
Herbie Hancock and Miles Davis - Getty Images
“音楽界のノーベル賞”とも呼ばれているスウェーデンの音楽賞「ポーラー音楽賞」を受賞することが決まった
ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)。英BBCの取材に応じて、「マイルスと共演するのはいつも怖かった」と
マイルス・デイヴィス(Miles Davis)との共演を振り返り、デイヴィスから受けた厳しい警告を明かしています。
1964年から1968年にかけて、マイルス・デイヴィスと共に世界中をツアーした時代を、こう振り返っています。
「マイルスと共演するのはいつも怖かった(笑)。(圧倒的な才能に)かなり恐れを抱いていた。彼をとても尊敬していたので、常にベストを尽くそうと思っていた。彼は、僕がミュージシャンとして成長する上で、とても大きな存在だった。一方では恐怖であり、一方では刺激的であった。最高の演奏ができたときは、本当に刺激的だった。すべてがシンクロしたときは、生きがいを感じたよ」
YouTubeには、1964年のミラノ公演で、激怒したデイヴィスが即興ソロを中断してハンコックをにらみつけた動画がアップされており、再生回数は500万回近くに達しています。
デイヴィスの苛立ちの原因について、オンライン上ではさまざまな議論が交わされています。しかし、ハンコックにとっては、これは日常茶飯事だったという。
「マイルスが何に腹を立て、どんなことで少し怒るのか、僕は何度も驚かされた。いつもわかっていたわけではない。彼のことを理解するのはいつも簡単ではない。だから、そのちょっとした不快感には慣れてしまったんだ(笑)。それが人生。僕は常にそうした不快感から何かを学ぼうとしていたよ」
今夏、ヨーロッパツアーに乗り出すハンコックは、デイヴィスから学んだもう一つの教訓について考えているという。それは、観客の構成についてでした。
ハンコックは低音のささやくような声を出し、デイヴィスになりきって、1960年代半ばにデイヴィスから受けた厳しい警告の会話を再現しています。
「“もし、観客が全員男ばかりだったら、それは君の音楽が死んでいるということだ”。彼は僕が今言ったよりも汚い言葉を使っていたよ(笑)。でも、言いたいことは分かるよね」
このインタビューでは、YouTubeにはまっているとも話しています。
「YouTubeの沼にはまってしまっているんだ。たくさんね。新しい音楽制作ソフトとか、健康のこととか、テクノロジーのこととか」
これが、彼が15年間アルバムを作っていない理由だという。「言ってみれば、その犠牲になっている。でも、それが人生だよ(笑)」
最後に、インタビュアーは世界中の親たちを代表して彼に質問をしました。インタビュアーの11歳の息子はピアノを弾くのが大好きですが、練習は嫌いです。どんなアドバイスをするべきなのでしょうか?
彼はうなずき、「息子さんのつらさはよく分かる。僕も練習は好きじゃないからね」と語ったあと、ハンコックは一呼吸おいて考えた後、こう付け加えています。
「でもね、僕はこう考えるんだ。“よし、これは大切なことなんだ。たとえやりたくなくても、やらなきゃいけないことなんだ”と。いったんそれに没頭してしまえば、人生の障害を克服したような気分になる。いつもその戦いに勝てるわけではないけど、僕はここまでやってくることができた。だから、それほど多くの戦いに負けたわけではないと思うよ」
ハンコックは今日練習したのでしょうか? 「いや、今日はしなかった。おそらくしないだろう」。彼はそう笑い、その場を立ち去りました。その日の残りの時間にYouTubeを見るために。