HOME > ニュース >

プライマスのレス・クレイプール、ラッシュを語る

2022/02/16 18:20掲載
メールで知らせる   このエントリーをはてなブックマークに追加  
Les Claypool & Geddy Lee
Les Claypool & Geddy Lee
プライマス(Primus)レス・クレイプール(Les Claypool)が、ラッシュ(Rush)を語る。

プライマスは、ラッシュのトリビュート・ツアー<A Tribute To Kings Tour>を2021年より行っており、今年4月から再開されます。これにあわせ、レスはUltimate Classic Rockのインタビューの中で、ラッシュについて、さまざまなことを語っています。

Q:どのようにしてラッシュを知りましたか?何がきっかけでしたか?

「僕の最初のコンサートは、ラッシュの『Hemispheres』ツアー。14歳の僕の心を吹き飛ばしたんだ。彼らを最初に聴いたアルバムは『A Farewell to Kings』だった。子供の頃は、ステレオを持っていなかった。レコードが3枚とレコードプレーヤーがあったくらい。僕には2人の友人(2人は兄弟)がいたんだけど、彼らはそれぞれステレオを持っていて、膨大なレコード・コレクションを持っていたんだ。だから、いつも彼らの家に行って、彼らのレコードを全部聴いていた。相棒のジェフが『A Farewell to Kings』を取り出してきて、“これは一体何だ”と思ったのを覚えているよ」

Q:最初のライヴを見たときは、どのくらいのファンだったのですか?

「ベースを弾き始めたばかりで、始めて2ヶ月くらいだったかな。ゲディー(リー)は僕のヒーローだよ。

(米カリフォルニア州)カウパレスのステージでは、パット・トラヴァースが(ピーター)マーズ(コウリング)やトミー・アルドリッジと一緒に演奏していて、とても素晴らしかった。機材をセットアップしている間にステージのセットアップを見ると、そこにはゲディーのリッケンバッカー・ベースが置かれていた。それは僕らにとっての聖杯だった。僕の友人であるビル・ピーターソンは、残念ながら数年前に亡くなってしまったけど、彼は少しばかりのお金を持っていた。彼は“俺もこんなベースを持っているぞ。俺のベースとそっくりだ!”と言うので、僕は“ちくしょう!”と思った。ビル・ピーターソンは、ゲディーと同じ黒のリッケンバッカーを持っていたから、嫉妬したよ。

僕の初めてのコンサートでは、僕の友人で、現在僕のベースを製作してくれているダン・マロニーが、年上だったので、僕たちを連れて行ってくれたんだ。もちろん、彼はビールを買える年齢だったので、僕は温かいビールを3杯飲み、駐車場で吐いて、売り切れていないライヴのチケットをダフ屋で買った。当日券を買うよりも高い値段で買ったんだよ。ロシナンテ(宇宙船)が白鳥座のブラックホールを通過するのを見て、僕は完全に心を奪われた。信じられないほどの壮大さだったよ」

Q:プライマスは1992年にラッシュのツアーに参加しています。この2つのバンドの間に長く続く友情を築いたものは何だったのでしょうか?

「いろんなことがあったよ。彼らのスタッフであるスキップ・ギルダースリーブは、(ライヴ・アルバム)『All The World's a Stage』の裏に名前が書いてあった人なんだけど、彼とはよく一緒に遊んだよ。彼は“君はラッシュのようだね。プライマスのライヴには女の子がいなくなるぞ!”みたいな、そういうことが多かったよ。最近のライヴには、おそらく今までよりも多くの女性が参加していると思うよ。

僕らはプログレッシブの要素もあり、明らかに鼻の高い男がベースを弾いている3ピースのバンドだからね。多くの類似点があった。

ハーブ(ドラマーのティム・“ハーブ”・アレクサンダー)とラー(ギタリストのラリー・ラロンデ )と僕が初めて一緒になったとき、僕たちの共通点はラッシュを演奏できるということだった。ラーはメタルの世界から来たけど、(フランク)ザッパやグレイトフル・デッドにも傾倒していた。ハーブはプログレやワールドミュージックに夢中だった。僕は、奇妙で多彩なものに興味があり、ソウルやファンクのバックグラウンドを強く持っていた。だから、ラッシュの曲を演奏することで、彼らの曲の断片を演奏することでつながったんだ。つい最近まで、ラッシュの曲をすべて知っていたわけではなかったんだ。いつも断片的に知っていたんだよ」

Q:初めて弾けるようになったラッシュの曲は何ですか?

「“What You're Doing”。数年前にゲディーが僕の家に来たんだ。彼は自分の本を作っていたんだけど、僕がずっと間違って弾いていたことを教えてくれたんだ。彼が見せてくれたものはほとんどすべて、僕が間違っていたことを示していた。これはね、彼の本の協力するための契約の一部だったんだよ。“YYZの正しい弾き方を教えて”というものだったんだ。もちろん、僕はずっと間違った方法で演奏していたんだけど」

Q:初期の頃、ラッシュの曲に取り組む上で最も怖かったことは何ですか?

「音色は難しいね。ゲディーのような音色を出すのは難しい(笑)。

『A Farewell to Kings』では、ヴォーカルとキーボードを同時に演奏しながら、ベースを弾き、大きなダブルネックのシンダーブロックの塊を首に巻いて演奏するのだから、大変なことだよ。でも、素晴らしいことだし、毎晩、『A Farewell to Kings』のセットを演奏するのを楽しみにしているよ」

Q:『A Farewell to Kings』を正しく表現するための作業は、どのようなものでしたか?

「歌うのはとても難しい。僕の息子がリハーサルに参加していたんだけど、僕を脇に連れて行って、“自分が歌うように歌えばいいんだよ。ゲディーのように歌おうとするなよ”と言われたよ。僕の娘はいつも、僕の脇の下が臭いと真っ先に教えてくれる。それが子供というもので、欠点をすべて指摘してくれるんだ。

僕は別のアプローチをすることにした。プライマスの世界にも高音域のものがあるからね。だから、曲ごとにキャラクターを考えていた。例えば、プライマスの“Sgt.Baker”という曲があるんだけど、このモードになると、ゲディーの音が出せるんだ。そういうふう考えるようになってから、多くのパートを出せるようになったんだ。

いくつかのパートでは、もっと低い音で歌わなければならなかったけど、後年、ゲディーも低い音で歌っていたしね。

ラーはアレックス(ライフソン)に電話して、“ここではどんなコードを弾いているんだ?”と聞くと、アレックスは彼を助けてくれた。彼は実際にギターを何本か送ってくれた。何度かゲディーにメールしたことがあって、“なんだこれは?何てこった!?ファルセットで歌っていたの?”と尋ねると、彼は“いや、これはフルボイスだよ!”と言うんで、僕は“なんてことだ!”と思ったこともあったよ。

そういえば、数年前にゲディーと会ったとき、彼と一緒に演奏している写真を投稿したんだ。僕はInstagramを始めたばかりだったので、とても時間がかかった。僕の娘は“Instagramをやらなきゃダメよ。あなたのファンはみんないなくなってしまうし、新しいファンも来なくなってしまう。Instagramに登録して”と言っていた。

僕にとってソーシャルメディアとは、クライスラーの部品などを探すためにCraigslistにアクセスするようなものだ。それは僕の好みではなかった。釣りの写真を投稿したりしていた。ゲディーの写真を投稿したら、みんなが勝手に、ゲディーが僕の家で『A Farewell to Kings』の演奏を教えてくれていると思い込んでしまったんだよ」

Q:ゲディーとアレックスからはどのようなフィードバックがありましたか?

「ゲディーについてはよくわからないけど、アレックスは何も見ていないと言っているよ。彼は、ライヴで見るのを待っていると言っていた。来春、(トロントの)マッセイ・ホールで演奏することになっているんだ。でも、本当に最悪なのは、(ツアーの準備で)一生懸命働いていたことだよ。キーボードの演奏...僕はキーボード奏者ではないからね。僕のキーボードは、(ガイドのための)色の違うテープで覆われているよ。

最初のショーはアイダホ州ボイシで、“よし、ここはいい場所だ”と思った。ニューヨークではないし、プレスもそこにはいない -- それに、僕たちはローリングストーン誌からあまり注目されていない。でも、ローリングストーン誌はこのライヴを取り上げ、誰かが(ボイシのライヴの)最前列で撮影したビデオを掲載した。『A Farewell to Kings』のタイトル曲でキーボードを弾いた最初の4音で、僕は完全に音詰まりをしてしまい、台無しにしてしまった」

Q:かなり念入りにリハーサルをしたと思いますが、人前で演奏してみて、本来の姿になったと感じるまでにはどのくらいの時間がかかりましたか?

「プライマスはリハーサルをしないんだ。リハーサルのために集まっても、少しジャムってからステーキを食べたりワインを飲んだりする。僕たちはリハーサルをしないバンドなんだ。アルバムを作っているときでさえ、僕たちはそれについてとても怠け者なんだ。でも今回は、一生懸命リハーサルをしなければならなかった。そうしなければならなかったんだ。

ラッシュのファンは、僕もその一人だけど、非常に厳しい目を持っている。中途半端なことはできない。僕たちは本当に一生懸命取り組んだ。それはバンドにとって素晴らしいことだったんだ。久しぶりに絆が深まったよ。新しい小さなリハーサルスペースを作ったんだけど、これは僕たち3人にとって本当に良いことだった。とても元気になり、若返ることができた。(最初のショーでの)音詰まりを除けば、全体的にポジティブなことばかりだよ」