Mick Jagger - Photograph: Rankin
ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)の
ミック・ジャガー(Mick Jagger)は、ゲイリー・オールドマンが主演を務めるAppleオリジナル・スパイ・ドラマ『窓際のスパイ(原題:Slow Horses)』のテーマ曲を手がけました。これにあわせ、自身のこれまでの俳優活動について、英ガーディアン紙のインタビューの中で振り返っています。
映画『パフォーマンス』(1970年)での演技について、今の心境は?
「もうずいぶん前のことだから、覚えていないよ。大変な仕事だったし、映画も初めてだったから、本当に勉強になった。自分が何をやっているのか分からなかったので、かなり集中しないとうまくいかなかった。ある意味、奇妙な映画だし、ある意味では、よくできている」
映画『太陽の果てに青春を(原題:Ned Kelly)』(1970年)で、オーストラリアの悪名高いアウトローをエキセントリックに演じたミックは当時、「キャラクター俳優」になりたいという願望を口にしましたね?
「そんなこと言ったっけ?あのころは、あまりオファーがなかったんだ。今は、音楽関係者が映画の役を得るのはずっと簡単なことだけど、昔は音楽業界の人間に対して偏見があったんだ。彼らは一つのことしかできないみたいに思われていて、オファーされるのはスタントキャスティングだけだったんだ」
俳優とシンガーはスキルを共有することが多いのでしょうか?
「似たようなもの、共通するものがあるよ。 投影して別人になることは必要だけど、でも、全く異なる分野だ。俺は演技をほとんどしたことがないけど、いつも楽しんできた。5万人の観客を楽しませるステージに立つからといって、必ずしも優れた役者になれるとは限らないんだ」
しかし、彼はそうであると、映画『ベント/堕ちた饗宴』(1997年)でミックを起用したショーン・マサイアス監督は語っています。
以下、マサイアスの証言
「グレタにミックを起用したのは、そのパフォーマンスのためだ」「彼の存在感だね。美しさ、アンドロジニー。彼はとても個性的な顔をしていて、とてもセクシーで美しい。ちょっと動物的。顔はかなり年配の方なのに、10代の痩せた体をしている。うらやましいほどの代謝の良さだ。当時、彼はまだジェリー・ホールと一緒にいて“ジェリーは俺を殺したがっている。俺は好きなものを食べられるのに、彼女はチップを見るだけで太ってしまうんだ”と言っていた」「(ミックは)協力的なメンバー。彼には側近がいたが、決して権力を乱用することはなかった。彼は素晴らしい頭脳の持ち主だ。いろいろなことに興味を持っていて、そのすべてについて話すことができる。そして、ディナーではとても楽しい人だよ。ユーモアのセンスもあるしね」
ミックはめったに演技をしませんが、どのような役が魅力的でしょうか?
ミック自身は「自分の中で何かがひらめくような役」と言っています。「“このキャラクターに命を吹き込むことができる、面白い人物にすることができる”と思わせてくれるなら。自分を演じたくないし、自分に近づきすぎたくない。俺はそれを断ってきたんだ」
5年ほど前、ミックは 最後の映画出演を希望していることを業界内に明かしていました。その願いは、コモ湖で撮影されたスリラー映画『ザ・バーント・オレンジ・ヘレシー』で、不吉な意図を持つ大富豪の美術品収集家という、小さいながらも印象深い役柄で叶ったのです。再び俳優として活動することになった感想は?
「正直言って、ちょっと変な感じだよ」とミックは言う。「長い間、何もしていなかったからね。“そうなんだ。演技をするんだ。今考えよう。どうやってやろう?”という感じだった。以前、ジャック・ニコルソンに“キャラクターを作るとき、どこから始めるか”と聞いたことがあるんだ。彼は“その人物の性生活”と言っていたよ」
ミックによると、キャラクターの背景を描き出すことは、たいてい役に立つという。
「脚本と必ずしも一致しないかもしれないけど、あると便利なんだ。そうでなければ、ただセリフを言うだけになってしまう。ただセリフを言うだけではダメなんだ。その人がどんな人なのか知っていたほうがいい。結婚しているかとか、学校はどうだったかとか、そういうのをメモしておいたんだ。詐欺師なのか?ラグビーが好きか? 普通のことだよ。面白いけど、どうせやるなら、ちゃんとやった方がいい」。
この映画の監督、ジュゼッペ・カポトンディもそれを証明しています。
「ミックは本当によく下調べをしていたんだ」「このキャラクターはチェルシー訛りで話すべきなんだが、チェルシーが上流階級になる前の時代、まだ労働者階級だったころの訛りが必要だと言っていた。それはすべて彼からの言葉だ。また、画商の友人たちにも話を聞いて、マーケットがどのように機能しているのかを理解していた」
撮影現場ではどのような存在だったのでしょうか。
「彼は、自分の限界を感じているのか、とても謙虚でした。撮影に入る前に“俺は午後からが本番なんだ。その時にすべてのシーンをやってもいい?と言うので、僕は彼に“ミック、君とは4日しか一緒にいられないんだ!午後だけしか撮影できないなんてありえないよ!”と言いました。朝7時に船から降りて、貸し別荘に来るのを見たけど、ちょっと不機嫌そうだった。でも、撮影現場に着いた瞬間、彼は完璧だった」
これが最後の役だと話していましたか?
「“もう歳だから。あまり時間がないんだ ”と言っていました」
おそらく史上最後のミック映画を監督した気分はどうですか?
「ああ、それは大きな責任だよ」「またやってくれるといいんだけどね。きっとやってくれるよ。彼は本業が忙しいだけだから」と笑っています。
同じインタビューの中でミックは、6月から始まるローリング・ストーンズの60周年記念ヨーロッパ・ツアーについて
「新しいステージを作るんだ、いい感じにしたいね。ヨーロッパを回って、いろんな言語を話すのが楽しみなんだ。今、どの曲をやるか考えているところだよ。アメリカ公演を終えてからそんなに時間が経っていないような気がするから、やる気満々だし、準備万端だよ」