NHK連続テレビ小説100作目にあたる作品『夏空(なつぞら)』のヒロインはアニメーター。戦後、広大な北海道の大自然、そして日本アニメの草創期を舞台に、まっすぐに生きたヒロイン・なつの夢と冒険、愛と感動のドラマが描かれます。主人公・奥原なつを演じるのは広瀬すず。脚本家・大森寿美男によるオリジナル作品で2019年4月〜9月に放送されます。
以下、インフォメーションより
●2019年度前期 連続テレビ小説『夏空』
【放送予定】2019年4月〜9月 全156回(予定)
【制作統括】磯 智明
【プロデューサー】福岡利武
【演出】木村隆文、田中 正 ほか
☆私はここで、生きる!
戦後、広大な北海道の大自然、そして日本アニメの草創期を舞台に、まっすぐに生きたヒロイン・なつの夢と冒険、愛と感動のドラマをお送りします。
戦争で両親を失った少女・奥原なつ。
傷ついた彼女を癒やし、たくましく育てたのは、北海道・十勝の大地と、開拓精神にあふれた強く、優しい大人たちでした。
やがて、成長したなつは、十勝で育まれた豊かな想像力と根性を生かして、当時まだ「漫画映画」と呼ばれていたアニメーションの世界にチャレンジします。
十勝は年間を通じて雨雪が少なく、「十勝晴れ」と呼ばれる晴天が、豊潤な大地に実りをもたらします。
「夏空」は、そんな十勝の突き抜けた青空のような、すがすがしいなつの生きざまを描いたドラマです。
脚本家・大森寿美男によるオリジナル作品。
本作は連続テレビ小説100作目にあたります。
☆作者の言葉 大森寿美男
連続テレビ小説、朝ドラもこれが百作目だそうです。これ、あまり意識しないことは難しいかもしれませんが、百作分の一作をつくることに変わりはないので、ただただ、そこに集中したいと思っています。
しかし、やはり考えてしまいます。最初に朝ドラをつくった人は、どんな思いを込めてつくっていたのか。今の朝ドラを取り巻く状況、その未来など想像もつかなかったに違いありません。
太平洋戦争が終わって八年後に日本のテレビはスタートしました。そこにいたのは、多くの戦争体験者です。そして、一からテレビの世界を切り拓ひらいていった、彼らは開拓者となりました。その思いは、世代から世代につながれ、見る人にも影響を与えることで、無意識のうちにも、今の私たちにまでつながっているはずです。その中に、朝ドラの歴史もあるのです。
同じように、そのテレビと切っても切れないアニメーションという世界も、戦後に大きく開拓されたものです。そこにいたのも、当然ながら多くの戦争体験者です。自分はもちろん戦争を体験してない、戦争を知らない子供でしたが、その人たちがつくる昭和のアニメには大きな影響を受けて育った世代です。そのアニメには、いったいどんな人たちのどんな思いが込められていたのか……そんなことに思いを馳はせるうちに、今や世界に誇る日本のアニメの原点を探るような物語を、この百作分の一作に重ねてみたいと思うようになりました。
今回のヒロインは、アニメーターになります。そしてその世界を開拓することになるのです。アニメーターとは、作家や監督とは違うけれど、決して単なる絵を描く技術者ではありません。自分の持っている身体能力と想像力を駆使して、絵を動かし、絵に生命を吹き込む表現者です。動画役者といってもいいかもしれません。そういう才能を持った人たちが、男女を問わず戦後に多く現れ、絵を動かすことに自分の人生を重ねていったのです。ヒロインを、そんな人々の象徴として描きたいと思いました。
ヒロイン・奥原なつは、戦争によって両親を失い、兄妹とも生き別れとなり、ある縁あって、北海道に住む養父の一家に育てられることになります。北海道とは、言うまでもなく、多くは明治の時代から開拓者によって切り拓かれた大地です。なつは、その開拓者の影響を受け、自らも開拓精神を養いながら育ってゆきます。そして、やがてはアニメーションという、まだ荒野の世界に足を踏み出してゆくのです。大空と大地で育まれた身体能力と想像力を駆使して。
そんな雄大なスケールを、「広瀬すず」という稀代きだいのヒロインに重ねたいと思いました。この作品のテーマは、ズバリ『開拓』と『未来へのつながり』です。朝ドラの長い歴史にも思いを馳せつつ、想像もつかない未来に向かって、広瀬すずさんの背中をググッと押し出せるような物語を大切に育んでゆきます。
夏空に一陣のさわやかな風が吹き抜けるような作品にしたいと思います。
[大森寿美男 プロフィール]
1997(平成9)年脚本家デビュー。「泥棒家族」「トトの世界?最後の野生児?」第19回(2000年度)向田邦子賞受賞。代表作に大河ドラマ「風林火山」「64(ロクヨン)」、大河ファンタジー「精霊の守り人」、「フランケンシュタインの恋」がある。監督と兼務で『風が吹いている』『アゲイン 28年目の甲子園』を執筆。連続テレビ小説は「てるてる家族」(平成15年度後期)に続き2回目。
☆ヒロイン 奥原なつについて
1937年、東京生まれ。大空襲を生き延びるものの、両親を戦争で失う。兄・咲太郎さいたろう、妹・千遥ちはると別れ、父の戦友だった柴田剛男たけおにひとり引き取られ、北海道・十勝に移り住む。柴田家の家業である酪農を手伝う中、持ち前の明るさを取り戻し、北海道移民一世である剛男の父・泰樹たいじゅから、開拓者精神とともに人生で大切なことを学んでいく。
高校卒業後は上京して、当時、草創期を迎えていたアニメ業界に飛び込む。画家志望の友人・山田天陽やまだ てんようから、手ほどきを受けたデッサンの腕前を生かし、自然の中での生活で磨かれたみずみずしい感性を発揮していく。
[広瀬すず プロフィール]
1998(平成10)年6月19日生まれ。静岡県出身。2012年「ミスセブンティーン2012」に選ばれ、モデルとして芸能界デビュー。13年「幽かな彼女」で女優デビュー、15年「学校のカイダン」で連続ドラマ初主演。『海街diary』での演技が評価され、数多くの映画賞で新人賞受賞。16年には、『ちはやふる』『怒り』で日本アカデミー賞優秀主演女優賞、優秀助演女優賞をダブル受賞、エランドール賞新人賞受賞。NHKでは13年ドラマ10「激流〜私を憶えていますか?〜」に出演。
☆起用にあたって 制作統括 磯 智明
キャスティングとは、めぐり合わせです。この方に演じていただきたいと思っても、タイミングが難しければ実現しません。しかも連続テレビ小説のヒロインは、年齢も大きな要因です。「戦災孤児」「北海道」「アニメーション」という3つのキーワードをもつ遠大な物語を、演技力とリアリティーをもって演じきれる女優は今、広瀬すずさんしかいないと当初から考えていました。こうして実現できたのは、まさにめぐり合わせ、としか言いようがありません。しかも、連続テレビ小説100作という節目が重なりました。
広瀬さんの実力は、まだ未知数です。これまで数々のヒロインが連続テレビ小説で才能を開花させたように、この作品を通して、さらなる飛躍を遂げると期待しています。日本中から、「なっちゃん」と呼ばれるくらい、作品に溶け込んで、愛されるといいなと思います。
☆あらすじ
1946(昭和21)年初夏、戦争が終わり、奥原なつ(9)はひとり、養父の柴田剛男に連れられ、北海道・十勝にやって来た。養女として、なつを引き取った酪農家族・柴田家は北陸からの開拓移民。剛男となつの父とは戦友で、もしもの時は、お互いの家族の面倒を見るという約束をしていた。
剛男の父・泰樹は、なつのことを働き手にもならない、厄介者と言いながらも内心、不憫ふびんに思っていた。しかし子どもながらに、ここで生きると覚悟を決めたなつは、牛馬の世話や乳搾りを懸命に手伝う。こうした頑張りに心を動かされた泰樹は、孤児だからといって甘やかしたりせず、生きる術すべをとことんたたき込んでいく。なつもまた、天真らんまんな子どもらしさを取り戻していく。
小学校に通い始めたなつは、すてきな馬の絵を描く少年・山田天陽と出会う。天陽から当時、アメリカでブームになっていた漫画映画(アニメ映画)の魅力を教えられ、なつは“絵が動く”こんな夢のような世界があるのかと感動する。
やがて高校生になり、天陽が東京の美術大学に進みたいという夢を語ると、なつも自分の将来について考えるようになる。なつもまた天陽の影響で、絵を描く仕事につきたいと思うようになっていた。だが養父の剛男はなつが、一人息子と結婚して、牧場を継ぐことを望んでいた。
そんな折、生き別れていた兄が、東京で元気に働いていると知らされる。なつに旅立ちの日が近づいていた……。