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『ザ・ビートルズ:Get Back』 50年以上聞き取れずにいたビートルズ・メンバーの私的な会話をAIを使って復活させる

2021/11/21 01:57掲載
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ザ・ビートルズ:Get Back ©2021 Disney ©2020 Apple Corps Ltd.
ザ・ビートルズ:Get Back ©2021 Disney ©2020 Apple Corps Ltd.
ドキュメンタリー『ザ・ビートルズ:Get Back』を監督したピーター・ジャクソンによると、この作品では、50年以上ギターの音で聞き取れずにいたゲット・バック・セッション時のビートルズ・メンバーのプライベートな会話をAI(人工知能)を使って復活させることに成功、映画の多くの部分や重要な部分で取り上げています。またAIは、モノラル録音のみが残されているリハーサル・セッションの音質の向上にも貢献しているという。

『ザ・ビートルズ:Get Back』は、ビートルズが1969年1月に行ったゲット・バック・セッションと、彼らの最後のライヴ・パフォーマンスとなったルーフトップ・コンサートの模様をフィーチャーした3部構成のドキュメンタリー。ドキュメンタリー映画『レット・イット・ビー』(監督マイケル・リンゼイ=ホッグ)のために撮影された素材が使用されており、60時間以上の未公開映像と、150時間以上の未発表音源をピーターが3年をかけて復元・編集しています。各エピソードは約2時間。11月25日(木)・26日(金)・27日(土)にDisney+(ディズニープラス)にて3話連続で配信されます。

1969年当時、現場に密着したドキュメンタリーという概念は一般的ではありませんでした。マイケル・リンゼイ=ホッグ監督は、ビートルズのアルバム制作の様子を率直に撮影しようと最善を尽くしましたが、被写体であるビートルズのメンバーは必ずしも協力的ではありませんでした。

ジャクソンはGuitar.comのインタビューの中でこう話しています。

「映像を観ているうちにに気づいたのですが、特にジョンとジョージは、自分たちのプライベートな会話がずっと録音されていることを強く意識していました。でも、不思議だったのは、マイケルに“マイケル、撮影するならいつやるのか教えてくれよ、そうすれば僕らは自分のことをするけど、それ以外の時には僕らを撮影したり録音したりしてほしくないんだ”と言わないことです。

彼らは明らかにそんなことは言いませんでした。彼らは彼との戦いの中にいたのです。ジョンとジョージがよくやっていたのは、会話をしているときにアンプの音を大きくして、ギターを鳴らすこと。ただ鳴らしているだけで、何も演奏せず、メロディーもなく、ただ(ギターを)鳴らしていました。だから、マイケルのマイクが録音していたのは大音量のギターだけでしたが、(映像では)ビートルズが話しているところや、プライベートな会話をしているところを見ることができます。

今では、コンピュータ技術や人工知能能 (AI) を使った技術によって。ギターを取り除いて、彼らのプライベートな会話を公開することができるようになりました。

ギターを取り除くことができたので、この映画の多くの部分や重要な部分では、撮影時に彼らが偽装しようとした、あるいは隠そうとしたプライベートな会話が登場します」

AIは、ビートルズのプライベートな会話という、これまで聞いたことのないような情報を提供してくれただけでなく、モノラル録音のみが残されているトゥイッケナム・スタジオでのリハーサル・セッションの音質の向上にも貢献しています。

「トゥイッケナムではリハーサルなので、8トラックではなくモノラルで録音しています。ミキサーもグリン・ジョンズもジョージ・マーティンもいません。マイクを持った撮影クルーが彼らを録音しているだけで、彼らはそこらじゅうにいました。

ヴォーカルはかき消され、ギターの音は大きく、リンゴの声はほとんど聞こえません。きちんとした演奏を録音していたわけではなく、あくまでもリハーサルだったわけです。

でも、もっといい音にしたいと思って、デミックスという技術を考案しました。このアイデアは以前からありましたが、あまりうまく使われているのを聞いたことがありません。しかし、今回はPark Road Postの優秀なスタッフに、AIを使った機械学習のソフトウェアを作ってもらいました。コンピューターにギターの音を教えたり、人間の声を教えたり、ドラムの音やベースの音を教えたりするのです。

この技術をトゥイッケナムで演奏している彼らのモノラルトラックに使うと、“ヴォーカルトラックだけを欲しい”と指定するだけで、機械学習によってヴォーカルトラックだけの結果を得ることができます。バックでリンゴがドラムを叩いているのが見えますが、ドラムの音は聞こえません。 ドラムの音は一切聞こえず、ヴォーカルだけがクリーンな状態となるのです。

僕たちにとって大きなブレークスルーとなったのは、実は映像の復元ではなく、サウンドの復元でした。モノラル録音を(ヴォーカルやギターなど)各トラックごとに分割することができたのです」