オリバー・ストーンONプーチン(原題:THE PUTIN INTERVIEWS)
映画監督のオリバー・ストーンが、2年にわたりロシア大統領と対談を重ねた。これまであまり見たことがなかったロシアの指導者の横顔を、前後編の2回で紹介するドキュメンタリー『オリバー・ストーンONプーチン』がNHK BS1で放送決定。「BS世界のドキュメンタリー」枠での放送で、前編は2月28日(水)深夜に、後編は3月1日(木)深夜にそれぞれ放送されます
●NHK BS1『オリバー・ストーンONプーチン 前編』
2018年3月1日(木)午前0時00分〜
映画監督のオリバー・ストーンが、2年にわたりロシア大統領と対談を重ねた。クレムリンの奥の院を訪ね、外遊に同行しながら、プーチンの足跡や世界観の本音に迫る。
これまであまり見たことがなかったロシアの指導者の横顔を、前後編の2回で紹介する。
〈前編〉は、元KGB職員が大統領の椅子を提示された1999年にさかのぼり、権力掌握の過程や、プーチンの国家観や国際政治の“操り方”、アメリカに対して高めていった疑念について掘り下げていく。プーチンは、ストーンがときに突っ込む質問に、心を開いて全てを語ったのか、それともまだ素顔を隠しているのか・・・
原題:THE PUTIN INTERVIEWS PART1
制作:Showtime Documentary Films(アメリカ 2017年)
●『オリバー・ストーンONプーチン 後編』
2018年3月2日(金)午前0時00分〜
映画監督とロシア大統領の対話の後編の舞台は、モスクワ郊外の別荘や、プーチンが60代になって始めたアイスホッケーの試合会場。家族観や宗教観、人生観を探っていく。
〈後編〉別荘で愛馬の世話に悦に入るプーチン大統領。柔道の稽古で心身の鍛錬を図り、ジムで鍛えるなど、公には見せない大統領の私生活の一端が見えてくる。2人で昔の映画「博士の異常な愛情」を鑑賞し、核戦争や軍事力について意見を交わす場面も。足かけ2年にわたるインタビューで、プーチンは同性愛やロシア正教についても持論を述べていく。これまであまり見たことがなかったロシアの指導者の横顔は、映画監督オリバー・ストーンの目にどう映ったのか?
原題:THE PUTIN INTERVIEWS PART2
制作:Showtime Documentary Films(アメリカ 2017年)
<番組スタッフから>
【この番組を企画したきっかけは?】
去年の秋頃だったでしょうか。「絢爛豪華な部屋のど真ん中に、オリバー・ストーン監督が酔っ払った感じで座っていて、あのプーチンとサシで延々としゃべくりまくっている番組ができたらしいよ」と聞き、映像を取り寄せてみました。実際には監督はお酒を飲んではいなかったようですが、クレムリン宮殿の奥深くまで案内されたり、郊外の別荘で私生活をのぞいたり・・・柔道やアイスホッケーにアツくなるロシア大統領のレアな素顔もありました。2年ちかくにわたってロング・インタビューを繰り返したとのことですが、なかなか見ることができないプーチンさんとの対話をぜひ日本の視聴者にもと思い、シリーズを発案してみました。
この番組は、ストーン監督という聞き手・伝え手の強烈なキャラで成り立っています。アメリカやカナダ、イギリスでは、番組の案内役を前面に出す演出が長く人気を集めていますーーーフランスや北欧諸国といった“ドキュメンタリー大国”では、さほどポピュラーではないかもしれません。では、英米の制作者がノウハウやスキルを互いに競い合ってきた“顔出し=署名記事”的な手法を収集したらどう見えるだろう? というシリーズです。
【番組の見どころは?】
シリーズ2本目に紹介するのは、イギリスのベテラン・ジャーナリストであるルイ・セローさんの作品です。メガネをかけた優しげな中年男。ハリー・ポッター・・・というか、のび太君が大人になったような感じの人ですが、オリバー・ストーン監督が大柄で、言葉悪く言えば“威圧感がある”のと違って、セローさんは“存在感が希薄”な感じです。ところが、相手が庶民でも大富豪でも、犯罪者スレスレの危険人物であっても、いつの間にか懐に入りこんで本音を引き出していきます。今回は、アメリカ東部の小さな町を取材。医療界が鎮痛剤の処方を乱用した結果、住民の4人に1人が麻薬依存症に陥ってしまったという問題に切り込みます。ごく普通の白人の中流家庭に育った若い女性らが、いつの間にかヘロインの常用者になってしまうという、背筋が寒くなる“医療の闇”が浮き彫りになります。
シリーズ3本目は一転、アフガニスタン難民としてロンドンで育った20代の女性ネルファ・ヘダヤトさんが案内役です。「若い視聴者にアピールする、新感覚の調査報道を」との狙いで起用されました。世界各国に広がる、さまざまな闇取引の実態を探る連作の中から、臓器売買をテーマにした1本を選びました。最もニーズが高いのは腎臓だとされていますが、ヘダヤトさんは、臓器を買って移植したカナダの男性、そして、売る側であるバングラデシュの家族や、秘密裏に移植手術を行うインドの医師への隠しカメラ取材へと突き進んでいきます。その過程で、ヘダヤトさんは疑問や悩みを抱え、壁にぶちあたりますが、その様子も全て見せていくのが番組の真骨頂。小難しい話や分かったようなフリはせず、若い世代が持つ等身大で低い目線を前面に出す演出です。本国では狙い通り、若い視聴者層にリーチしたとのことで、日本での反応が楽しみです。
【見てくださる方に一言】
「オリバー・ストーンONプーチン」は前後編の2回で放送しますが、インタビューと歴史的な資料映像を巧みにモンタージュする手法に注目です。ストーン監督には「スノーデン」という2016年の作品がありますが、アメリカのNSA=国家安全保障局による盗聴の実態を内部告発し、最終的にモスクワに庇護される身となったエドワード・スノーデン氏との関わり方についても、プーチン大統領に直撃。映画の一部が番組に出てきますが、他にも、超大国による“核の冬”をパロディーで描いたスタンリー・キューブリック監督の「博士の異常な愛情」(1963年)を2人で鑑賞するシーンも。別れ際に大統領はそのDVDをプレゼントされて部屋を出ますが、すぐ戻ってきてDVDケースをかざしながら「中身のディスクが入ってないよ」と一言。「いかにもアメリカ流だ」との皮肉に、取材班一同が失笑・・・今回の番組でプーチン大統領は、どこまでその胸の内をさらしたのかについても、視聴者の方がそれぞれに見極めていただければ、と思います。また、このインタビューは単行本としても出版され、番組には含まれていない問答も含まれています。興味のある方は読み比べてみても面白いかもしれません。
「麻薬中毒の町〜ルイ・セローが見たアメリカ〜」「臓器売買の“闇”を追って〜若き女性ジャーナリストが見た現実〜」と合わせて、ぜひ “署名ドキュメンタリー”の極意を味わってください。
(番組プロデューサー icy18)
※番組ページ
http://www6.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/?pid=180301