トッド・ラングレン(Todd Rundgren)は、
ザ・バンド(The Band)の1970年アルバム『Stage Fright』にミキシング&レコーディング・エンジニアとして参加しています。米Guitar Worldの新しいインタビューの中で、
ロビー・ロバートソン(Robbie Robertson)との仕事はどのようなものだったか振り返っています。
「ロビーと仕事をしていたが、バンド全員とも仕事をしていた。このアルバムのクレジットを見ると、プロデューサーのクレジットがないことに気づくと思うけど、それはこのアルバムを1人で担当したプロデューサーがいなかったから。ロビーがそうだと思うかもしれないが、彼は他のメンバーたちとのバランスを慎重に保たなければならなかった。彼が全ての楽曲を書いて、すべての収入を得ていたので、他のメンバーを怒らせたくなかったんだ。
彼はメンバーの意見や提案にとても気を遣っていて、受け入れる必要があった。だから、あのプロジェクトは長い時間がかかった。決定を下す1人がいなかったから。5人のメンバーがいて、それぞれが意見を持っていた。ミキシングの作業は、まさに苦難の連続だったよ。
でもロビーが全てを動かしていたのは間違いない。他のメンバーは自分自身の問題を抱えていて、その責任を引き受けることができなかった。彼らが注目されずにいたのは悲しい事実だった。そして突然、気がつくと世界最大のバンドになっていた。夢見ていたもの全てが手に入ったが、それには、あらゆる過剰さも含まれていた。
ロビーはまっすぐな人だった。いつも自分をしっかりと保ち、最後まで冷静さを失わない人だった。ギタリストとしては、時々、背景に溶け込んでしまうこともあった。ザ・バンドのアルバムを聴くと、ギターソロはそれほど多くないことに気づくはずだ。
(Q:ロビーの演奏で最も印象に残った点は?)
彼は非常に簡潔な演奏をするタイプで、余計なことを長々とやらない。僕の立場から言えば、彼の音は捉えにくいところがあった。フェンダー・ツイン(リヴァーブ アンプ)から直接出た音で、ペダルや他のエフェクトは一切使っていない。時折、非常に鋭く、耳を刺すような音になることもあった。その音をコントロールするのは、僕にとっては、ちょっとした課題だった。でも、彼はその音を気に入っていた。あの音にしたかったんだ。彼のアルバムなんだからね!」
トッドはさまざまなアルバムをプロデュースしました。同じインタビューの中で、プロデューサーの役割について語っています。
「すべてのアーティストにプロデューサーが必要なわけではない。プロジェクトごとに必要なプロデュースの度合いは異なる。それはアーティストがやっていることに適したものでなければならないんだ。
僕は常にプロセスにおける(隙間を埋める)コーキングのような存在だと考えている。隙間があれば、それを埋める、それが僕の役目だ。バンドに僕のやり方を強制しようとはしない。彼らが特定のサウンドを望んでも、僕は同意しないかもしれない。その点で対立することもある。でも、結局は彼らの曲なんだよ。
人々は僕のプロデュース・クレジットを見て“この人が関わっているんだ”と思うかもしれない。でも、一般のリスナーはプロデュース・クレジットに注目しない。もし曲が悪ければ、アーティストの責任にされる。だから僕の考えは常に“アーティストが望む曲でなければならない”ということなんだ」
またトッドは新しい音楽の制作にも取り組んでいるとも話しています。
「制作中だよ。いくつかのプロジェクトが進行中で、僕を悩ませている。ツアーも控えていて、秋にはヨーロッパに行く予定だ。その後、6ヶ月から8ヶ月以内には、おそらく日本とオーストラリアにも行くつもりだ。世界中を回ることになるね。忙しくしているよ」