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ジョイ・ディヴィジョン イアン・カーティスの伝記映画『コントロール』 イアン役が当時を語る

2022/10/11 18:24掲載
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CONTROL
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ジョイ・ディヴィジョン(Joy Division)のフロントマンだったイアン・カーティス(Ian Curtis)の半生を描いた伝記映画『コントロール』。カーティス役を務めたサム・ライリーが英ガーディアン紙の企画で、当時を振り返り、カーティスの独特のダンスがちゃんと再現できるかどうかで、撮影時にパニックになる人もいたという。またコンサート・シーンは、ジョイ・ディヴィジョンのファンを迎えて撮影したそうで、緊張から嘔吐した後、50代の男性から「良くなかったら、承知しないよ」と言われたとも振り返っています。

「ナショナル・ユース・シアターを退団後、1年間は俳優を目指していたんだけど、そのあと、ロック・スターになりたいと思うようになった。自分のバンド、10,000 Thingsで3年間活動したんだけど、成功はしなかった。リーズのプリムローズというパブで演奏したとき、僕の外見から“イアン・カーティスがローリング・ストーンズのフロントマンを務める”と宣伝された。僕はイアンが誰なのかさえ知らなかった。そのあと、レコード会社から契約解除され、僕は小売店の倉庫で服をたたみ、バーで働くことになった。

それから、昔お世話になったエージェントに電話して、何でもやりますと言ったんだ。『コントロール』は、ジョイ・ディヴィジョンの音楽への深い愛情とは関係なく、僕が電話をかけた週に彼らがイアンを探していたのは、まったくの偶然だった。キャスティングのために、仕事場には歯医者に行くと言っていたんだけど、オーディションは3回もあって、何度も通うことになったんだ。歯の状態は決して良くはなかったから問題なかったよ。

リーズでの生活は滅茶苦茶だった。体調も良くなかったし。でも、26歳の誕生日に仕事が決まり、映画に救われた。撮影現場に行き、目的を持ち、頼りにされ、イアンになることで、僕は救われたんだ。イアンの妻デビーを演じたサマンサ・モートンは、とても素晴らしく、リハーサルをリードしてくれた。あるシーンでは、彼女が即興で僕を追い詰めた。僕はそのシーンで涙を流した。“すごい!これが演技なんだ”と思った。ジャーナリストのアニック役を演じたアレクサンドラ・マリア・ララとは恋に落ち、以来ずっと一緒にベルリンに住んでいるよ。

監督のアントン・コービンが家を担保に入れたのは、主演がリーズ出身のパブロック歌手だと聞いて、誰もが逃げ出したくなったからだと思う。彼がどれほどのリスクを負っているか知っていたし、どんな失敗もしたくなかった。撮影に入る前に、もう一度、“イアン・カーティス・ダンス”を踊ってくれと頼まれた。僕がちゃんと踊れるかどうか、パニックになる人もいたよ。

コンサートのシーンは狂気じみたものだった。これまでのライヴで、観客にあんな目で見られたことはなかった。初めて“She's Lost Control”を演奏することになったとき、150人ほどのジョイ・ディヴィジョンのファンを観客として迎えていた。僕はトレーラーに駆け込み吐いた。出てきたとき、50代の男性が“イアンは10回くらい見た。良くなかったら、承知しないよ”と言っていた。

イアンは、若くして結婚した父親でありながら、アメリカや栄光に向かって引っ張られるロックスターで、てんかんや薬の副作用に悩まされた、苦しんだ人間だった。彼はただの少年だった。ステージ上では自信満々、生活では不安というのは、僕も同じだった。だからアントンは僕を雇ったのかもしれない。

リハーサルの間、ニュー・オーダーのステージを見に行った。あれは不思議だった。バックステージでは、バンドメンバーを演じる俳優たちは皆、オリジナルのミュージシャンを探していたけど、僕は明らかに無理だった」