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ビートルズ『Live At The BBC』に掲載された「Thanks to マーガレット・アッシュワース」 発売から28年後 本人がその理由を語る

2022/05/16 20:01掲載
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Beatles / Live at The BBC
Beatles / Live at The BBC
ビートルズ(The Beatles)のBBC音源集『Live At The BBC』(1994年)のブックレットの最後のページには、エグゼクティブ・プロデューサーのジョージ・マーティンの後、「Thanks to Margaret Ashworth」とも書かれています。ビートルズ・ファンは長年にわたり、マーガレット・アッシュワースって誰だろう、と思っていたかも知れません。発売から28年後、そのアシュワース本人が執筆したコラムが英デイリー・メールに掲載されています。

『Live At The BBC』では、英BBCが1960年代に放送したものをファンが録音した音源もソースの一部として使っています。アシュワースはそのファン録音に貢献した人物のひとりで、彼女はかつてデイリー・メール紙の副編集長を務めていました。

アッシュワースと友人のヘレンは、1962年、13歳のときに、ちょうどファーストシングル「Love Me Do」をリリースしたばかりのビートルズを知り、夢中になりました。

アッシュワースは当時を「私のお気に入りはジョージで、ヘレンはポールだった。私たちはテレビもすべて観て、ラジオもすべて聞いていましたが、ポップスを流している番組はほとんどなく、すべてがとても短いのがもどかしかったです。リプレイできないので、聴きたい曲が流れてくるのを待つしかなかった」と振り返っています。

その頃、アッシュワースの父親は当時としては最新鋭のVHFラジオを買っていました。彼女の父親は『Sing Something Simple』というBBC Radioで放送された音楽番組の大ファンで、その番組を録音するために、ラジオとオープンリール式のテープレコーダーを直接繋いだという。

アッシュワースは「父はそれが大好きで、ラジオをオフィスに持ち込み(それは小さなスーツケースの大きさだった)、誰かに裏のソケットを修理してもらい、オープンリール式のテープレコーダーに直接つながるようにしてもらったのです。すると、レコーダーに付いていた小さなマイクでは聞き取れない、放送と同じような素晴らしい音質で録音されたのです」と振り返っています。

1963年の夏、BBCは『Pop Go The Beatles』というラジオ番組を始め、毎週火曜日の午後5時にBBC Light Programmeで放送していました。

各番組はビートルズが6、7曲を演奏するというもので、事前に録音されていましたが、ライヴのまま、つまりポストプロダクションは全く、あるいは最小限に抑えられていました。

アッシュワースは放送が開始されてから2週間後の6月17日、「父が自分の好きな番組を録音していたように、私も自分の番組を録音してみよう!」と思い立ち、初めてラジオからの直接録音を行いました。アッシュワースは最終的に15本の番組のうち11本を、5インチと7インチの2本のテープに収めました。

アッシュワースは「この音源の素晴らしいところは、ハンブルグやリヴァプールの聴衆に愛された昔のロックンロール・ナンバーを中心に、ほとんど他のアーティストのカヴァーばかりだったことです。ビートルズは成功するにつれ、こうした素晴らしい曲のほとんどをレパートリーから外し、自作に集中するようになりました。私は他のラジオ番組からビートルズの曲もいくつか録音しました。このテープは何度も何度も再生されましたが、やがて私の興味が薄れ、寝室の引き出しの中で何年も過ごし、私が家を出るときには屋根裏部屋にある箱に入れられることになったのです」と述べています。

そして、アッシュワースは、この音源が『Live At The BBC』のソースに使われた経緯を述べています。

「それから30年近く経った1992年、デイリー・メール紙の副編集長だった私は、ビートルズに関する記事が出たとき、ラジオ・タイムズ紙の編集長をしていた同僚にそのテープのことを何気なく話しました。

彼女のコラムニストの一人に、著名なビートルズ歴史家のマーク・ルーイスンがいて、彼の記念碑的大著『The Complete Beatles Chronicle』を彼女に届けたとき、彼女は“私の友人がラジオからビートルズを録音していたのよ”と言って、私のテープのことを話したのです。

数日後、マークが電話をかけてきて、自己紹介をしました。“興奮してないように聞こえるかもしれないが、興奮しているんだ”と彼は言っていました。

彼は、EMIが10年以上前から『Pop Go The Beatles』の曲を含む、初期のビートルズがBBCのために演奏した音源を集めたアルバムの企画に取り組んでいると教えてくれました。

BBCは番組のテープを残すことを考えなかったので、EMIは他の情報源、つまり私のような自宅録音に頼らざるを得なかったのです。

必要なトラックはほとんど揃っていましたが(一部は、BBCのプロデューサー、ケヴィン・ハウレット経由で入手したものでした)、中には貧弱なマイクで録音された音質の悪いものもありました。

EMIは最新鋭の機材を導入し、音質を大幅に向上させることができましたが、それでもアルバムをリリースするほどには満足していませんでした。

マークは、EMIが私のテープを聴きたいと思うかもしれないと考えました。

私は、実家の屋根裏部屋にあることを祈りながら、何十年も前に見たテープを探さなければなりませんでした。

問題がありました。私の両親はひどく片付けが苦手で、来客のために家の中を片付けようとすると、あらゆる場所からあらゆるものをダンボール箱に入れて、二度と見られないように屋根裏部屋に押し込めてしまうのです。

そのため、屋根裏部屋は、何の印もなく、半分壊れたような、埃まみれの箱が垂木のところまで伸びている悪夢のような状態になっていました。

屋根裏に行くには、ガタガタした木製のはしごが必要で、私は怖くてたまりませんでした。幸いなことに、私はすぐに幸運に恵まれ、すぐにテープを見つけることができました」

アッシュワースはこの後、マーク・ルーイスンに報告し、マークはEMIに連絡を入れ、その数ヵ月後、アッシュワースははそのテープをアビー・ロード・スタジオに持ち込むよう誘われます。そこでテープを再生し、内容を確認した後、EMIは、アッシュワースのテープがあればアルバムをリリースするのに十分な素材があると判断し、アッシュワースにオファーを出したのです。

引き渡した後、EMIはアビーロードのロゴが入った『Pop Go The Beatles』の全番組のCDを7セット作り、アッシュワースは1セット受け取っています。

アルバムは1994年11月30日に発売されました。

アッシュワースは「どの曲が私のテープからのものであるかはすぐにわかる」という。

アッシュワースはその後、自分たちが持つ『Pop Go The Beatles』の音源を、自分たちのウェブサイトで公開する計画を思いつきますが、著作権の問題で、BBCから許可されなかったため、実現できなかったとも述べています。