ウクライナを代表するロックバンド、オケアン・エリズィ(Океан Ельзи)のリード・ヴォーカルで、おそらくウクライナ最大のロック・スターであるスヴャトスラウ・ヴァカルチュク(Svyatoslav Vakarchuk)は現在、戦闘の最前線、病院、市民が避難する防空壕、難民でいっぱいの駅などを巡り演奏しています。英国の新聞ガーディアンは「歴史上、最も危険なロックツアーの1つとして、語り継がれるに違いない」と、彼の危険なツアーを映像と共に紹介しています。
オケアン・エリズィは、バンドの最新アルバムに伴うツアーを4月から行う予定でした。同バンドはスタジアム・コンサートの観客動員数でウクライナ記録を保持しており、またヴァカルチュクの国内での人気は高く、3年前にはウクライナ人の3人に2人が彼に大統領選に立候補してほしいと願っていました。
しかし、ロシア軍の侵攻直後、ウクライナ南東部の都市ザポリージャの病院を訪れたことがきっかけで、ヴァカルチュクは、戦闘の最前線、病院、難民であふれる駅、市民が避難する防空壕、最近砲撃を受けた多数の箇所を、ロシア軍に狙われないよう完全に秘密裏に巡るツアーを続けています。
ヴァカルチュクは、「最初は3週間前のザポリージャだったんだ。隊員や軽傷の兵士の前で歌ってほしいと言われたんだよ」「それで何曲か歌ったんだ。アカペラで。その後、続けることにしたんだ」と話しています。
それ以来、彼はオデッサでは市の創設者を記念する記念碑の近くで、東部の都市ハリコフでは地下駅に避難している人たちのために歌いました。
また、ウクライナ西部のリヴィウでは、駅の外でピアノを弾き、難民のため、警察のため、そしてロシアの攻撃に毎日直面している軍のために50分間のコンサートを行いました。彼は、大学や主要な職場にも顔を出し、この苦難を乗り越えようとする人々を鼓舞しています。
「“僕は君たちと共にいる”と感じてもらうためにね。数えたことはないけど、おそらく8〜10都市で歌ったと思うよ」
ヴァカルチョクは陸軍中尉の階級を持っているため、国内を移動することができます。
ヴァカルチョクは、3週間前に安全な場所に避難した生後9カ月の息子イワンが残したおもちゃの車をお守りとして持っているという。
自身の安全について「心配はしているよ。でも、これだけは言っておこう。まず第一に、僕たちは小さなチームで、ある程度のセキュリティがある。僕一人がそこにいるというわけではないんだ。第二に、ポイントは、ウクライナにはもう安全な場所はないということなんだ」
海外からの資金調達に招かれたこともありますが、彼は「銃を持てる者が国外に出られる法律はないし、実際、出たいとも思わない」と話しています。