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レディオ・バードマンのドキュメンタリー映画 日本語字幕付き予告編映像公開

2020/08/18 17:00掲載
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レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム © LIVING EYES PTY LTD 2018
レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム © LIVING EYES PTY LTD 2018
まだ日本で紹介されていない新作、長年上映されていない旧作など、地下にうごめく数々の“アンダーグラウンドなロック・ドキュメンタリー映画”にスポットライトをあてる期間限定の特集上映<UNDERDOCS(アンダードックス)>。ここで日本初上映となるレディオ・バードマン(Radio Birdman)のドキュメンタリー映画『レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム』の日本語字幕付き予告編映像が公開されています

以下インフォメーションより

■『レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム』

1974年結成、オーストラリアのパンク・ロックバンド、レディオ・バードマンの歴史を追ったドキュメンタリー映画。レディオ・バードマンはセインツと並びオーストラリア・パンクを世界に知らしめたバンドで、ストゥージズの荒々しさとラモーンズのシンプルさをミックスしてオーストラリア特有の哀愁のメロが印象的な、現在も熱狂的フォロワーがいる重鎮。ギターであり中心人物のデニス・テックはストゥージズ同様米国ミシガン州アナーバー出身、ストゥージズやMC5から強い影響を受け、2000年代以降はストゥージズの再結成に参加している。



“迎合せず進路変更”、これがオーストラリア流。
世界一荒々しく騒々しい南半球のバンドの軌跡が遂に日本上陸。

1974年結成、MC5やストゥージズなどのデトロイト直系の荒々しいサウンドとラモーンズのシンプルさ、そして特有の哀愁漂う絶妙なメロディセンスでオーストラリアのロックンロールを世界に知らしめたレディオ・バードマンの活動の軌跡を描くドキュメンタリー映画『レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム』。

なかなか日本ほか欧米にも情報が伝わりにくいオーストラリアのロックの地平を切り開いたバードマンのすべてを曝け出す、貴重な作品だ。レディオ・バードマンはMC5やストゥージズが活動していた米国ミシガン州出身のデニス・テックを中心に結成。バンド名はストゥージズの楽曲「1970」の歌詞がもとになっている。「ロックスターなんでゴメンだ」「音楽業界との闘いを続ける」など、徹底的にDIYを貫き、他人にコントロールされずに、商業的な意識を持たず、ひたすら楽曲とライヴに集中してきたバンド。70年代にアジトとして使っていたライヴハウス、FUNHOUSEには「おしゃれ人間お断り」と書かれるなどロック、音楽の本質に向き合ってきた。映画では彼らメンバーの出会いからニック・ケイヴやセインツなどのオーストラリアを代表するアーティストとの確執、サイアー・レコードのシーモア・スタインとの契約、欧米でのツアー、そして90年代後半の復活から現在まで、その知られざる活動を振り返る。

出演は各メンバーと近しい人間のみ。本人たちの言葉と貴重な写真やライヴ映像ですべてを描き切る。ドキュメンタリー映画としての作りはジム・ジャームッシュがストゥージズを描いた『ギミー・デンジャー』に近いかもしれない。だが特筆すべきはレディオ・バードマンはその時々で異なるが、5人組、6人組のバンド、メンバーチェンジ、メンバーの復帰などを繰り返してきた。劇中ではそれぞれのメンバーの証言、想いが個々で語られ、それが中心人物に偏ることなく公平かつ均等に配置され、メンバー間の不仲なども何も隠すことなく描かれることだ。特にすごいのは、一部のメンバーは「彼とは話してない。電話もメールもしてない。今後も話すことはないだろう」と発言、それがそのまま作品に反映されている。そんな赤裸々な証言の数々が飛び出す本作を観れば、音楽という芸術は友情より優先されるのか、ということを考えずにはいられないだろう。バンド結成の経緯はバンドそれぞれで異なるが、何かで結びついたバンドメンバーとの絆、音楽に向き合う姿勢など、バンドのみならず共同体として何らかの活動をしている者にとって多くの心に響く言葉が散りばめられている。<ロックンロール・ソルジャーを募集><新しい人種を創造する>など、ふつうのロック・ビジネスに取り込まれない姿勢、そして<拒絶された><世間に無法者扱い>された事実は70年代当時のオーストラリアでいかにバードマンが異端な存在であったかが感じとれる。商業的成功を追い求めて活動するバンドとはまったくもって異なり、本当に純粋にライヴといい楽曲を書くことに専念していたバードマンの壮絶な軌跡はぜひ本編で確認してほしい。
世界初のパンク・ロック、RAMONESがニューヨークで誕生したのが1974年、ロンドン・パンクの爆発は1977年。これらのバンドたち全員が多大な影響を受けていたストゥージズが1969年。この欧米の動きと同時進行で南半球にこんな凄まじいバンドがいた、という事実だけでも驚愕する。

なお、余談ではあるがデニス・テックは医師であり、元アメリカ海軍・海兵隊の飛行外科医。テックの海兵隊でのコールサインは<ICEMAN>。80年代ハワイに駐留中、映画『トップガン』を準備中のプロデューサー他スタッフがテックの隊と数週間を過ごしている。

出演:RADIO BIRDMAN
監督・製作・編集:ジョナサン・セクエラ
2018年|オーストラリア映画|109分|原題:DESCENT INTO THE MAELSTROM
© LIVING EYES PTY LTD 2018

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■UNDERDOCS〈アンダードックス〉
シネマート新宿/シネマート心斎橋にて9月11日(金)より開催!
【料金】通常料金 ※各種サービス適用可能
主催:エスピーオー/ビーズインターナショナル/キングレコード
オフィシャルサイト:http://underdocs.jp/



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■上映作品

◆デソレーション・センター
(2018年|アメリカ映画|93分|原題:DESOLATION CENTER)© 2018 MU PRODUCTIONS.
監督:スチュワート・スウィージー
出演:SONIC YOUTH、MINUTEMEN、MEAT PUPPETS、SWANS、REDD KROSS、EINSTURZENDE NEUBAUTEN、SRL、SAVAGE REPUBLIC

米国の砂漠地帯で行われている巨大フェス、コーチェラ・フェスティバルやバーニングマンの元祖であり、1980年代に初めて南カリフォルニアの荒廃した砂漠で実施されたライヴイベント、<デソレーション・センター>の知られざる模様を貴重な映像とともに追ったドキュメンタリー映画。暴力にまみれた80年代初頭のLAパンク・ムーブメントにより、各ライヴハウスから締め出されることとなったミュージシャンたちとイベンターは何の制約もない砂漠でイベントを行うようになる。LAパンクの面々のほかNYからソニック・ユース、さらには日本では石井聰亙監督による映画『半分人間』で知られるインダストリアルミュージックの重鎮ノイバウテンが参戦、凄まじい奇天烈なライヴを繰り広げる。


◆D.O.A.
(1980年|アメリカ映画|93分|1986年&2001年劇場公開作品|原題:D.O.A.: A Rite of Passage)
© 1981 D.O.A. Productions © 2017 MVD Entertainment Group
監督・製作・脚本:レック・コワルスキー
出演:SEX PISTOLS、GENERATION X、THE CLASH、THE DEAD BOYS

70年代末、イギリスを中心に世界的に吹き荒れたパンク・ムーブメントの中心であり、世界で最も過激だったバンド、セックス・ピストルズ初のアメリカツアー(1978年1月5日アトランタから1978年1月14日サンフランシスコでの最後のライヴまで)を中心に、デッド・ボーイズ、シャム69、ジェネレーションXなど当時絶頂期を迎えていた様々なバンドを追ったパンク・ドキュメンタリー映画の最高傑作。アメリカでの異様ともいえる熱狂の中での、観客との暴力沙汰、ベースで殴りかかるシド、極限まで張り詰めた緊張感と毒々しい空気。そしてなんといっても、ドラッグ漬けでまともに話さえできないシドとナンシー・スパンゲンの貴重なヘロヘロのインタビューを収録。


◆レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム
(2018年|オーストラリア映画|109分|原題:DESCENT INTO THE MAELSTROM)
© LIVING EYES PTY LTD 2018
監督・製作・編集:ジョナサン・セクエラ
出演:RADIO BIRDMAN

1974年結成、オーストラリアのパンク・ロックバンド、レディオ・バードマンの歴史を追ったドキュメンタリー映画。レディオ・バードマンはセインツと並びオーストラリア・パンクを世界に知らしめたバンドで、ストゥージズの荒々しさとラモーンズのシンプルさをミックスしてオーストラリア特有の哀愁のメロが印象的な、現在も熱狂的フォロワーがいる重鎮。ギターであり中心人物のデニス・テックはストゥージズ同様米国ミシガン州アナーバー出身、ストゥージズやMC5から強い影響を受け、2000年代以降はストゥージズの再結成に参加している。


◆ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン
(2019年|アメリカ映画|77分|原題:DON’T BREAK DOWN:A FILM ABOUT JAWBREAKER)
監督:ティム・アーウィン、キース・スキエロン
出演:JAWBREAKER、ビリー・ジョー・アームストロング、スティーヴ・アルビニ、ジェシカ・ホッパー、クリス・シフレット
© 2019 Rocket Fuel Films
1986年〜1996年まで活動、90年代以降の“エモコア”のバンドたちに多大な影響を与えたニューヨーク出身のバンドJAWBREAKERの軌跡を追ったドキュメンタリー映画。90年代に拠点をサンフランシスコに移し、インディーズバンドとして絶大な支持を集めるも、1995年、メジャーレーベルのGeffenからアルバムを発表、凄まじいバッシングを受けて翌年解散、この顛末がすべて描かれている。監督・プロデューサーは『ミニットメン:ウィ・ジャム・エコノ』(2005年)のチーム、ティム・アーウィン&キース・スキエロン。


◆ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション
(2018年|アメリカ映画|95分|原題:BAD REPUTATION)© 2018 Bad Reputation LLC
監督:ケヴィン・カースレイク
出演:ジョーン・ジェット、ビリー・ジョー・アームストロング、デビー・ハリー、マイケル・J・フォックス、イアン・マッケイ、イギー・ポップ、マイク・ネス、ピート・タウンゼンド、マイリー・サイラス

70年代末に日本で大ヒットしたガールズバンド、ザ・ランナウェイズの元中心メンバーであり、<ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツ>としてソロ活動を続け、2015年にはロックの殿堂入りを果たした、女性ギタリストでありロックンロールの象徴ともいわれるジョーン・ジェットの半生を描いたドキュメンタリー映画。ニルヴァーナやREMほか多くのMVを手掛けてきたケヴィン・カースレイク監督作。2018年サンダンス映画祭正式出品作品。2003年に発表のローリング・ストーン誌の「歴史上最も偉大な100人のギタリスト」では87位にランクイン(女性は100人中2人のみ)というジョーン・ジェットのロックンロールのパイオニアとして、またポップカルチャーのアイコンとしての彼女の存在感に迫る。


◆ジ・アリンズ / 愛すべき最高の家族
(2017年|デンマーク映画|74分|カラー|英語|DCP|R15|原題:THE ALLINS)
© Toolbox Film 2017
監督:サミ・サイフ
出演:アリータ・ベアード、マール・アリン、GGアリン(アーカイヴ映像)、THE MURDER JUNKIES

米ニューハンプシャー州でとんでもない父親によって「ジーザス・クライスト・アリン」というイエス・キリストと同名の出生名で誕生、その後究極の破滅型ヴォーカリストとしてその名を全世界に轟かせたGGアリン。ライヴで大流血、汚物を撒き散らして客に襲いかかり、通報されて警察から全裸で逃走するなど狂気の大スペクタクルを展開して「ロック史上もっとも見事な変質者」と評される、全身でハードコアを体現したパンクロッカーである。そんなGGアリンが93年にヘロインの過剰摂取でこの世を去って以降、世界中のファンが追悼で墓を訪れ汚物を撒いて帰っていく。本作はGGのバンド、THE MURDER JUNKIESのメンバーであった兄のマール・アリンがGGの遺志を受け継ぎ音楽活動や汚物アートに勤しむ様子と、どんなに狂っていても温かい眼差しで子供たちを支える母親アリータの、一家がたくましく強く生きる模様を描いた、まさかの感動のドキュメンタリー。監督は2003年作『メイキング・オブ・ドッグヴィル〜告白〜』ほか、数々のドキュメンタリーを手掛けるサミ・サイフ。GGアリンという無類のキャラクターゆえに、過激な方向にスポットが当たりがちだが、<家族の物語>という主題をブレることなく、誠実かつ優しいトーンで描き、珠玉の記録映画を作り上げた。海外の映画祭でも予想外の感動に絶賛評が相次いでいる。


◆ギミー・デンジャー
(2016年|アメリカ|108分|原題: GIMME DANGER)
© 2016 Low Mind Films Inc.
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:イギー・ポップ、ロン・アシュトン、スコット・アシュトン、ジェームズ・ウィリアムスン
過激なライヴ・パフォーマンスにより日本では”淫力魔人”なる邦題も過去に登場した、〈ゴッドファーザー・オブ・パンク〉イギー・ポップ。そして、永遠のアウトサイダーとしてインディペンデント映画界に君臨する鬼才ジム・ジャームッシュ。イギーが率いたバンド、ザ・ストゥージズの熱烈なファンであり続けるジャームッシュは『デッドマン』(’95)、『コーヒー&シガレッツ』(’03)でイギーを役者として起用するなど、二人は親交を深めてきた。そしてこの度、イギー自ら「俺たちストゥージズの映画を撮ってほしい」とジャームッシュにオファー、今まで映像で語られたことのなかったその伝説のバンド、ザ・ストゥージズの軌跡を綴る、ジャームッシュにとっては20年ぶりとなるドキュメンタリー映画。


◆L7:プリテンド・ウィ・アー・デッド
(2017年|アメリカ|87分|PG-12|原題 L7:PRETEND WE’RE DEAD)
© 2017 BLUE HATS CREATIVE, Inc. All Rights Reserved.
監督:セーラ・プライス 
出演:ドニータ・スパークス、スージー・ガードナー、ディー・プラカス、ジェニファー・フィンチ、シャーリー・マンソン(GARBAGE)、エクセンヌ・セルヴェンカ(X)、ジョーン・ジェット、ブロディ・ドール(THE DISTILLERS)、アリソン・ロバートソン(THE DONNAS)、ルイーズ・ポスト(VERUCA SALT)
1985年〜2001年に活動していた米国ロサンゼルスの女性4人組ロックバンド、L7の歴史を網羅したドキュメンタリー映画。1985年の結成時のエピソードから<グランジの女王>に上りつめた時代、そして2001年の解散まで、多くの未発表映像とともに完全にメンバーの視点でそのキャリアを描いていく。アメリカのパンク/ハードコアシーンから出てきたL7はエピタフレコードで1stアルバム発売後、グランジ/オルタナ・ムーブメントの象徴サブポップで2ndを発売、3rdからはワーナー傘下スラッシュレコードでメジャーに進出、ヘヴィでノイジーなギターを軸にした陰鬱なサウンドで一部メタル界からも支持を集めたほか、ニルヴァーナやレッド・ホット・チリ・ペッパーズとのツアー、巨大フェスの94年ロラパルーザではビースティ・ボーイズやグリーン・デイらとメインステージをつとめるなど、オルタナバンドの代表格的な存在感を示した。他にはジョン・ウォーターズ監督のリクエストにより映画『シリアル・ママ』に出演、映画『ナチュラル・ボーン・キラーズ』『タンクガール』などにも楽曲が使われている。映画はほぼ全篇メンバーが当時から撮っていた100時間超におよぶホームビデオの映像と新規インタビューの声で構成され、一般的な音楽ドキュメンタリーとは異なった作りとなっている。


◆ザ・スリッツ:ヒア・トゥ・ビー・ハード
(2017年|イギリス|86分|カラー|G|原題 HERE TO BE HEARD: THE STORY OF THE SLITS)
© Here To Be Heard Limited 2017
監督・脚本・撮影・編集:ウィリアム・E・バッジリー 
出演:ドン・レッツ、ヴィヴ・アルバータイン、ポール・クック、アリ・アップ、デニス・ボーヴェル、テッサ・ポリット、ケイト・コラス、バッジーほか

世界初の女性のみのパンクロック・グループ、スリッツの歴史を70年代中ごろのバンド結成時から、解散以後のメンバー個々のストーリー、2005年の再結成、そして2010年、本作の制作中に癌でヴォーカルのアリ・アップが亡くなるまでを追ったドキュメンタリー映画。アーカイヴ映像や初めて公となる写真の数々、メンバーの証言やファン、スリッツに影響を受けてきた面々のインタビューで構成された本作。インタビューはスリッツの多くのメンバーたちのほか、ROXY CLUBのDJでありパンクドキュメンタリー作家のドン・レッツ、アルバム「CUT」のプロデューサーであるデニス・ボーヴェル、ポール・クック(THE SEX PISTOLS)、ジーナ・バーチ(THE RAINCOATS)、アリソン・ウルフ(BRATMOBILE)など多岐にわたり、スリッツが如何に進化し、世界中の人々に影響を与えていったかを描いている。監督は2011年のデビュー作であるバンド「KARP」のドキュメンタリー映画『Kill All Redneck Pricks: A Documentary Film about a Band Called KARP』のウィリアム・E・バッジリー。


◆めだまろん/ザ・レジデンツ・ムービー
(2015年|アメリカ映画|87分|2017年劇場公開作品|原題:THEORY OF OBSCURITY A FILM ABOUT THE RESIDENTS) © 2015 Film Movement, LLC
監督・脚本:ドン・ハーディー
出演:マット・グレイニング、レス・クレイプール(プライマス)、ペン・ジレット、ジェリー・ハリスン(トーキング・ヘッズ)、ゲイリー・パンター、ロブ・クロウ(ピンバック)、ホーマー・フリン、ハーディー・フォックス、ジェイ・クレム、ジョン・ケネディ

巨大な目玉のマスクに、タキシード。奇妙奇天烈な出で立ちで摩訶不思議な音楽を奏でる覆面アーティスト。その名もザ・レジデンツ。近年、バンクシーやダフトパンクなど素顔を隠したアーティストは数多く存在するが、ザ・レジデンツの覆面歴は実に40年以上!そのあまりの徹底振りから「実は彼らの正体は変装したビートルズではないか?」と噂されたほどで、現在も様々な憶測が絶えない。ダミ声のボーカルに、まぬけなコーラスと飛び交う電子音。もはやジャンル分け不可能なザ・レジデンツは多くの音楽ファンを困惑させたものの、徐々に中毒者が続出。現在では熱狂的なファンが世界中におり、初期のミュージックビデオはニューヨーク近代美術館に収蔵され、アート作品としての評価も高い。膨大なアーカイブ映像と、多くの関係者がインタビューで明かすザ・レジデンツの秘話。そして結成40 周年を記念したツアーにドン・ハーディー監督が密着。果たしてザ・レジデンツとは何なのか。音楽史最大の謎が遂に遂に明かされる!?


◆地獄に堕ちた野郎ども
(2015年|アメリカ映画|110分|原題:THE DAMNED:DON’T YOU WISH THAT WE WERE DEAD) © 2015 Damned Documentary LLC.
監督・製作・脚本・撮影・編集:ウェス・オーショスキー
出演:THE DAMNED

モーターヘッドのレミー・キルミスターの生態をとらえることに世界で初めて成功した映画『極悪レミー』(2010年)のウェス・オーショスキー監督の最新作は、長年無視されてきたパンクロックのパイオニア、ダムドの映画だ。ダムドとモーターヘッドは1979年“Motordamn”名義で一瞬合体、レミーがダムドのベースを弾いた時期があるほか、「ダムドは最高だ」と公言していたことから、オーショスキー監督の次回作がダムドの映画であることは一切の疑問を挟む余地がないほど自然なことである。1976年結成、セックス・ピストルズ、ザ・クラッシュとともにロンドンの3大パンクバンドのひとつに数えられ、UKパンク初のシングル「NEW ROSE」、同じく初のアルバム「Damned, Damned, Damned」を発売、初めて大西洋を渡りアメリカでのライヴを敢行、そして後のゴスの流行を作るなど、あらゆる面でオリジネイターとして現代にいたるまで大きな影響を及ぼしているにもかかわらず、商業的な成功とは無縁のバンドだ。それはダムドの複雑な歴史、数えきれないメンバーの出入り、そして何よりも40年を経た今なお現役であり“伝説”と化していないことが大きな要因であろう。セックス・ピストルズは『ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル』(80年)や『NO FUTURE A SEX PISTOLS FILM』(00年)、ザ・クラッシュは『ルード・ボーイ』(80年)や『LONDON CALLING/ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー』(06年)など関連する映画作品が作られてきている中、本作は満を持してのダムドを題材とした史上初の映画作品である。しかしそんなダムドの映画製作は、一人の人物を追った『極悪レミー』とは全く異なる種の困難を極め、4年以上を経て完成にこぎつけた監督は疲れ切っている。Uncut誌から「完璧だ」と讃えられたこの『地獄に堕ちた野郎ども』はダムドの歴代メンバーのほか、多くのミュージシャンたちが出演、バンドを追って地球上をまわり3年以上に渡って撮影され、バンドの、全体を把握することが不可能ともいえる難解な歴史と、メンバー間のもめごと、ダークサイドな部分までをストレートに伝えてしまっている。この、誰も成し得なかった(作れると思わなかった?)、ダムドというバンドの物語を映画化するという不可能への挑戦、そして映画作品として完成させたオーショスキー監督の努力は称賛されるべきであり、されるはずだ。


◆バッド・ブレインズ/バンド・イン・DC
(2012年|アメリカ映画|104分|原題:BAD BRAINS / A BAND IN DC)
© 2012 PLAIN JANE PRODUCTIONS
監督:マンディ・スタイン
出演:BAD BRAINS、ヘンリー・ロリンズ(BLACK FLAG)、イアン・マッケイ(MINOR THREAT)、BEASTIE BOYS(マイク・ダイヤモンド、アダム・ヤウク、アダム・ホロヴィッツ)、リック・オケイセック(プロデューサー/THE CARS)、デイヴ・グロール(FOO FIGHTERS)、ライル・プレスラー(MINOR THREAT)、アンソニー・カウンティ(マネージャー)、ジョン・ジョセフ(CRO MAGS)ハーレー・フラナガン(CRO MAGS)、ジミー・ゲシュタポ(MURPHY’S LAW)、アンソニー・キーディス(RED HOT CHILI PEPPERS)、ドン・レッツ(映画監督)、ジェリー・ウィリアムス

1976年ワシントンDCにて結成、当初はジャズ、フュージョンバンドとしてスタートするも、1978年、セックス・ピストルズ、ダムドなどのロンドンパンクの影響を浴び、ラモーンズの曲名から改名し生まれ変わったBAD BRAINS。そのあまりに激しいライヴによりワシントンDCのライヴハウスシーンから締め出しを食らったという凄まじい伝説や、パンクとレゲエを縦横無尽に行き来するという唯一無二のスタイルを確立してその後の多くのバンドに絶大な影響を与え続けている、アメリカのロック史にその名を刻む重鎮バンドである。本作はそんなBAD BRAINSの2007年のツアーの模様を軸に、バンドの歴史も追っていく、同バンド史上初のドキュメンタリー映画。監督はRAMONESのギタリスト、ジョニー・ラモーンのトリビュート映画となった『TOO TOUGH TO DIE』(2006年)を手掛けたマンディ・スタイン、製作・編集は『悪魔とダニエル・ジョンストン』(2005年)のタイラー・ハビーが担当。映画『AMERICAN HARDCORE』(2006年)を手掛けたポール・ラックマンからの提供された貴重な80年代のライヴ映像とともに、BAD BRAINSの楽曲が計45曲全篇にちりばめられている。


◆フェスティバル・エクスプレス
(2003年|イギリス=オランダ合作|90分|原題:FESTIVAL EXPRESS)
© 2016 Apollo Media Ltd. under exclusive license to TAMT Co., Ltd. in Japan, All Rights Reserved.
監督: ボブ・スミートン
出演:ジャニス・ジョプリン、ザ・グレイトフル・デッド、ザ・バンド、マシュマカーン、バディ・ガイ、フライング・ブリトー・ブラザーズ、シャ・ナ・ナ

1970年、ジャニス・ジョプリンをはじめとした70年代を代表する最高のロック・アーティストが、列車に乗り、カナダを横断するコンサートツアーを敢行、このイベントは「フェスティバル・エクスプレス」と名付けられ、ロック史における伝説となった。1995年にこのツアーの一部始終を収めた全長75時間にも及ぶフィルムの一部である46時間分が発見された。そこから8年をかけて権利処理、インタビュー撮影、編集が施されて完成したのが本作『フェスティバル・エクスプレス』である。


◆ジャニス/リトル・ガール・ブルー
(2015年|アメリカ映画|103分|原題:JANIS:LITTLE GIRL BLUE)
© 2015 by JANIS PRODUCTIONS LLC & THIRTEEN PRODUCTIONS LLC. All rights reserved.
監督・脚本:エイミー・バーグ
出演:クリス・クリストファーソン、ボブ・ウィアー、クライヴ・デイヴィス、ディック・キャヴェット、デヴィッド・ドルトン、カントリー・ジョー・マクドナルド、サム・アンドリュー、デヴィッド・ゲッツ、ローラ・ジョプリン、マイケル・ジョプリン、ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、ピンク、メリッサ・エスリッジ、ジュリエット・ルイス

テキサスの田舎町で、ごく普通の中流の家庭で生まれたジャニスは、容姿へのコンプレックスや元来の内気で繊細な性格から、学校になじめず、他の生徒から孤立を深めていくようになります。しかし、やがてブルースやフォークに出会い、自分でもバンドを組み歌い始めます。63年、フラワー・ムーヴメントの中心地サンフランシスコへ単身趣き、そこで圧倒的な歌唱力から歌手としての存在感を高め、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーに加入。67年のモンタレー・ポップ・フェスティバルでのライブで一夜にしてスターダムにのし上がった彼女は、69年のウッドストック・フェスティバルへの出演、70年の列車に乗ってカナダを横断しながら行うツアー「フェスティバル・エクスプレス」など精力的に活動し、60年代後半、公民権運動やベトナム反戦運動、ウーマンリブなどカウンターカルチャーが吹き荒れる激動の時代の象徴として一躍、大きな脚光を浴びるようになります。しかし、1970年10月4日、アルバム『パール』のレコーディング中にヘロインのオーバー・ドーズにより27歳の若さで死去。本作では、遺族の全面協力によりバンドメンバーや親しい友人、昔の恋人、家族といった生前ジャニスの最も身近にいた人々からのインタビュー映像と、故郷を離れロックスターとして大きな注目を浴びるようになっても、変わらずにずっと書き続けていた両親や兄弟、恋人へのパーソナルな手紙を軸に、ロックスターとしてのジャニス・ジョプリンではなく、一人の女性としての「ジャニス・ジョプリン」が立体的に浮かびあがってきます。監督は、社会性の強いテーマをエッジの効いた作風で描き高い評価を得て来たエイミー・バーグが務め、同じ女性としてジャニス・ジョプリンの素顔を丁寧に描き切っています。製作は、監督としてアカデミー賞受賞経験もあるドキュメンタリーの巨匠アレックス・ギブニー。


◆ザ・デクライン
(1981年|アメリカ映画|100分|原題:THE DECLINE OF WESTERN CIVILIZATION)
© 1981 Spheeris Films Inc. All Rights Reserved.
製作・監督:ペネロープ・スフィーリス
出演:BLACK FLAG、GERMS、FEAR、ALICE BAG BAND、CATHOLIC DISCIPLINE、CIRCLE JERKS、X
ロンドン、ニューヨークで先行していたパンクロックの波が70年代末、カリフォルニアに到達、以後全米の地下世界に爆発的に吹き荒れたアメリカン・ハードコア/パンクのムーブメントの発火点となったロサンゼルスの、その瞬間を切り取った衝撃の記録。監督のペネロープ・スフィーリスは何かが弾けようとしていた異様な現場を活写した。アメリカン・ハードコアの巨人BLACK FLAGが怪物と化す前の様子、破滅と退廃の象徴GERMSのダービー・クラッシュが自殺を図る直前(1980年12月7日、自殺)の姿。若者たちはメインストリームに中指を立て、警察を憎み、趣くままの服装とヘアスタイルで、異質・異端であることを恐れず、マイノリティであることを自覚しながら、おさまりきらない孤独とストレスとアグレッションをライヴで発散させ、ロックスターはくだらないと蔑視する。LAパンクの猛者ともいえるバンドたちの暴力と堕落と怒り渦巻くライヴを映像におさめた唯一無二の作品。

◆ザ・メタルイヤーズ
(1988年|アメリカ映画|94分|原題:THE DECLINE OF WESTERN CIVILIZATION PART II: THE METAL YEARS)
© 1988 IRS World Media and Spheeris Films Inc. All Rights Reserved.
監督:ペネロープ・スフィーリス
出演:スティーヴン・タイラー、ジョー・ペリー、アリス・クーパー、ジーン・シモンズ、ポール・スタンレー、レミー、オジー・オズボーン、POISON、クリス・ホームズ、LIZZY BORDEN、FASTER PUSSYCAT、SEDUCE、ODIN、LONDON、MEGADETH
『ザ・デクライン』から7年、ペネロープ・スフィーリス監督がふたたびロサンゼルスの音楽シーンを切り取った≪西洋文明の衰退≫ドキュメンタリー第2弾。アメリカのハードコア/パンクの核となったLAの暴発間近な瞬間をとらえた前作の時代からロサンゼルスの音楽シーンは様変わりしていた。ド派手な衣装と長髪を振り乱し、金と名声、セックスとドラッグを夢見る若者たち。そこには真面目に音楽に打ち込む連中もいれば、パーティーアニマルと化す面々や挫折して消えていく連中もいる。1988年にロサンゼルスでピークを迎えていた、華美な装飾に彩られた、グラムロックの流れも汲むヘヴィ・メタル=LAメタルが本作のテーマ。当事者たちは70年代末から勃発したパンクロックはディスコに落ちぶれ、80年代の真のロックンロールはヘヴィ・メタルであると主張する。スフィーリス監督はハードコア/パンクとは真逆のイデオロギーのもとに成り立つヘヴィ・メタルシーンを徹底した客観的視点で映像におさめた。

◆FILMAGE:THE STORY OF DESCENDENTS/ALL
(2013年|アメリカ映画|90分|原題:FILMAGE:THE STORY OF DESCENDENTS/ALL)
© 2013 FILMAGE MOVIE, LLC.
監督:マット・リグル、ディードル・ラクーア
出演:DESCENDENTS、ALL、デイヴ・グロール(Foo Fighters, Nirvana)、マーク・ホッパス(Blink-182)、キース・モリス(Black Flag, Circle Jerks)、チャック・ドゥコウスキー(Black Flag)、キラ・ロゼラー(Black Flag)、ブレット・ガーヴィッツ(Bad Religion, Epitaph)
全世界をパンクロックの波が浸食していた1978年、カリフォルニアで結成されたハードコアパンクバンドDESCENDENTS(ディセンデンツ)。その後Voのマイロ・オーカーマンが学業に専念するため活動を休止しDAG NASTYのデイヴ・スモーリーをボーカリストに迎え、1987年に結成されたALL(オール)。New Alliance(Minutemenのレーベル)、SST,CRUZ(Black Flagのレーベル)、Epitaph(Bad Religionのレーベル)、Fat Wreck Chords(NOFXのレーベル)といったその名の羅列だけでも失神しそうなレーベルから数々の音源をリリースし、現在では当たり前となったポップパンク、メロコア、スケートパンクの元祖として、ただポップなだけでなく変則的で難解な"ひねくれ"要素も特徴的なCRUZIAN POP PUNKというジャンルまで作り上げてしまったカリフォルニアパンクの代表格である。この2つのバンドの飾らない今の姿と、70年代末の西海岸パンク誕生〜80年代のハードコア期〜90年代以降のメロコア時代と実に35年以上という途方もない年月を生き抜くその軌跡を辿ったドキュメンタリー映画。


◆ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン
(2012年|イギリス映画|100分|原題:THE STONE ROSES:MADE OF STONE)
© Channel Four Television/BMSW Ltd. and Warp 1989 Ltd. 2013.
監督:シェイン・メドウズ
出演:THE STONE ROSES(イアン・ブラウン、ジョン・スクワイア、レニ、マニ)、リアム・ギャラガ―、エリック・カントナ
マッドチェスター・ムーヴメントの中心的存在として全世界の音楽シーンに多大なる影響を与えたザ・ストーン・ローゼズの、96年の解散から15年後の2011年10月18日、再び始まった活動を最も近くで記録した、バンド史上初にして決定版ともいえるドキュメンタリー映画。サッカーと音楽しか成り上がる手段がなかったマンチェスターのワーキング・クラス出身の4人による感動的な再会劇から初めて明かされるその裏側、そして彼らを人生の一部として愛するファンの素顔を、再結成にまつわるライヴやバックステージ映像と、これまで未公開であった秘蔵映像を軸に、鮮烈に描き出す。監督は、自身も熱狂的なローゼズ・フリークであり、映画『THIS IS ENGLAND』でも知られるシェイン・メドウス監督。


◆END OF THE CENTURY
(2004年|アメリカ映画|108分|原題:END OF THE CENTURY)
© 2004 Cugat, Inc.
監督・製作・:マイケル・グラマグリア&ジム・フィールズ
出演:ジョニー・ラモーン、ジョーイ・ラモーン、ディーディー・ラモーン、トミー・ラモーン、マーキー・ラモーン、CJ・ラモーン、リッチー・ラモーン
1974年ニューヨークにて結成、1曲2分足らず爆音3コードパンクのスタイルを確立、イギリスのセックス・ピストルズやクラッシュから現代パンクのグリーン・デイまで世界中の錚々たるバンドに影響を与え続けているラモーンズ。そんな彼らの、いままであまり語られる事の無かった光と陰を、バンドに関った多くの人々、そして過去在籍した全てのメンバーの証言をもとに記録したドキュメンタリー。


◆悪魔とダニエル・ジョンストン
(2005年|アメリカ映画|110分|原題:THE DEVIL AND DANIEL JOHNSTON)
© 2005 YIP! JUMP、LLC.
監督・脚本:ジェフ・フォイヤージーグ
出演:ダニエル・ジョンストン、キャシー・マッカーティ、ジャド・フェア、ギビー・ヘインズ、マット・グローニング、ルイス・ブラック
トム・ウェイツ、カート・コバーン、デヴィッド・ボウイ、ジョニー・デップ、そしてソニック・ユース。皆、ダニエル・ジョンストンの音楽を愛している。次は君の番だ。
-スコット・ドゥヴェイニー/The Wave Magazine
世界中のアーティストたちを魅了する天才シンガー・ソングライター兼アーティスト、ダニエル・ジョンストン。『悪魔とダニエル・ジョンストン』は、その繊細さゆえ、躁鬱病に苦しむダニエルの狂気、創造性、そして愛を描いた傑作ドキュメンタリー。監督ジェフ・フォイヤージーグは、ダニエル・ジョンストンという謎多き"生ける伝説"を題材に、誇大妄想に苦しむ天才アーティストの原点から現在までの浮き沈みの激しいドラマティックな人生、破天荒なエピソード、様々な禁断症状や挫折、そして痛ましいまでの贖罪の数々を110分間のフィルムのなかに濃密に映し出していく。ヒップスターの栄光の裏側に隠された驚愕の真実、感動の伝記映画がここに誕生した・・・・。


◆アメリカン・ハードコア
(2006年|アメリカ映画|100分|原題:AMERICAN HARDCORE)
© 2006 AHC PRODUCTIONS LLC. All Rights Reserved.
監督:ポール・ラックマン
出演:異常な数のアメリカン・ハードコアのバンドたち
1970年代末〜1980年代にかけて全米の地下世界で爆発的に吹き荒れたUSハードコア/パンク・ムーヴメント。RAMONESなどのNYパンク、そしてSEX PISTOLS、CLASH、BUZZCOCKSなどのUKパンクに影響を受けつつ、より速く、より重く、より暴力的に進化していったハードコア勢はメジャーレーベルとのかかわりは無く、自主レーベル、ライヴ、ファンジンなどで独自のネットワークを築き、巨大なムーヴメントに成長していった。この巨大ながらもリアルタイムで世界的に紹介されることのなかったムーヴメントの最盛期、80年から86年をインタビューと当時の貴重な映像とで綴った怒涛の巨編。BLACK FLAGやMINOR THREAT、BAD BRAINSといった代表格から地方都市のバンドまで全60バンド、インタビュー総勢94名、本編使用楽曲数は実に76曲におよぶ。


◆ミニットメン:ウィ・ジャム・エコノ
(2005年|アメリカ映画|91分|原題:we jam econo:the story of the minutemen)
© Rocket Fuel Films 2005
監督:ティム・アーウィン
出演:Milo Aukerman(DESCENDENTS)、Joe Baiza(SACCHARINE TRUST)、Jello Biafra(DEAD KENNEDYS)、Dez Cadena(BLACK FLAG)、Nels Cline(アメリカの伝説的ギタリスト、ミニットメンやソニック・ユースとの共演など幅広い活動)、John Doe(X)、Chuck Dukowski(BLACK FLAG)、Flea(RED HOT CHILI PEPPERS)、Grant Hart(HUSKER DU)、Richard Hell、Pat Hoed(DOWN BY LAW)、Kjehl Johansen(THE URINALS)、Curt Kirkwood(MEAT PUPPETS)、Ian MacKaye(MINOR THREAT/FUGAZI)、Dave Markey(”SLOG MOVIE”監督)、Mike Martt(TEX AND THE HORSEHEADS、THERONIOUS MONSTER)、J Mascis(DINOSAUR JR.)、Richard Meltzer(ロックジャーナリスト)、Thurston Moore(SONIC YOUTH)、W.T. Morgan(“X:UNHEARD MUSIC”監督)、Keith Morris(BLACK FLAG/CIRCLE JERKS)、Brendan Mullen(ライヴハウス“MASQUE”オーナー)、Colin Newman(WIRE)、Greg Norton(HUSKER DU)、Raymond Pettibon(イラストレーター、BLACK FLAGのGREG GINNの弟)、Lee Ranaldo(SONIC YOUTH)、David Rees(漫画家)、Nanette Roeland(ミニットメンのアートワーク担当のイラストレーター)、Kira Roessler(BLACK FLAG)、Henry Rollins(BLACK FLAG)、Spot(BLACK FLAGのアルバムなどSST作品を多く手掛けたエンジニア)ほか
30年以上に及ぶパンクロックの歴史の中でも、もっともアンダーグラウンドであり、もっともアンノウンでありながら、現代への影響は計り知れないほど絶大である80年代USハードコア/パンクシーン。オフスプリングやグリーンデイなど現在活躍する超大物バンドたちのルーツであるこのシーンを率いたバンド、ブラック・フラッグのグレッグ・ギンが運営する伝説的レーベル、SSTレコードの第一号リリースとなった奇跡の突然変異バンドがミニットメンである。当時は70年代パンクをさらに速く、重く、ギターの歪みを暴力的に進化させたサウンドがハードコア/パンクの基本であったが、ミニットメンは変則的なリズムの上にクリーントーンのギターととてつもないうねりのベースが乗っかるという前代未聞のサウンドで聴く者に衝撃を与えた。その唯一無二のサウンドのフォロワーは多く、現代においてそれをもっとも継承しているはレッド・ホット・チリ・ペッパーズだろう。1985年のメンバーの事故死にてその歴史に終止符が打たれたミニットメンの活動と魅力を、ディセンデンツ、レッチリ、フガジ、ソニック・ユース、ダイナソーJr.、ワイヤーの面々からリチャード・ヘルまで50名以上の錚々たるミュージシャンたちのミニットメンに対する熱い想いと、当時の貴重なライヴ映像で綴るのが本作。出演陣の名前を見るだけでもその影響の凄さが分かる。    


◆INSTRUMENT フガジ:インストゥルメント
(1999年|アメリカ映画|117分|原題:INSTRUMENT)
© 1998, 2018 Dischord Records
監督:ジェム・コーエン
出演:イアン・マッケイ、ジョー・ラリー、ブレンダン・キャンティー、ギー・ピチョット
USハードコア・パンクをMINOR THREATで開拓したイアン・マッケイ(vo、g)がポスト・ハードコアを実践すべく80年代後半に始めた、ワシントンDC拠点のFUGAZIの映像作品。インテリジェンスに富むバンドながら肉体的な表現が身上であることを示す1987〜1998年のライヴが中心で、その様々なシチュエーションにFUGAZIの意思が表れている。レコーディングのシーンも織り込み、メンバーのインタヴューからは我が道を行く率直なアティテュードが伝わってくる。“信者”のようなファンも多いが、それ以外の観客を映し出すところも波紋を投げかけるFUGAZIのパンク精神そのものだ。FUGAZIの音楽と同じくプリミティヴな撮影で生々しさが醸し出され、適度に挿入したモノクロ映像も彫りの深い仕上がりに一役買っている。発言部分だけでなく歌詞も日本語の字幕付だが、言葉に頼った説明的なドキュメンタリーとは一線を画し、詩情が滲む寡黙な名作である。なお今回の劇場公開は、DIY姿勢ゆえに音源管理等に厳しいディスコード・レコードが初めて日本にライセンスして実現したものであり、またフルHDリマスター化という点も特筆したい。 - 行川和彦(音楽評論家)