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『ジギー・スターダスト』のプロデューサー ケン・スコット、デヴィッド・ボウイとの仕事について語る

2022/01/18 18:36掲載
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David Bowie / The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars
David Bowie / The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars
デヴィッド・ボウイ(David Bowie)の複数のアルバムにエンジニア/プロデューサーとして参加したプロデューサーのケン・スコットは、出演したApple Music Hitsのラジオ番組(ホスト:Strombo)の中で、ボウイとの仕事について語っています。

ケン・スコットは、60年代を通じてアビー・ロード・スタジオのエンジニアを務めました。またスコットはボウイの複数のアルバムに参加し、『Space Oddity』と『The Man Who Sold The World』ではエンジニアを務め、『Hunky Dory』、『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』、『Aladdin Sane』ではプロデュースを担当しました。

「僕はある点で彼(ボウイ)をビートルズと比較しているんだ。それは人にどう思われようと気にしない勇気を持っていたという点。急に方向性を変えようと思ったら、何があってもそうする。それができないアーティストはたくさんいるよ」

また、スコットは、ボウイが特定のプロジェクトのために適切なチームを編成する能力があったことを称賛しています。「彼は、それぞれの人がプロジェクトに何をもたらすことができ、自動的に何を与えることができるかを知っていた」

ボウイのヴォーカルに関してはこう話しています。

「デヴィッドと共同プロデュースした4枚のアルバムのうち、約90%のヴォーカルは最初から最後までファースト・テイクだったんだ。僕はテイクを実行し、彼のヴォーカルのレベルを確認し、戻ってテイクを録音した。 その一回を通してやったことが、今も僕たちの耳に残っているんだよ。オートチューンも、カット&ペーストもなく、何かを動かしていない。毎回、彼の心から出た一つのパフォーマンスだったんだ」

彼は、ボウイは技術的には必ずしも完璧ではなかったが唯一無二だったと言います。

「今まで一緒に仕事をしてきた一流のアーティストやヴォーカリストの中で、こんな人に出会ったことはない」と彼は断言し、「僕の友人は“不完全な中にも完璧さがある”と言っていた。そういうことなんだよ。完全に調和しているわけではないけど、それは魂から生まれたものなんだ。彼はその一つ一つに自分自身を込めていたんだよ」と話しています。

彼はさらに続けます。

「『Ziggy Stardust〜』の1曲目、“Five Years”では、テイクが終わる頃には、彼は目を泣きはらし、顔を涙で濡らしていた。残念なことに、ミックスの最終段階では、ドラマチックに、できる限りすべてを表現しようとする。そうすることで、ちょっとした断片が失われてしまうことがあるんだ。

最後の方では、彼の声に感情がこもっているのがわかるよね。今では僕の講演の中で“Five Years”のエンディングを流すことがよくある。通常のトラックから始まり、デヴィッドとアコースティック・ギターだけの構成になっているんだけど、これを聴いた聴衆の中には、思わず泣き出してしまうような人もいる。とても感動的な曲なんだ。それは彼がいつも与えてくれたものだよ」

ボウイは2016年1月10日に亡くなりましたが、スコットは、ファンは彼の死を嘆き続けるよりも、彼が残した音楽に感謝すべきだと言います。

「映画スターやレコードスターが亡くなっても、その人が手がけた作品を手に入れることができる。僕たちに多くのものを与えてくれたのだから、そのことに感謝しなければならない。

彼らが亡くなったのは残念なことだけど、僕たちは彼らと毎日お茶を飲んでいたわけではない。僕は、ファンが言う“彼がいなくなるのは寂しい”という言葉がよく理解できない。どうして寂しくなるんだろう? 彼の作品はまだそこにあるのに。いつでも好きなときに彼の曲を聴くことができるし、彼の曲を楽しむことができる。彼が多くのことをもたらしてくれたのだから」。