を最もよく理解している書き手による独創的な書物」(ザ・ニューヨーカー誌)。ロック・ジャーナリズムの巨匠によるボブ・ディラン研究の集大成。2022年の刊行当時、多くのメディアから絶賛された書籍の日本語版『フォーク・ミュージック──ボブ・ディラン、七つの歌でたどるバイオグラフィー』(グリール・マーカス著)がele-king booksから7月29日発売
■『フォーク・ミュージック──ボブ・ディラン、七つの歌でたどるバイオグラフィー』
グリール・マーカス(著)坂本麻里子(訳)
2025/7/29発売
本体 3,500円+税
ISBN:978-4-910511-94-8

<内容>

ディランの想像力を刺激した音楽を最もよく理解している書き手による独創的な書物。
――『ニューヨーカー』

長編探偵小説のような文化批評であり、音楽的なラヴストーリー。
――『Rolling Stone』(2022年のベスト・ミュージック・ブックに選定)

マーカスのディラン論は、ボブ・ディランその人と同じくらい不可欠なものだ。ディランの幻視的な創造力というプリズムを通して、マーカスは現代アメリカの魂の驚くべき歴史を浮かび上がらせる。
――オリヴィエ・アサヤス(映画監督)

マーカスの洞察と叙情がもっとも冴え渡った一冊。ディランとその音楽についての豊富な情報、回想的な筆致と霊感に満ちた批評との見事な融合。最も独創的な音楽家を、最も独創的な音楽批評家が語るにふさわしい本だ。
――ジョイス・キャロル・オーツ(作家)

 ロック・ジャーナリズムの巨匠によるディラン研究の集大成。
 ディランの創造的・文化的発展の全体像、七つの楽曲を軸にディランの軌跡を語りつつ、アメリカという国とその歌の歴史の省察を織り込んだ、濃密かつ豊穣な書物。
 ディランが自らの楽曲を書きはじめたとき、そこに新たな命を吹き込んだ伝承歌の系譜も本書のなかで生き生きと甦る。
 ディランの楽曲について語るとき、どうしても言葉が反復的になりがちだが、著者は新鮮な視点を提示し、ディランの音楽の源流に関する深甚な知識を押しつけがましさもなく披露する。
 これは単なるディランの伝記ではない。ディランが自身の歌に新たな命を吹き込んだ、アメリカのフォーク・ソングの豊かな歴史そのものである。
 たとえば、“風に吹かれて” は、ディランが21歳のときに書いた曲だが、じつは “No More Auction Block(もう競売台などごめんだ)” という南北戦争時代の自由の歌がその根幹にあると、著者は語る――
 過去と現在を往復しながら展開する本書の、最後の一文を読んだときには、読者は少なからず、思いも寄らなかった何かを思うだろう。
 表紙および挿絵を手がけたマックス・クラークのヴィジュアルも、マーカスの、そしてディランの言葉と絶妙な呼応を見せている。さあ、2022年の刊行当時、多くのメディアから絶賛された名著の日本版をどうぞ。

<本文より>
二〇〇一年にローマで、ボブ・ディランは記者団に対し「他の人々の中に自分の姿が見える」と述べた。そのはじまりから現在に至る彼の作品の謎を解く手がかりがあるとしたら、この発言がまさにそれかもしれない。彼の歌のエンジン部に当たるのは共感だ。つまり他の人々の人生の中に入ってみたいという欲求とそれをやってのける能力のことであり、異なる結末を求め、既に他者にやり尽くされたドラマを再現・再演することすらある。(…)それはまた、ボブ・ディラン自身が宿ってきたコスチューム、顔、髪型、情動の数々の変容のように、自らでっち上げた、あるいは発見した別の人生とアイデンティティの中に入っていくことも意味する。次なるウディ・ガスリーかと思えば最新版のランボーになり(…)と。
四六判/368頁

<目次>

バイオグラフィー
他の生き様の中で

Blowin’ in the Wind――風に吹かれて(一九六二)
The Lonesome Death of Hattie Carroll――ハッティ・キャロルの寂しい死(一九六四)
Ain’t Talkin’――エイント・トーキン(二〇〇六)
The Times They Are A-Changin’――時代は変る(一九六四)
Desolation Row――廃墟の街(一九六五)
Jim Jones――ジム・ジョーンズ(一九九二)
Murder Most Foul――最も卑劣な殺人(二〇二〇)

著者註釈
謝辞
索引

<著者>
グリール・マーカス(Greil Marcus)
 1945年カリフォルニア州サンフランシスコに生まれる。1963年にカリフォルニア大学バークレー校に入学、大学1年のときに、のちに『ローリング・ストーン』を創刊するヤン・ウェナーと知り合い、のちにマーカスは同誌の初代レビュー編集者となり、ロック評論家の第一世代の最前線として活動。1973年には初の著書にして、いまもなお読み継がれている『ミステリー・トレイン』の執筆開始、1975年に初版が上梓された。
 未訳だが1989年に出版された『Lipstick Traces』は、セックス・ピストルズの源流としてシチュアシオニズムやダダ、はては中世の千年王国論宗派にまで遡り、パンクを民衆の抗議詩の文脈のなかで論じた重要作として知られる。
 また、これも未訳ながらディランとザ・バンドが趣味で録音した「The Basement Tapes」からアメリカを論じた『Invisible Republic: Bob Dylan 's Basement Tapes』も影響力ある一冊。
 ほかにも多数の著作があるが、日本では以下の翻訳書がある。『ロックの「新しい波」 パンクからネオ・ダダまで』(三井徹 訳、1984年、晶文社)、『ミステリー・トレイン ロック音楽にみるアメリカ像』(三井徹 訳、1989年、第三文明社)、『デッド・エルヴィス』(三井徹 訳、1996年、キネマ旬報社)、『ライク・ア・ローリング・ストーン──Bob Dylan at the Crossroad』(菅野ヘッケル 訳、2006年、白夜書房)