David Bowie / Young Americans
デヴィッド・ボウイ(David Bowie) は1974年、フィラデルフィアのシグマ・サウンド・スタジオでアルバム『Young Americans』のレコーディングを行いました。このセッションの未発表音源を収めたマスターテープをフィラデルフィアのレコードコレクターが発掘しました。発見は偶然で、気まぐれにテープを聴いていなければ、今頃は上書きされて音源は消滅していたところでした。
発見したのは、稀代のレコードコレクターであり、フィラデルフィアの音楽史を保存しているマックス・オチェスター。最近テレグラフ紙の取材に応じています。
彼は2022年に差し押さえ物件の競売で、大量のオープンリール・テープを購入しましたが、その中にシグマ・セッションのマスターテープが含まれていました。オチェスターによると、テープにはラベルが付いておらず、箱の一つには鉛筆で「スクラップ」と書かれていました。
2024年6月、オチェスターは上書きして録音するために、このテープを持参してエルム・ストリート・スタジオに向かいました。
オチェスターとプロデューサーのブレナン・マクギーハンは、古いテープを使用するための準備を行ったあと、テープを再生しました。それは「テープを消去する前に、テープに何もないことを確認したかっただけ」でしたが、テープが再生され始めると、オチェスターは聞き覚えのある音を耳にしました。
最初はディスコ音楽を演奏するバンドの演奏が聴こえ、次にデヴィッド・ボウイの曲「Fame」を思わせるギターリフが聴こえてきました。そして、
ルーサー・ヴァンドロス(Luther Vandross) のヴォーカルで、ザ・フレアーズの「Foot Stompin’」のカヴァーを演奏し始め、次にバンドはアルバム『Young Americans』に収録されている「Can You Hear Me」を演奏し始めました。
「その瞬間、私はただただ驚きました。なんてこった、これは何だ? ボウイの曲だとすぐに分かりました。それに、ルーサーが『Young Americans』で歌っていることも知っていました」
バンドが「Young Americans」のインストゥルメンタル・テイクを演奏し、デヴィッド・サンボーンがアルトサックスで独特の泣き叫ぶような演奏を披露すると、オチェスターは特別な何かを手に入れたと確信しました。そう、これはデヴィッド・ボウイの1974年のシグマ・セッションの未発表音源でした。
別のテープには、デヴィッド・ボウイが
ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen) の「It’s Hard to Be A Saint in the City」を歌っているものもありました。ボックスセット『Sound and Vision』にスプリングスティーンの曲をボウイが歌った録音はありましたが、「Fame」のリフに合わせて歌ったものは誰も聴いたことがありませんでした。オチェスターが聴いたのは、まったく聴いたことのないボウイのデモ音源だったのです。
ボウイとプロデューサーのトニー・ヴィスコンティのスタジオでの雑談や「Fascination」のラフ・テイクなど、廃棄された3本のテープには、他にも多くの内容が残されていました。
オチェスターと彼の友人であるアーロン・レビンソンは『Young Americans』に携わったシグマ・サウンド・スタジオのサウンド・エンジニア3人、ダーク・デブリン、ジム・ギャラガー、ピーター・ハンフリーズに連絡を取り、3人と一緒にテープを聴きました。3本のテープを聴き終えたオチェスターは、なぜこれらテープが日の目を見ず、また、マークも付けられていなかったのか尋ねました。どうやら誰かがそれを盗んだようです。
デブリンは詳しく説明しました。「亡くなった同胞の一人が怪しい。彼は変わったヤツだった。彼がアウトテイクやテープを持っていることは知っていた。彼はそれらをマイク用のロッカーに隠していた。私たちは彼が他の人の知的財産を家に持ち帰ることを認めていなかったが、彼はそれらを一切売っていなかった。彼はただそれを手元に置いておきたかっただけだと思う」
オチェスターらは正当な所有者に返還しようと考えており、いつの日か、これらのスタジオ・アウトテイクが公式リリースされるかもしれません。
YouTubeチャンネルの「Pieces of Vinyl」では、今回の発見をテーマにした特集映像を公開しています。『Young Americans』に携わったエンジニア3人にインタビューしています。
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