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キッスの失敗作『Music From“The Elder”』 40周年にあわせてジーン・シモンズとポール・スタンレーが語る

2021/11/11 14:26掲載
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Kiss / Music From
Kiss / Music From "The Elder"
キッス(KISS)が1981年11月にリリースしたコンセプト・アルバム『Music From "The Elder"(邦題:エルダー魔界大決戦)』。セールス、評価とも芳しくない「失敗作」としてバンドの歴史に残る本作について、発売40周年にあわせて、ジーン・シモンズ(Gene Simmons)ポール・スタンレー(Paul Stanley)が米Yahoo!Entertainmentで語っています。

Q:このアルバムはキッスにとって過渡期の真っ只中にあったと思います。当時、大きなリスクを伴うこのような野心的なプロジェクトには、どのような心境で臨んだのでしょうか?

ポール・スタンレー
「俺らは迷っていた。思い違いをしていた。俺たちは満足してしまい、自分たちが手にした成功や、それが何に基づいたものなのかに感謝しないようになっていた。俺らは怠け者で、リッチな生活に馴染んでしまっていて、ファンよりも同時代の人たちの目を気にするようになっていた。ファンを見捨てていたんだと思う。俺たちはロック・アルバムを作ることができなかったんだ」

ジーン・シモンズ
「何をするにも、誠実さと正直さが必要だ。あれは不誠実なレコードだった。『The Elder』は方向性を誤っていた。

俺たちはとても人気があり、スタジアムなどで演奏していた。ラインナップが変わったとき―ピーター・クリスは陳腐なロックンロールに屈していたので、エースとポールと俺の3人で、彼をバンドから外すことを決めた。新人エリック・カーに恵まれたよ。彼は残念ながら亡くなってしまったが。

俺たちはしばらく休んだ。というのも、俺が映画に興味を持ち始め、パラマウントに行ったりして、いろいろな人に会っていたからね。最終的には、いくつかの映画に出演し、いくつかの映画を製作することになったが、それは俺にとって本物ではなかった。

そして、俺は執筆活動を始めた。最初に書いたのは、ビバリーヒルズホテルの便箋に書かれた“長老たち、地球が若かったとき、彼らはすでに年老いていた”というものだった。マーベルの『ザ・ウォッチャー』などからヒントを得て、トールキンのような映画にしたいと思ったのが始まりだったんだ。

ボブ・エズリンを呼び戻した。彼は、それまで俺たちの最高のアルバム『Destroyer』をプロデュースしてくれていた。ボブ・エズリンは“コンセプト・レコードを作ろう”“ジーン、僕は君の話が好きだ。このストーリーに基づいて曲を作ろう”と言ったんだよ」

スタンレー
「ボブ・エズリンと一緒になったとき、俺は彼がいわば助け舟を出してくれるのではないかと期待していたんだ。俺たちは皆、“みんなに見せてやろうじゃないか! 俺たちがいかに賢く、音楽的であるかを見せよう!”というアイデアに飛びついたんだ。それは“今はロックは無理だな”ということも関係していた」「正直なところ、俺たちは皆、何か偉大なことをしたいと思っていたと思う。そして、8インチのヒールから落ちるときは、激しく落ちるんだ」

Q:『Music From “The Elder”』が発売された同じ時期に、映画『The Wall』が公開され、ボブ・エズリンは『The Wall』の制作に携わっていました。そこでいつも思うのですが、ピンク・フロイドの『The Wall』が、あなた自身の「ウォール」を持つためのインスピレーションになったのでしょうか?

シモンズ:
「『The Elder』の本当のストーリーは、このような自分で自分の心をあざむくものだった。“ザ・フーには『Tommy』がある! 自分たちの『Tommy』を持とう!”とね。なぜそれが必要なのか?ツェッペリンには『Tommy』がなかった。でも、彼らはうまくやっていた」

スタンレー:
「狂気の沙汰だよ」

Q:『The Elder』ではルー・リードとも一緒に仕事をしました

スタンレー:
「ルーは何度かリハーサルに来てくれた。ルーは俺の向かいに住んでいたし、ボブも彼らの向かいに住んでいた。だから、近所のプロジェクトだったんだよ」

シモンズ:
「(エズリンが)ルー・リードを一日呼んできて、歌詞を考え始めたんだけど、ルーの紙には横向きで“ヒーローのいない世界”と書かれていた。すぐに全員が“かっこいいタイトルだね。素晴らしい。ヒーローのいない世界はどうだろう?ヒーローのいない世界は、どこにもない”などと言っていた。それで、ポールが持っていた“あなたの心の中のあらゆるものが”という言葉をもとに、曲ができあがったんだ。ポールはもっとロマンティックなことを書いていた。...それはあなた(女性)が聞きたいことだよ」

Q:本当に舞台や映画を想定していたのでしょうか?

シモンズ:
「そうだね。実際にクリス・メイクピースがいた。彼は当時、『マイ・ボディガード』に出演したばかりの俳優だった。彼が主役に起用され、実際にキャスティングを始めていたんだ。パトリック・スチュワートがモーフィアス役で参加することになっていたかどうかは覚えていないが、そうだったかもしれない。でも、この作品はうまくいかなかった。映画化するつもりだったが、現在のほとんどの映画がそうであるように、脚本などがあっても95%以上は作られない。俺の脚本をベースにしたものを用意したんだが、そこでストップしてしまい、あきらめてしまったんだ」

スタンレー:
「それほどまでに俺たちは妄想していたんだ。火星にロケットを打ち上げるという話をするのは簡単だよね。つまり、話をすることはできても、実際には多くのことが必要になる。本当に火星にロケットを送るとしたら、ロケットと燃料が必要だよね。『The Elder』に関しては、そのどちらもなかったように思う。...強制的で、曲も良くなかったと思う。そして、俺たちは自分たちのことで精一杯だった」

シモンズ:
「好きな曲はいくつかあるよ。“I”は、麻薬撲滅に対する自分のスタンスを半自伝的に歌ったもので、気に入っている。“I believe in me”はなぜ、自分の体や心を傷つけなければならないのか?俺は俺を信じている。まともな曲もいくつかあった。でも、欠けていたのは、その正直さだった。方向性の間違ったアルバムだった」

スタンレー:
「バンド内には様々な問題があり、ボブも問題を抱えていた。俺にとっては、迷える人々の姿を描いたアルバムだった。最後までやり遂げることがどれほど難しいかは、その場にいないと分からない。そして、それは誰のせいでもない。俺たち全員の問題なんだ。これは、俺たち全員が良い状態ではなかったことの表れなんだよ」