HOME > ニュース >

ワニの耳が聴覚障害者を救う鍵を握っているかもしれない 最新研究結果

2022/07/06 17:21掲載
メールで知らせる   このエントリーをはてなブックマークに追加  
Crocodiles
Crocodiles
世界中で10億人以上の人々が、音が聞こえない、または聞こえにくいという聴覚障害の影響を受けているという。ワニの耳が聴覚障害者を救う鍵を握っているかもしれないことが、新しい研究で明らかにされています。

スウェーデンのウプサラ大学病院とウプサラ大学の研究者たちは、電子顕微鏡と分子技術を使ってワニの内耳を調査しました。その結果、研究者たちは、ワニの耳の中に分泌される小さな細胞粒子を発見しました。

この小さな細胞粒子はエクソソーム(※細胞の中で作られ、細胞外に放出される小胞)に似ており、酵素を分泌し、音が入ってくるときに耳の中の繊毛がこする膜を分解したり、形成したりしています。研究者らは、エクソソームが空洞を形成し、音の振動が耳に届いたときに繊毛が曲がりやすくなっていることを発見しました。

研究者で、ウプサラ大学で実験耳科学の教授を務めるHelge Rask-Andersenは声明の中で、「1つの仮説は、これによって、音に対する感度が上がり、聴力が向上するというものです。私たちの希望は、ワニがどのようにして有毛細胞を再生するのかを学び、将来的にはそれを人に使えるようにすることです」と述べています。

70歳まで生きるワニは、生涯を通じて聴力が優れています。彼らの聴覚は陸上と水中の両方に適応しています。「一つの特徴として、異なる音程に対する受容体の感度が外部の温度に影響されるため、進化の過程で異なる環境における異なる種類の危険に完璧に対応できるようになっています」とリリースには書かれています。

ワニが優れた聴覚を持っている理由の一つは、新しい有毛細胞を作り出すことがきるからです。

「新しい有毛細胞は、いわゆる支持細胞の活性化から形成されるようです。これは、人間には欠けていると思われる特定の細胞構造をワニが持っていることと関係しています。私たちの仮説では、脳からのインパルスを伝える神経、いわゆる遠心性神経が再成長の引き金になっていると考えています」とRask-Andersen教授は語っています。

聴覚障害は、通常、耳の中の受容体が機能しなくなることで起こります。人間はこの受容体を再生できませんが、ワニのような哺乳類以外の動物では再生することができます。

研究者たちは、ワニの耳の研究から得た知識が、聴覚に障害を持つ人々の助けになることを期待しています。

この研究は、『Frontiers in Cell and Developmental Biology』に掲載されています。