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若い頃(10~30歳)の馴染みのある曲が失われた記憶を呼び起こし、認知症患者の不安を軽減する 研究結果

2025/01/22 18:40掲載
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listening to music
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英国の新しい研究によると、音楽療法は、音楽、特にその人の若い頃(10~30歳)の曲をきっかけに呼び起こされる記憶や能力に働きかけることで、進行した認知症で言語能力が低下したときにもコミュニケーションの手段を提供し、また音楽療法は、苦痛や不安を即座に和らげるとともに、気分や集中力を改善することができるという。しかも、従来の薬物療法のような副作用なしで。

カジュアルや娯楽としての音楽鑑賞とは異なり、訓練を受けた専門家によって提供される音楽療法は、セラピストが患者に有意義な音楽体験をさせる構造化されたセッションが行われます。知られているセッションは、馴染みのある曲を歌ったり、簡単な楽器を演奏したり、音楽に合わせて体を動かしたりすることが含まれます。これらの活動は、1対1または少人数グループで行うことができ、セラピストは各個人のニーズや能力に合わせてアプローチを調整することができます。

Nature Mental Health誌に掲載されたこの研究の主執筆者でアングリア・ラスキン大学ケンブリッジ音楽療法研究所のナオミ・トンプソンは声明で「高齢化が進み、認知症と診断される人が増える中、音楽は、患者の生活の質を向上させるための比較的簡単で費用対効果の高い方法です」と説明しています。

研究チームは、介入が効果的であるかどうかだけでなく、異なる状況下でそれがどのように、なぜ効果的であるのかを検証する「リアリストレビュー」と呼ばれる研究方法を用いて、数十年にわたるエビデンスを分析しました。調査対象には、11件のレビュー、29件の査読付き研究論文、多数の政策文書および専門家の報告書が含まれています。

研究の結果、音楽療法が個々のニーズに合わせて設計されている場合、注意力、集中力、警戒心、気分を改善しながら、興奮や不安感を即時かつ短期的に改善できることを明らかにしました。音楽を介した交流は、人々がより安全で周囲に適応していると感じる手助けとなり、苦痛の度合いを軽減し、健康状態を改善することができるという。

医師が特定の用量と頻度で薬を処方するように、音楽療法士は、その人の1日を通してどのように音楽を使用すべきかを概説する個別のプログラムを設計することができます。この療法は、認知と感覚に刺激を与え、残っている能力と記憶にアクセスするために脳の両側のネットワークを活性化することによって機能します。音楽をきっかけに呼び起こされる記憶、特に馴染みのある音楽によって引き起こされる記憶は、音楽なしで呼び起こされる記憶よりも迅速に思い出され、そしてよりポジティブに想起されます。その人が10歳から30歳の間に聴いた曲が最も効果的であることが証明されています。

生理学的な効果も同様に素晴らしいものです。音楽療法は自律神経系の調整に役立ち、身体的ストレス反応を軽減する効果があります。非言語コミュニケーションの一形態である音楽は、認知障害や音楽能力に関係なく利用できるため、スタッフ、介護者、他の入居者との社会的交流の機会を提供します。

この研究では、音楽療法士が、音楽経験の有無に関わらず、他の医療従事者に対して音楽の効果的な利用方法を指導することが強く推奨されています。これには、楽器などのリソースをすぐに利用できるようにすることや、個人向けプレイリストの作成に関するガイダンスなどが含まれます。介護スタッフと家族の両方のストレスレベルを軽減し、健康状態を改善できる可能性があるため、家族にもこの音楽を用いたケアに参加してもらうべきだと説明しています。