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MR.BIGのポール・ギルバート、30周年を迎えたアルバム『Lean Into It』についての逸話を語る

2021/12/28 16:17掲載
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MR.BIG / Lean Into It
MR.BIG / Lean Into It
MR.BIGポール・ギルバート(Paul Gilbert)は、発売30周年を迎えたアルバム『Lean Into It』についてUltimate Classic Rockのインタビューの中で語っています。アルバム制作の背景、ドリル、アルバム制作時の一番の思い出、ハービー・ハーバートとのお気に入りのエピソードなど。

Q:『Lean Into It』はMR.BIGにとって、とても大きなアルバムとなりました。2作目となるこのアルバムのレコーディングは、どのような状況で行われたのでしょうか。

「僕たちはツアーに出ていた。とてもいいツアーで、ラッシュと一緒にたくさんのツアーをしたんだけど、僕たちの曲がもっとメロディックであれば、もっと良い反応を得られたのではないかと感じたことを覚えているよ。何となくだけど、そんなことを感じたんだ。目の前に素晴らしい観客がいるのに、僕たちはまあまあの結果を出すことしかができなかったんだ。

僕にとってはそれが目標だった。メロディーを入れようと。ブルージーなスタイルはまだいいとして、曲自体のメロディーをもっとしっかりしたものにしようと。エリック(マーティン)がやってきて、それを見事に表現してくれた。彼は“Just Take My Heart”と“To Be With You”を持っていた。僕は“Green Tinted Sixties Mind”を思いついたんだ。

僕にとっては、この3曲と、そしておそらく“CDFF-Lucky This Time”は、とてもメロディックな曲だよ。僕たちはメジャー・キーを使っているので、それが大きな違いだった。ロックな曲も良かった。“Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)”はいいエネルギーを持っていたよね。“Alive and Kickin'”はブルージーだけど、ハーモニーがある。このアルバムは全体的にうまくいっているよ。音も良かったし、奇跡的だった」

Q:「Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)」で、ドリルが登場したのはいつ頃ですか?

「正確には覚えていない。僕がたまにやっていたものを、ビリー(シーン)のために1曲作ったんだ。ハーモニーがあったらすごいことになるんじゃないかと思ってね。僕たちがやるようなシュレッダー系の曲の多くは、あっという間にできあがってしまうので、いつも驚かされているよ。

レーサーXでは、何ヶ月もリハーサルをして、すべてのことに細心の注意を払っていた。MR.BIGでは、いつも”よし、5分あるぞ”という感じで、 僕たちは、ただそれを組み合わせるだけだった。使えるとわかっているものを入れていくと、5分しか必要ないんだ。簡単なことをやっていたわけではなく、すでにやり方を知っている快適なものをやっていただけなんだよ。そのおかげで、ライヴではいつもうまくいくし、力強さが伝わってきてよかったよ」

Q:1991年の時点では、あなた方とヴァン・ヘイレンが共にドリルを使うとは誰も予想していなかったでしょうね。

「それは現実離れしていたね。僕は昔も今もヴァン・ヘイレンの大ファンだからね。MTVで“Poundcake ”のビデオを見たときは、本当に現実とは思えない気分だった。“何が起こっているのか”と思った。今もその状態が続いているよ」

Q:このアルバムを作った時の一番の思い出は何ですか。

「僕は本当にひどい車を持っていた。最近亡くなったハービー・ハーバートは、マイケル・ジャクソンのビデオ・スクリーンを担当していたプロダクションを所有していたんだけど、マイケル・ジャクソンを見るためにハービーがやってきたんだ。ビリーはコルベットを持っていてコルベットは2人しか乗れないんだけど、僕ら3人は行きたかったので、3人で僕のひどい車に乗ることになったんだ。

僕たちはオレンジカウンティのアーバインメドウズかどこかの会場を目指して、ハリウッドから405号線を走っていた。かなりの長距離ドライブだったよ。

20分ほど走ったところで、フロントから煙が出てきたんだ。メンテナンスのことなんて知らなかった。煙を見て“これは僕?”と言うと、ビリーは“そうだよ、君だよ”と言ったのを覚えているよ。車を止めて、ガソリンスタンドでなんとか車を直してもらって、そのまま走り続けた。

その後、ハービーは“この子たちに音楽出版契約を結ばせなければならない”と言い出したんだ。ハービーは僕と出版契約を結び、お金が入ってくるとすぐに“車を買いに行け!”と言ったんだよ。僕は車の買い方を知らなかった。

子供の頃はギターしか弾いたことがなかったからね。それで、僕はベランダに出て道路を見始めたんだ。“これで自分の欲しい車を知ることができる”と思って、気に入った車が通り過ぎるまで道路を見ていたんだ。僕は、フィンのついた古い車が好きだった。それで結局、62年モデルのサンダーバードを買ったんだ。でも、これが一番危険な車だった。ブレーキが効かないんだよ。生きているのは奇跡だよ。多くの信号を無視して走ったのにね。ブレーキを踏んでいたのに何も起こらなかったからだよ。

でも、見た目はかっこよくて、ステレオもよかった。毎日、62年モデルのT-Birdに乗ってスタジオに通っていた。曲にも興奮していたので、人生は素晴らしいと思っていた。このレコードで何かが起こりそうな気がしたんだ。“このアルバムが発売されたら、いつか彼女ができるかもしれない”と思っていた。ブレーキが効くようになれば、すべてが解決する、とね」

Q:ハービー・ハーバートは個性的でしたね。ハービーのお気に入りのエピソードを教えてください。

「“To Be With You”がヒットしていた頃、ツアー中の僕たちのために飛行機でミーティングを開いてくれた。彼は僕たち全員を座らせて、“みんな、これは驚くべきことなんだよ。素晴らしいことだ。お祝いしよう。ちなみに、話は変わるけど、このようなことは決して二度と起こらないからね”と言ったんだ。

彼は“業界は変化している。問題は、君たちがダンスをしないことと、女性ではないことで、それが未来なんだ。君たちの中にジャネット・ジャクソンはいない。君らはもうダメだ。これからMTVが流すのはそれだ。彼らはギターを弾く痩せた男たちを求めていない。だから、日本で演奏するんだ。日本では数年は君たちのことを気に入ってくれるだろう。それを最大限に利用するんだ”と言った。基本的には“お前たちは世界の頂点に立っている、が、お前たちは終わりだ”と言われたよ(笑)。

もちろん、彼の言うとおりだった。もうひとつ彼が言っていたのは、“すべての仕事に文句を言うな。これは『David Letterman』や『The Tonight Show』に出演するチャンスで、もう二度と起こらないのだから、泣き言を言うのはやめろ。来年になれば眠れるようになるさ。今は忙しいのだから、それを利用するんだ、今がその時なのだから”ということだった」